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その怜奈の言葉を飲み込むのに、相当時間がかかったと思う。
「ごめん、よくわからないよね。さっきから変な質問ばっかして、退屈だよね。無理やり真ん中に置いて連れてきて、迷惑だったよね。ほんと、ごめんね」
今までに見たことのない表情で怜奈は言う。その姿は、まるで……
「これが、本当の私。りんりんなら、分かるよね」
私とそっくり。分かるよ、その気持ち。
「でも、たぶんりんりんは、そんな自分が好きじゃないでしょ」
まぁ、バレてるよね……当たり前か。
「そうだね」
「私も、嫌いだった。だけど今は楽しいよ」
怜奈は笑顔で言う。
「でもね、私、別に自分を変えたわけじゃないんだ」
「え?」
どう見たって、別人のような性格。これで、変えてないわけ……
「隠してた部分を、前に出してみただけ。人の評価を気にして抑え込んでた自分を、出してあげただけ」
そんなこと、できるならとっくに……
「りんりんってさ、仲良くなったらいっぱい喋るタイプでしょ。実はいっぱい友達作ってみたいって思ってるでしょ」
どうしてこんなに見透かされているんだろう。
「わかるよ、同じだから。私たちが話しかけても嫌そうじゃなかったし、どんどん心開いてくれてるなぁって思ったし」
怜奈はそういうと、私の手を強く握った。
「不安なのはすごくわかるけど、本当の自分を隠してたらもったいないよ。私、りんりんと友達になれてよかったってほんとに思ってる。だから、もっと積極的になってもいいんだよ」
自然と涙がこぼれた。私の頭を優しくなでる怜奈の手。そんな私たちを眺めるめぐみ。
きっと怜奈も、こうやって救われたんだな……
二人の前では素の私でいてもいいのかもしれない。そう思った。
「あ、りんりんおはよー!」
次の日、教室に入ると、怜奈とめぐみが笑顔で挨拶をしてくれた。
私は決心して声を出す。
「二人とも、おはよ!」
何人かのクラスメートが私の方を見ている。怪訝そうな表情だったり、目を丸くして驚いていたり。
でも、二人は笑顔だった。
「いいじゃん、その意気だよ」
「ねえりんりん、今日の数学の課題やってきた?」
「やってきたよ」
「マジお願い! 写させて!」
どう答えよう。今までだったら、即答でいいよって答えてたはず。
ううん、どう答えようとかじゃない。素でいいんだよね。
「え~どうしよっかなぁ、私頑張ったしな~」
「いいじゃん頼むってー」
「仕方ないな~いいよ」
そう言って課題を手渡す。初めてのことに、手が震えてしまっていた。
「さんきゅ~」
よかった、これでいいんだ。
心が軽くなるのを感じた。この二人なら、素の私を受け入れてくれる。
偽りの私に、さようならを言わなくちゃ。




