表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の救世主(メシア)は、絶望の地を喰らい尽くす。 ~魔力適性ゼロの少年、死線で覚醒し、五人の女神と最強の略奪建国を開始する~  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/17

第11章:空虚なる王都と断罪の幕開け

「全員、退散だ。戻るぞ」


レオンの短く、だが絶対的な拒絶を含んだ一喝が、空虚になった王都の街並みに響き渡った。


王城のバルコニーからは、国王や残党の貴族たちが、救いを求めるような、あるいは信じられないものを見るような瞳でレオンたちを見下ろしていた。彼らは、レオンが自分たちの首を撥ね、城を粉砕し、血塗られた最期を与えるのだと確信していた。だが、レオンは彼らを殺す価値さえもない「風景の一部」として切り捨てたのだ。


「レオン様、よろしいのですか? あの者たちを、あのままに……」


エルザが聖剣を鞘に納めながら、戸惑いを口にする。それに対し、レオンは一顧だにせず、ゲートの向こう側に広がるヴィクトール領の喧騒を見据えた。


「殺す手間すら無駄だ。民も、商人も、食料も、富も、そして『未来』も……全部ここから消えた。残されたのは、誰もいない空っぽの城と、守るべき民を失った裸の王様だけだ。……あのクズ共には、自分たちが捨てた民がいなければ、自分たちが何者でもないという事実を、これからの余生でたっぷり味わわせてやる」


レオンの言葉に、乙女たちはハッとしたように表情を輝かせた。死を与えるよりも過酷な、存在の否定。五人の乙女たちは、主のそのあまりにも冷徹で、かつ合理的な「処刑」の形に、再び『恋する乙女バースト』を激しく燃え上がらせた。


「ふふ、最高だわレオン。あいつら、明日から誰がパンを焼き、誰が税を納めるのか、絶望の中で数え続けることになるのね」

ヴァレリアが細剣の柄を弄びながら、艶然と笑う。


「王都の機能、完全に停止。……あそこに残ったのは、ただの石造りの墓場よ。さあ、行きましょう、私たちの『国』へ」

ミレイユがゲートの安定を確認し、レオンに歩み寄る。


セレスは慈悲の光でゲートをより一層輝かせ、シオンは最後に王都の影を一つ残らず回収して、彼らから「安眠」さえも奪い去った。


レオンが最後に一度だけ王城を振り返ると、その瞳から放たれた白銀の魔圧が、王都の象徴であった大門を粉々に粉砕した。それは、古い時代の終焉を告げる象徴的な一撃だった。


一歩、レオンがゲートを潜ると、五人の乙女たちがそれに続き、白銀の門は音もなく閉じられた。


ゲートを抜けた先には、ヴィクトール領の広大な大地が広がっていた。そこには、数千、数万の「元スラムの民」「元奴隷」「元娼婦」「誠実な商人」たちが、手を取り合い、レオンが作り出したゴーレムや肥料、そしてシオンの耕した肥沃な土壌を使い、新しい生活を始めていた。


「おかえりなさいませ、レオン様!」


千人を超える民たちの咆哮のような歓声が、大地を揺らす。レオンの魔力溜まりは、この地に満ちる爆発的な生命力と、乙女たちが捧げる狂おしいまでの忠誠、そして自分が救った数多の魂の輝きを吸い込み、夜空に懸かるどの星よりも美しく、どこまでも純粋な白銀の輝きを放ち、新しい世界の夜明けを照らし出していた。





ヴィクトール領に帰還したレオンは、歓喜に沸く民の波をかき分け、休む間もなく次の指示を飛ばした。一国を空にするほどの人口移動だ。救済の光の陰には、必ず「ゴミ」が紛れ込むことを彼は知っていた。


「ミレイユ、スラムの民や商人の群れに紛れて、王都のクズが混じってないか徹底的にチェックしてくれ。搾取の味を覚えた役人や、保身のために逃げてきた小悪党はいらん。見つけ次第、俺のところへ連れてこい。肥料の追加が必要だ」


