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カレー


「今日も朝から北川君カッコよかったわ」



「それね、まじプリンス」



「私もあんな彼氏欲しいわー」



 教室に入るとクラスの女子が北川の話題で盛り上がっていた。

 


 私はギリギリに登校しているのでクラスメイトの大体はもう学校に来ていて教室の中はすでに賑やかな雰囲気だ。



 4月も後半に入り新しいクラスの中でもコミュニティが出来上がってきている。



 私?

 私は自分を律するためにあえて1人で過ごしているだけだ。

 



 そんな私を憂鬱な気分にさせているのが今日の晩御飯はカレーが食べたいとかロインで朝からメッセージを送ってきた奴だ。



 結局、材料費の3分の2を北川が払うことで決定した。

 さすがに毎日作るのは手間なのでとりあえずは月、水、土の週に3回という話しで決まった。



 奴は毎日作ってとかほざいていたが却下した。

 確かに食費は浮くけど普通にめんどくさい。



 とはいえ、大半の食費を出してもらう以上はある程度のリクエストには答えようと思う。



 でもカレーって一から作ると意外と時間かかるし面倒なんだよなぁ。



 休日ならともかく学校帰りには作りたくないな。

 最近のレトルトカレーは美味しいしそれで誤魔化されないかな。



 北川ならきっとその辺の料理が出来る女子を捕まえて家に呼べば喜んで作ってくれるだろうに。



 もしかして私のことの好きなのかな?

 いやいや、会ったばかりだし…そんなことないよね。



 でも、もしかしたら?

 いや、そんな妄想は不毛だからやめよう。



・・・



 授業も終わりあっという間に放課後になった。

 ホームルームが終わるのと同時にそそくさと教室を出た私は夕食の食材を買いにスーパーに赴く。



 玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、カレールー、牛肉とその他にも色々と材料を買っていく。

 今日の気分は豚肉や鶏肉よりも牛肉の気分だ。



 学校が終わったばかりの時間帯でスーパーはそこまで混んでないからたいして並ぶことなくレジにたどり着ける。

 


「いらっしゃいませ! ポイントカードはお持ちでしょうか?」



「はい、ヘイヘイでお願いします」



 最近はヘイヘイを使用したキャッシュレス決済で会計をしている。

 よく分からないけど現金で買うよりはお得かなって。



 家に着いた私はさっそくカレーを作り始める。

 まずは野菜と肉を切り分けて、鍋にみじん切りにしたにんにくや生姜を入れて弱火にかける。

 そこからお肉や野菜を炒めたら水を入れて煮出てて、アクを取りローリエの葉を入れてから30分ほど煮込む。

 時間がだったらローリエの葉を抜いてルーを溶かしてさらに煮込む。



 なんだかんだで作り始めると楽しくなってくるから不思議だ。

 あとは野球が始まる前までにお風呂に入ろう。



 ピンポーン。

 19時を過ぎたあたりで私の家のインタホーンが音を鳴らす。



 誰が来ているのかカメラ越しに見てみると予想通り北川だった。

 さっき部活が終わって今から帰るとロインにメッセージが入っていた。



 いや、今から帰るって…ここはあんたの家じゃないからね。

 ちなみに北川はバスケ部に所属していてレギュラーで試合にはスタメンで出ているらしい。




 北川は「俺が試合出てるの茜先輩に応援してほしいな」なんて言っていたがそんな日は来ないだろう。

 普通に試合を観に行くのがめんどくさいのもあるが、私たちの仲を勘繰られの嫌だしミーハーだと思われたくない。



・・・



 19時半前に北川は私の家にやってきた。



「本当にカレー作ってくれたんだ」



 そして奴はこの部屋に入って開口一番にそう口にした。



「あんたが作れって言ったんでしょ!」



 自分でリクエストしておきながら何を言っているんだコイツは!

 わざわざ作ったというのに…



「うん、すごくうれしい」



「そ、そう」



 その嬉しそうな顔は反則だと思う。

 こちとらイケメンに慣れてないんだから勘違いしちゃうじゃない。



 私の知っている男子なんてたまに顔を出す同じ部活の平凡な顔したハーレム男だけなんだから。

 


「先輩が俺のリクエストを聞いてくれると思わなかった」



「大半の食費はあんたが出すことになってるから…しょうがなく作ってるだけだから」



「もー、食べていいよね」



「って! 聞けよ!」



 こいつ自分から聞いてきたくせに興味なさすぎじゃない?

 しかも、気づけば勝手によそって食べてるし…



 確かに北川がロインで言っていた帰宅時間に合わせて温めておいたからすぐ食べれるようにはなっていたけど。



「美味しい」



 無我夢中でどんどんカレーを平らげていく姿を見ると本当に美味しいと思ってくれてるんだなーと嬉しくなる。



「おかわり」



「はいはい、今よそうから待ってて」



 さすがは部活終わりの男子高校生。

 食べ盛りなだけあって食べるスピードも食べる量も私とはぜんぜん違う。



「なんか人妻みたいでいい」



「な、なに変なこと言ってるのよ!」



 誰が人妻よ!

 


「あ、ホームラン」



「え! 本当だ!」



 そ、そんな…

 コイツにかまってたせいで推しの逆転3ランホームランを見逃した!

 


「く!」



「本気で悔しがってるじゃん」



 生で見れなかったのは悔しいけど、推しがホームランを打ったのも試合に逆転したのも嬉しい。



 まぁ、見逃しちゃった物はしょうがないし私もカレーを食べますか。



「まだ食べてなかったんだ」



「そうだけど?」



「俺のこと待っててくれたの?」



「そ、そうよ。どうせなら一緒に食べたいし」



 せっかく2人ぶん作ったのに別々に食べるのはさみしい。



「…かわいい」



 北川が小声で何か言っていたけど、もしかしたら私はけっこう恥ずかしい事を言ったんじゃないかと後から羞恥心に感じて悶えていた私には聞こえなかった。



 あと、何故か奴の顔も赤くなっていた。

 


 

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