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第1話:異骸の魔解士(いがいのまかいし)
その日、俺は死んだ。
トラックに跳ねられた――という平凡な結末ではない。
大学の地下、封鎖された旧研究棟で「人間の解体と魂の在処」について研究していた男。名を榊 拓真。
優秀な解剖学者であると同時に、倫理などとうに捨てた異端の探求者だった。
「魂とは、肉体の“どこ”に宿るのか?」
彼は死の間際、最後の実験で自らの神経を切り離し、視覚だけが映し出す“魂の浮遊”を記録しようとしていた。
――そして、目を覚ました時、世界は変わっていた。
目を開けた彼が見たのは、白い天井でも、科学の光、蛍光灯でもなかった。
光輝く謎の石、暖色の光が身体を包むと同時に優しい肌の感触と、優しい声音、いや、音。
「あ……あぅ…あ(ここは一体何なんだ?)」
何故か上手く発声が出来ない、言葉も喋れない。
これが魂だけの存在なのか?
俺はついに真理にたどり着いたのか?
否、そんな高尚なものではなかった。俺、榊 拓真は赤子として転生していた。
魔力が大地を循環する異世界『オステラ』。
そこは魔法があり、死が隣り合わせにある、魔法と剣の世界だった。