レオンの冷徹な命令に、ミレイユは無機質な魔導レンズをカチリと鳴らした。


「了解したわ、レオン。ゲートを通過した全個体の生体ログと精神波の解析は終わっているわ。……計算通り、他人の成果を盗むことに特化した『寄生虫』が数名、善良な商人のフリをして紛れ込んでいる。今すぐゴーレムたちに排除クリーニングさせるわね」


ミレイユの背後で、警備用へと換装されたゴーレムたちが音もなく動き出す。一方、レオンは湯気を立てる巨大な竈の並ぶエリアへと向かった。


「奥様方、肉はまだあるか? 足らんものがあったら今のうちに言っておけ。宴の最中に食い物が切れるなんてことは許さん」


レオンの問いかけに、額に汗を浮かべながら大鍋をかき回していた領民の奥様方が、威勢よく声を上げた。


「レオン様! お肉はセレス様が持ってきてくれた分がまだありますけど、これだけの人数ですもの、野菜の備蓄が底をつきそうです! あと、スープの出汁に使う香辛料と、焼肉のタレにするための蜂蜜や果実がもっとあれば、もっともっと美味しいものが作れますわ!」


「わかった。……ヴァレリア、聞いたな。お前が連れてきた商人の伝てを使って、世界中から最高級の野菜と香辛料、果実をかき集めてこい。金はいくらでも出す。ミレイユ、運搬用ゴーレムトラックをさらに増産して、流通を止めさせるな」


レオンが空中に手をかざすと、彼の魔力溜まりが激しく脈動し、白銀の輝きと共に『アイテムボックス』から没収したばかりの王都の財宝や、保存していた予備の魔物肉が広場に次々と積み上げられた。


「セレス、シオン。お前たちは民の健康状態を監視しつつ、必要ならさらに森を狩れ。……いいか、今日この場所にいる奴らは、俺が選んだ『俺の民』だ。一人としてひもじい思いをさせるな」


五人の乙女たちは、レオンの覇気と慈悲が入り混じった命令に、身震いするほどの法悦を感じていた。破壊すべき敵を潰し、守るべき者を徹底的に愛でる。その潔いまでの王の器に、彼女たちの『恋する乙女バースト』は極限まで昂ぶっていく。


レオンの魔力溜まりは、領地に満ちる数千人の食欲、再生への活力、そして五人の乙女たちが捧げる「創造への狂気」を吸い込み、夜明けの地平線を白銀に染め上げるほど、深く、力強く、そしてどこまでも誇り高い輝きを放っていた。




「ミレイユ以外の全員、俺に続け。次は寝床だ。この人数が野宿するわけにはいかない」


レオンの号令が飛ぶ。スラムの民や解放された奴隷たち、五万人近い人々を収容する巨大な「生活圏」を、今この瞬間に無から生み出すというのだ。レオンが地面に深く足を沈めると、その魔力溜まりから地殻を揺らすほどの白銀の奔流が大地へと流れ込んだ。


「セレス、ヴァレリア、シオン、エルザ! 土魔法の出力を最大に上げろ。集合住宅を百棟建てるぞ。一棟につき五百人、計五万人の収容だ。装飾はいらん、まずは頑強な壁と屋根、そして安眠のための部屋を構築しろ!」


