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調理実習


 

 携帯の着信音で目を覚ます。誰だこんな朝早くから私に電話をしてきてたのは。

 じゃっかんイラっとしながらも画面を見ると予想通りの名前があった。



「……何時だと思ってるのよ、あのバカ」



 こんな朝っぱらから電話をかけてきたバカは北川だった。

 まだ布団の中でぐっすり寝ていたいのに起こされて機嫌が悪い私は着信を無視して眠りにつこうとする。



 が、直ぐにまた着信音がなる…

 あのガキ!!



「こんな朝っぱらからなんのよう!」



「あ、やっと出た。なんか機嫌悪くね? ちゃんと寝たほうがいいよセンパイ」



 イラつきながらも電話に応答した私に対して開口一番でふざけた事を言う北川……






 マジでこのくそガキ!!

 誰のせいで機嫌が悪いと思ってんの!!



 だいたい私の睡眠時間を奪い去っていったのは貴様だ北川!



「なんのよう? 用がないなら二度かけてこないで」



 ぶっきらぼうに応える私。

 


「茜センパイ…今日は調理実習でしょ」



 確かに今日私のクラスは調理実習を行うことになっている。



「……何であんたが知ってんの?」



 ホントに何で知ってんの?

 コイツは私のストーカーなのかな?



「俺の分もよろしく」



「は!?」



 私がなにか反応する前に奴はこちらの質問を無視して電話を切った……



 落ち着け、落ち着くんだ茜。

 朝からあんな自由人なんかのためにペースを乱されるな。



 ……とりあえずやつにだけは何もあげないと心に誓った。

 無いとはおもうけど、万が一失敗して食べれないような物が出来た場合だけやつにお裾分けしよう。



 そんな事を考えていた私の心を見透かすようにロインにやつからのメッセージが入っていた。



 俺のぶんが無かったら茜センパイの教室にまで行っちゃうかも??



 この男は私を脅しているのだろうか??

 こんな目立つやつに教室にまで来られてクッキーを要求されたら絶対にめんどくさい事になる。



 それを分かっていながらコイツは……

 ホント…渡すクッキーにワサビでもぶち込んでやろうかな。



 落ち着け私。

 こんな時こそ深呼吸だ。



 というか私の料理なんていつも食べてるんだから別に食べなくてもいいじゃない。



 今日の調理実習のメニューはクッキーを作る予定だ。



 ……というかいつ渡せばいいんだ?



 人目につくところで渡すのはなるべく避けたい。

 うん、あいつに見つかる前に家に帰ろう。そんで夜中に渡せばいいや。




・・・




 授業が終わりそそくさと家庭科室を出ようとしたところで近くで話す女子生徒の声が聞こえてきた。



「部活の後輩にあげよかっな」



「もしかして北川君に!」



「うん、女バスと男バスで別れてるけど、休憩時間被ると皆んなで話しに行ってるの」



 噂には聞いてたけどあいつそんなにモテモテなのか…

 いや、あの男の周りに女子が群がってるのは容易に想像できるな。



「じゃあ私も渡しに行ってもいい?」



「うん、1人で渡しに行くのは心細いし」

 



 じゃあ渡しに行くなと言いたい。というか、なんだろうこの気持ち? なんだかモヤモヤする……



 そもそも何で私がアイツに振り回されないといけないのよ……北川が朝から迷惑な電話をかけてこなきゃこんな気持ちにはならなかったのに……



 というか、別にアイツが女子たちからクッキーをいくら貰おうが私には関係ないし…



 そもそも色んな子からクッキー貰えるなら私のはいらないんじゃないの?

 




 昼休み体育館裏に来て!



 …そう思いながらも…つい北川にロインを送ってしまった。いや、アイツから欲しいって言ってきたんだし……やっぱりすぐに渡した方がいいかなって。



 でも、自分から言い出したんだから直ぐに来てくれるよね。



 ……なんて思ってた時期が私にもありました…



 あのバカはムリってふた文字で返してきた後によく分からない忙しいと喋るクマのスタンプを送ってきた。



 忙しいって…他の女の子からクッキーを貰うのに忙しいってことですか!?

 





・・・







 授業が終わり放課後。なんで私は2年の教室に向かって歩いているんだろう。



 クッキーなんて後で渡せばいいし、適当なヤツのことだから「やっぱいらね」とか言うかも知れないのに。



 なんでだろう? 

 向かわずにいられない。



 北川がいる教室を覗くと椅子に座っているのを確認できた。

 しかし、その周りには女子生徒が数人いて北川を呼びにくい。



 というか、どちらにしろ教室に入ってヤツを呼び出すのは私にはなかなかの難易度なのでは?



 やば!

 


 北川と目があった私は逃げるように人が少ない方に早歩きで移動する…

 …別に逃げる必要なんてないのに反射的に逃げてしまった…



 はぁ、クッキーはあとで渡せばいいや。

 もう帰ろうかな。



「待って」



 そんな事を思っていた私の腕を後ろから掴んだヤツがいた。



「き…北川」



「こっち」



「ちょっと!」



 そのまま私の腕を掴んでどんどん歩いていく北川。

 


「逃げた?」



「に…逃げてない…」



 みっともない所を見られた…恥ずかしい…穴があったら入りたい。

 


「昼はごめんね」



「な…なにが」



「クッキー持ってきてくれようとしたんでしょ?」



「あ、あんたが…ほ…欲しがってたから」



「うん、欲しいよ」



 そ…そんなストレートに恥ずかしいこと言わないでよ…



 自分でも顔が赤くなっていっているのが分かる。

 私の身長がコイツよりも30センチぐらい引くくてよかった。

 これならこのバカみたいに熱くなっている顔を見られるずにすむ。



「茜センパイがくれるものなら何でも欲しいよ」



「そ、そう。じゃあコレあげる」



 とにかく直ぐにでもこの場を立ち去りたい私は北川にクッキーを押しつける。



「わ…私もう行くか…」



「だーめ」



「ちょっと!?」



 あろうことかヤツは私の顎を指で軽く持ち上げて自分の方に引き寄せた。

 おのずと北川と見つめ合うような格好になった。



「顔真っ赤じゃん」



 そうなると当然コイツに顔を見られたわけで……

 私の顔がゆでダコのように真っ赤になっているのがバレた。



「かわいいね」



「か…からかわないでよ…」



「センパイから何か貰えるのも嬉しいけど……やっぱり今は茜センパイのことが1番ほしいかな」



 くちびるに柔らかい感触⁇



「な、何してんのアンタ!?」



「キスだけど? じゃあ俺は部活行くから」



 は? キスだけどじゃないわよ!?



 え?? わたし今キスされたの??













「あーかわいい……俺を殺すきかよ」

 





 

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