「承知いたしましたわ、レオン様。聖なる土よ、迷える民の安息の地となりなさい!」

セレスが杖を掲げると、清浄な魔力が大地に溶け込み、土塊が意思を持ったかのように隆起を始める。


「ふふ、私の魔力で基礎を固めてあげるわ。金貨を積み上げるよりも高く、堅牢にね!」

ヴァレリアが風を纏った土魔法で建物の骨組みを瞬時に固定し、建物の垂直精度を完璧に保っていく。


「死して土に還る前の、束の間の生を謳歌するための揺り籠……。私が闇の土で、最高に静かな夜を約束しましょう」

シオンが影の魔力を混ぜ込んだ土を操り、遮音性と断熱性に優れた漆黒の壁を次々と成形していく。


「騎士の誇りにかけて、民が安心して背中を預けられる城壁のごとき住まいを! はあああっ!」

エルザが聖剣を触媒に魔力を叩きつけると、巨大な石造りの集合住宅が、一本の巨樹が成長するような速さで大地から突き出してきた。


レオン自身は、百棟全体の構造を脳内で並列処理し、百倍の魔力を使ってそれらを一気に具現化させていく。

一棟あたり百二十五の部屋。一部屋に四つの頑丈な石造りのベッド。余計な家具は何もないが、凍えるスラムの地面に比べれば、そこは神殿にも等しい聖域だ。


「……構築ビルド!」


レオンが叫ぶと、広大なヴィクトール領の一角に、整然と並ぶ百棟の巨大な石造りの集合住宅群が、地響きと共にその姿を現した。窓からは夜風が通り抜け、石のベッドにはレオンがアイテムボックスから放出した清潔な布が、ミレイユのゴーレムたちの手によって次々と敷き詰められていく。


五万人の民は、目の前で起きた「都市の創造」に、もはや驚く気力さえなくし、ただ涙を流してその温かい石の壁に触れていた。


「……これで、今夜から誰も寒さに震えなくて済む」


レオンの魔力溜まりは、五万人が吐き出す安堵の溜息と、四人の乙女たちが限界を超えて放った「建設の情愛」、そして大地から立ち昇る新しい街の匂いを吸い込み、漆黒の夜空を白銀に染め上げるほどの、圧倒的な達成感に満ちた輝きを放っていた。





「ミレイユ、見つけたゴミはそのまま牢へ放り込んでおけ。逃げられないように魔力封じの拘束も忘れずにな。そいつらの処遇は、明日じっくり面談して決めてやる」


レオンの冷徹な声が、夜風に乗って響いた。救済の光の裏側で、他人の善意に寄生しようとする輩を、彼は決して見逃さない。


「了解したわ、レオン。すでに選別した『寄生虫』たちの身元と、王都での余罪の照合も進めているわ。……逃走確率はゼロよ。私のゴーレムたちが、彼らを完璧な静寂の中に閉じ込めておくわ。明日の面談、楽しみにしていることね」


ミレイユは淡々と報告すると、レンズの奥に微かな冷笑を浮かべ、暗闇の中へとゴーレムたちを差し向けた。悲鳴さえ上げさせず、王都の膿たちは一つ残らず闇に葬られ、石造りの頑強な地下牢へと消えていった。


「よし。これで今夜やるべきことはすべて終わった」


レオンは、整然と並ぶ百棟の集合住宅と、そこで安らかな眠りにつき始めた五万人の民、そして未だに宴の余韻に浸りながら語り合うヴィクトール伯爵やカイルたちの姿を、静かに見渡した。


「セレス、ヴァレリア、シオン、エルザ。お前たちも、今日はよく働いた。……疲れただろう。もう休め」


レオンの労いの言葉に、四人の乙女たちは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに主への深い愛着と誇りに満ちた表情を浮かべた。


「レオン様、私たちは貴方の側にいるだけで、魔力は満たされますの。……でも、貴方がそう仰るなら、今夜は貴方の安眠を私たちが守らせていただきますわ」

セレスが慈愛に満ちた微笑みでレオンの腕にそっと触れる。


「ふふ、最高の建国記念日になったわね。レオン、明日からはもっと忙しくなるわよ? 世界中の商人が、この『奇跡の領地』に群がってくるんだから」

ヴァレリアが細剣の柄を叩き、未来の利権に胸を躍らせる。


「……レオン様。死霊たちも、この地の暖かな活気に満足しております。……おやすみなさいませ、我が主」

シオンが影を纏って一礼し、エルザもまた聖剣を胸に当てて、主の無事と安息を祈るように深く頭を下げた。


レオンは一人、広場の中央で焚き火を見つめ、静かに息を吐いた。

数時間前まで地獄のようなスラムにいた者たちが、今は温かい石の壁に守られ、腹を満たして眠っている。彼が渇望した力は、誰かを支配するためではなく、この「当たり前の平穏」を強引に引き寄せるためにあった。


レオンの魔力溜まりは、領地に満ちる数万人の安らかな寝息と、五人の乙女たちが捧げる「永遠の忠誠」、そして明日から始まる新しい時代への静かな野心を吸い込み、夜明け前の最も深い闇の中で、どこまでも清冽で、力強い白銀の輝きを放ち続けていた。




ヴィクトール領に、新しい時代の夜明けを告げる柔らかな朝日が差し込んだ。


集合住宅からは、昨日までの絶望が嘘のような、穏やかな寝息と目覚めの気配が漂っている。しかし、広場のかまどでは、日の出前からすでに火が焚かれ、芳醇なスープの香りが立ち込めていた。五万人の胃袋を支え続けるため、一睡もせずに、あるいは交代で炊き出しを続けてくれた領民の奥様方の姿があった。


レオンは、立ち昇る湯気と活気の中に静かに歩み寄り、大鍋を囲む彼女たちの前に立った。


「……奥様方、少し手を止めてくれ」


レオンの声に、疲れも見せず立ち働いていた女性たちが顔を上げた。彼女たちは、自分たちを救い、この奇跡の光景を作り出した少年の姿を見て、背筋を正した。


「昨夜から今朝にかけて、五万人もの民に飯を食わせてくれたこと、心から感謝する。あんたたちが作ってくれた温かいスープと肉がなければ、王都から逃げてきた連中の心は折れていたはずだ。あんたたちが、この国の『命』を繋いでくれた。本当にありがとう」


レオンは、飾らない言葉で、けれど真っ直ぐに彼女たちの瞳を見て頭を下げた。


圧倒的な武力で王都を蹂躙し、神のごとき魔力で一夜にして都市を築き上げた「救世主」が、自分たちのような名もなき村の女たちに、一人の人間として心からの謝辞を述べている。その事実に、奥様方の間に衝撃と、それ以上の熱い感動が走った。


「め、滅相もございません、レオン様! 私たちだって、昨日までは死を待つだけの身だったのです。それをレオン様が助けてくださって……。お腹を空かせた子供たちが笑って食べてくれる姿を見られただけで、私たちは幸せなんですわ!」

一人の年配の女性が、エプロンで目元を拭いながら声を震わせた。


「そうだわ! それに、ミレイユ様が用意してくださった魔導コンロや、セレス様が運んでくださる新鮮な食材……こんなに贅沢な環境で料理ができるなんて、一生の思い出です!」

別の女性も、晴れやかな笑顔で応えた。


レオンは頷き、隣に控えるヴァレリアに視線を送った。

「ヴァレリア、彼女たち全員に、特別手当を出してやってくれ。金貨だけでなく、休息と、家族とゆっくり過ごすための最高の食材もだ。それからミレイユ、炊き出しの全自動化はまだか? 彼女たちの負担をこれ以上増やすな」


「ふふ、もちろんよ。彼女たちはこの国の『食の功労者』だもの。王都の貴族も羨むような褒賞を用意してあげるわ」

ヴァレリアが優雅に微笑み、ミレイユもまた「すでに調理補助ゴーレムの最終調整に入っているわ」と短く応じた。


セレス、シオン、エルザもまた、主が武力だけでなく、こうした細やかな「人の営み」を何よりも大切にしていることに、深い敬愛と誇りを感じ、その『恋する乙女バースト』を朝の光の中でさらに昂ぶらせていた。


レオンの魔力溜まりは、奥様方の誇らしげな笑顔と、朝食を待つ五万人の民の希望、そして彼女たちが捧げる「王への無償の信頼」を吸い込み、昇り始めた太陽よりも力強く、どこまでも温かい白銀の輝きを放っていた。



ヴィクトール領の朝、調理補助ゴーレムたちが整然と動き出す喧騒の片隅で、レオンは自ら竈の前に立った。昨夜、国家転覆に等しい大掃除と、一夜にして五万人分の都市を築き上げるという超常の激務を共にした五人の乙女たち。彼女たちが主への愛ゆえに疲れを見せないからこそ、レオンは自分の手で彼女たちを労いたいと考えたのだ。


「セレス、ヴァレリア、ミレイユ、シオン、エルザ。そこに座ってろ。今日は俺が作る」


レオンの言葉に、五人は信じられないものを見るような表情で固まった。

レオンは魔法で滑らかに整えた分厚い石板を火にかけ、その熱を均一に保つ。最高級の岩塩を振った厚切りの魔物肉を石板の上に載せると、じゅうっという食欲をそそる音と共に脂が弾けた。石板ならではの遠赤外線効果で、肉はふっくらと焼き上がっていく。その傍らで卵を割り入れると、白身が縁からカリカリと焼き上がり、黄身が絶妙な半熟の状態を保つ。ミレイユが焼いた香ばしいパンに、たっぷりの肉炒めと目玉焼きを挟み込み、レオン特製の「慰労サンドウィッチ」が完成した。


「ほら、食え。昨日は無理をさせたな。お前たちの力があったから、あいつらは今朝、生きて目覚めることができたんだ。感謝してる」


無造作に差し出された皿。そこには、王都のどんな宮廷料理よりも温かく、力強い「愛」が込められていた。


セレスは、差し出されたサンドウィッチを両手で包み込むように受け取り、その温もりに触れた瞬間、碧い瞳から大粒の涙をこぼした。

「レオン様……貴方様が、私たちのために……。この温かさ、一生忘れませんわ……」


ヴァレリアは、不敵な笑みで誤魔化そうとしたが、震える指先が本心を隠せていなかった。

「もう、反則よ、レオン……。こんなの食べたら、一生貴方の側から離れられなくなるじゃない……っ」

溢れ出す涙を拭おうともせず、彼女は幸せそうにサンドウィッチを頬張った。


無機質を装っていたミレイユでさえ、レンズの奥の瞳を潤ませ、データの計算が狂うほどの動揺を隠せなかった。

「……心拍数の上昇が止まらないわ。レオン、貴方の作る食事は、私の理論を超えた『奇跡』だわ」


シオンは影を纏うことさえ忘れ、少女のような表情で涙を流した。

「死霊術師の私に、これほど温かな生の喜びを教えてくださるなんて……。レオン様、私はどこまでも貴方についていきますわ」


エルザは騎士としての居住まいを正そうとしたが、主の不器用な優しさに堪えきれず、嗚咽を漏らした。

「レオン様……っ、騎士として、これ以上の名誉はございません……! 私は、私は果報者です……!」


五人の乙女たちは、涙を瞳に溜め、互いに顔を見合わせながら、レオンが作ってくれたサンドウィッチを噛み締めた。石板でじっくり焼かれた肉の旨みが口いっぱいに広がり、その一口一口が彼女たちの魂をかつてないほど激しく震わせ、レオンへの情愛を銀河の果てまで届かんばかりに昂ぶらせていく。


レオンの魔力溜まりは、五人が流す幸福な涙の熱量と、彼女たちが捧げる狂おしいまでの、そして一点の曇りもない「恋する乙女」たちの献身を吸い込み、朝日に照らされた広場を、優しく、けれど世界で一番力強い白銀の輝きで包み込んでいた。





「ヴァレリア、お前が案内してやってくれ。カイルたちを最初の村……あのクズ子爵が支配していた旧領へと連れて行くんだ。あそこが、俺たちの広げる新しい世界の第一歩になる」


レオンの言葉に、ヴァレリアは艶やかな唇を吊り上げ、優雅に一礼した。

「ええ、喜んで。私の商隊のルートもあわせて整備しておきたいし、ちょうどいいわ。レオン、騎士団と役人の移動はどうする? 私がゲートを繋げて一瞬で送り届けるか、それともゴーレムトラックで物資と一緒に運ばせる?」


レオンは少しの間、眼前に並ぶカイルたちの表情を観察した。

ゲートでの瞬間移動は効率的だが、カイルたちがこれから統治する土地へ向かう道中、その目で荒廃した大地や、自分たちが守るべき街道の現状を確認しておくことも、指導者としての「地固め」には必要だろうと考えたのだ。


「……よし。行きはあえて、ゴーレムトラックで行け。荷台にはヴァレリアにかき集めさせた食料、種子、そして新しい農具が山積みだ。カイル、お前たちがその物資と共に街道を堂々と進む姿を、民に見せてやれ。『王都の圧政は終わり、新しい希望が来た』とな。その代わり、道中にまだ残党や盗賊がいたら、お前たちの手で叩き潰してこい。それが最初の仕事だ」


カイルは力強く頷き、背後の騎士たちに号令をかけた。

「承知いたしました! 賊の掃討など、我ら騎士団の本来の役目。民の不安を、その蹄の音で払拭してみせましょう!」


「ただ、緊急時のためにゲートのくさびは打っておく。ミレイユ、トラックにポータブルのゲート発生機を積め。あちらに到着し次第、ヴィクトール領と旧子爵領を常時接続できるようにしろ。物資の滞りは許さん」


ミレイユが魔導具の調整を素早く終え、トラックの運転席へデータを転送した。

「接続完了。移動中も座標は追跡し続けるわ。……カイル、もし手に負えない事態になったら、そのゲートを起動しなさい。一秒以内に私たちが援護に向かうわ」


「ヴァレリア、頼んだぞ。商人の目線で、あの村の物流の急所を見極めておけ」

「ふふ、任せておいて。あそこを大陸一の流通拠点に変えてみせるわよ」


ゴーレムトラックのエンジンが、魔力の脈動と共に重厚な音を響かせ始めた。積み上げられた物資の山は、これから始まる「再生」の象徴だ。カイルたちを乗せた車列が、ヴィクトール領の境界を越えて力強く走り出す。


レオンの魔力溜まりは、走り去るトラックが巻き上げる土埃と、カイルたちの背中に宿る不退転の決意、そしてヴァレリアが放つ「商いの野心」を吸い込み、どこまでも遠く、旧領の果てまで届かんばかりの鮮烈な白銀の輝きを放っていた。




「さて、休んでいる暇はないぞ。残ったみんなは俺と一緒に、王都周辺の『死にかけの村』を片っ端から救いに行く。それが終わったら、その村々を食い物にしてきたクズ貴族どもの大掃除だ」


レオンの冷徹かつ熱い宣言に、セレス、ミレイユ、シオン、エルザの四人が一斉に顔を上げた。ヴァレリアがカイルたちの案内で旧領へ向かった今、この四人がレオンの直掩ちょくえんとして、最も過酷な「最前線」を担うことになる。


「ミレイユ、王都広域の索敵を最大出力で行え。収穫を奪われ、冬を越せずに餓死寸前の集落を優先的にリストアップしろ。……一秒でも遅れれば、消える命がある」


「……了解したわ、レオン。魔導衛星のフォーカスを絞る。……見つけたわ。王都から北西、深い渓谷の陰に三つ、さらに南の湿地帯に五つ。どこも魔力反応が極めて微弱……限界ね。今すぐ転移座標を固定するわ」


ミレイユが魔導具のレンズを無機質に光らせ、次々と「救済対象」の座標を空間に刻んでいく。


「よし。セレスとシオンは、俺が『アイテムボックス』から吐き出した食料と水を配りつつ、病人や衰弱した奴らを即座に治療しろ。エルザは周囲の魔物や、民の食料を奪いに来る徴税役人、私兵どもを一人残らず叩き潰せ。……生かしておく必要はない。そいつも全部『肥料』だ」


「御意にございます、レオン様。絶望の淵にいる方々に、貴方様の慈悲と、私の癒やしの光を届けましょう」

セレスが神々しい光を杖に宿し、準備を整える。


「……ふふ、飢えと病で死を待つだけの魂に、もう一度、生の悦びを。……逆らうクズどもの魂は、私の影で永遠の飢えを味わわせてあげますわ」

シオンが影を広げ、無数の死霊騎士たちを再編する。その瞳には、主の敵を根絶やしにする悦楽が宿っていた。


「近衛騎士団の風上にも置けぬ、民の血を啜る寄生虫ども……。私の聖剣で、その腐った根性を断ち切って差し上げます!」

エルザが聖剣を抜き放ち、その鋭い剣気が空気を切り裂いた。


レオンは広場の中央で、再び巨大な転移ゲートを開いた。その門の向こう側に見えるのは、痩せ細った子供が泥水を啜り、家畜さえも食い尽くされた凄惨な村の光景だった。


「行くぞ。……この国から『飢え』という言葉を消してやる」


レオンがゲートに一歩踏み出すと、四人の乙女たちがその後を追い、凄まじい魔力の渦が王都近郊の村々へと飛び散っていった。


レオンの魔力溜まりは、死を待つ民たちの微かな助けを求める声と、四人の乙女たちが放つ「断罪と救済」の激しい情愛、そして次に屠るべきクズ貴族たちへの底冷えするような殺意を吸い込み、昼間の太陽を塗り替えるほど、冷徹で美しい白銀の輝きを放ち続けていた。



「分かっているな。死体は一欠片も残すな。首を落とした後、その首も、胴体も、流れた血の一滴までも回収して肥料にする。民の血を啜ったクズ共だ、最期くらいは大地の肥やしになって、食われる側に回ってもらう」


レオンの冷徹な号令が下された瞬間、王都北西の渓谷に位置する最初の村――徴税役人が民の最後の種籾たねもみまで奪おうとしていた現場に、白銀の閃光が降り立った。


「な、なんだ貴様らは! 私は伯爵閣下から委託された正当な――」


言い終わる前に、レオンの指先から放たれた真空の刃が、役人の首を音もなく断ち切った。宙を舞う首が地面に触れる刹那、シオンの影がその身を飲み込み、即座にレオンの『アイテムボックス』へと転送する。


「次だ。エルザ、私兵を片付けろ。セレス、村人に粥を配れ」


「御意!」


エルザの聖剣が風を切り、民を足蹴にしていた私兵たちの首が次々と跳ね飛ばされる。彼女の剣筋には迷いがない。主の命に従い、ゴミを片付ける事務的な正確さで、その死体は地面を汚す前に次元の裂け目へと消えていく。


セレスが杖を振れば、村の中央に巨大な炊き出しの鍋が出現し、香ばしい肉と野菜の香りが絶望していた民の鼻腔をくすぐった。餓死寸前だった子供たちが、震える手で差し出された温かい粥を啜り、涙を流す。


「シオン、地下の貯蔵庫を確認しろ。隠されている食料があれば奪い返して民に分けろ。……クズの屋敷にあるものは、すべてこの村の再建に使う」


「ふふ、お任せくださいませ、レオン様。……さあ、影たち。隠れたネズミ一匹逃さず、すべてを土へと還しましょう」


シオンが広げた影の領域は、村を支配していた役人の出張所を丸ごと飲み込み、中に隠れていた汚職役人たちの首を、まるで熟した果実をもぎ取るように刈り取っていった。回収された死体は、ヴィクトール領の肥料プラントへと直送され、明日には最高品質の肥料へと精製される運命にある。


ミレイユは上空でホバリングしながら、次なる獲物――この村を搾取していた「親玉」である子爵の屋敷をロックオンしていた。


「レオン、次のターゲットまで距離五キロ。私兵の数は五十。……首の回収効率を最大化するために、私が広域重力結界を展開するわ。貴方はただ、掃除クリーニングを完了させるだけでいい」


「よし。行くぞ。……この地を汚すゴミを一掃し、実り豊かな大地に変えてやる」


レオンの魔力溜まりは、救われた民たちの震える感謝の声と、四人の乙女たちが放つ凄惨なまでの「断罪の美学」、そして回収された大量の「肥料」が放つ死の気配を吸い込み、冬の渓谷を真昼のように照らし出す、美しくも残酷な白銀の輝きを放っていた。




「クズの掃除は後だ。まずは死にそうな村から順に回る。一刻を争う命を優先しろ。ゴミ共は逃げ隠れしたところで、後で俺が地の果てまで追い詰めて肥料にしてやる」


レオンの断固たる優先順位に、四人の乙女たちは弾かれたように頷いた。復讐や粛清よりも先に、消えゆく小さな命を救う。その「真の王」としての器に、彼女たちの心は再び熱く震える。


「ミレイユ、次の座標だ! 最も生存率が低い場所を割り出せ!」


「……了解したわ。南の湿地帯、第三集落。流行病と飢餓が重なり、村人の八割が自力で動けない状態よ。周囲を囲む泥濘ぬかるみが、彼らの脱出を拒んでいるわ。転移、開始する!」


ミレイユの宣言と共に、視界が白銀に染まる。次の瞬間、レオンたちが降り立ったのは、腐敗した水の臭いと死の静寂が支配する、泥沼に沈みかけた村だった。


「……酷い。これはもう、人の住む場所ではありませんわ」

セレスが悲痛な声を上げ、即座に杖を天に掲げた。

「聖なる慈雨よ、この地の毒を洗い流し、清らかなる命の息吹を! ピュリフィケーション・フィールド!」


空から降り注ぐ白銀の光の雨が、病を運ぶ瘴気を一瞬で浄化していく。レオンは泥濘に沈みかけた家屋の屋根を掴むと、百倍の怪力でそれを引き剥がした。中には、虚ろな瞳で重なり合うように倒れている村人たちの姿があった。


「シオン、影を出せ! こいつらを冷たい地面から引き上げろ! セレス、即座に治癒魔法だ! エルザ、こいつらが飲み込める程度の緩い粥を用意しろ!」


「お任せくださいませ……。影よ、優しく彼らを抱き上げなさい。……まだ死なせはしませんわ。レオン様が、貴方たちを選んだのですから」

シオンの影が、湿った土から村人たちをすくい上げ、ミレイユが即座に構築した乾燥した石造りの広場へと運んでいく。


エルザは石板を熱し、レオンがアイテムボックスから出した最高級の米と薬草を煮込み始めた。

「……生きてください。レオン様がこうして駆けつけてくださったのです。もう、誰も貴方たちを捨てはしません!」


レオンは村の全域を索敵し、泥の中に埋もれていた赤ん坊を抱き上げた。微かな鼓動を確認し、自らの魔力を直接流し込んでその命を繋ぎ止める。


「……生きたい奴は、俺の手にしがみつけ。死にたい奴がいても、俺が許さん」


その言葉は、絶望の淵にいた村人たちの魂に、白銀のいかずちとなって突き刺さった。一人、また一人と、死の淵から這い上がってきた民たちが、レオンの背中を見て涙を流す。


ミレイユは上空で、この惨状を見捨てて私腹を肥やしていた代官の館をロックオンしていた。

「……レオン、救出率九十五パーセントを超えたわ。残りの五パーセントは、すでに命の灯が消えていた者たち……。ですが、彼らを放置した『ゴミ』の居場所は、すでに私の計算の中に閉じ込めてあるわ」


「……よし。ここの奴らが一口でも粥を飲み干したら、次へ行くぞ。……ゴミ共には、最高の恐怖を味あわせながら肥料になってもらう」


レオンの魔力溜まりは、泥の中から救い出された民たちの震える手の温もりと、四人の乙女たちが放つ慈愛と憤怒の烈火、そして次に執行すべき「断罪」への静かなる決意を吸い込み、暗い湿地帯を昼間のように照らし出す、美しくも苛烈な白銀の輝きを放ち続けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