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相合傘


「雨とか萎えるわー!」



「マジでそれ! 雨降ると筋トレになるの最悪だわ…部活行きたくねー」



 放課後。教室の窓から外の様子を見てみれば雨がザーザーと降っているのが確認できる。

 



 ……どうしよう?



 …傘が無い。



 降水確率70%だったのに傘を持ってくるの忘れるなんて、自分の馬鹿さ加減に呆れてなんとも悲しくなる。



 とりあえず雨が少しでも止むことを期待して図書室で時間潰そうかな。




 図書室でスマホをいじり時間を潰すこと30分……どうやらスマホで調べてみた結果、待っていても雨が止むことは無さそうだ。



 うん……強行突破しよう。

 幸いなことに学校から我が家まで10分もかからない。走れば被害は最小限で済むかもしれない。



 よし、行こう。

 私が決意を固めたタイミングで後ろから声が聞こえた。

 


「傘ねぇーの?」



 話しかけてきたのは北川だった。



「…うん」



「昨日話してるときに明日は雨が降るって言ってなかった?」



 はい……人様に傘を忘れるなと忠告しておいて自分が忘れるという失態を犯した間抜けは私です。



「ああ、もしかしてセンパイ」



「な、何よ?」



「俺と相合傘したくてワザと傘を忘れてきたの?」

 


「違うわよ!」



 な、なんて恐ろしい妄想をするのだコイツは。でも、確かに「傘を持ってこい」なんて忠告しておいて自分は忘れるなんて……



 そう北川に思われたとしてもしょうがないのかもしれない。



「で、入る?」



 嬉しそうに私に聞いてくる北川…



「…は、入んない」



 ニヤニヤしながら聞いてくるコイツにイライラしてつい反射的に断ってしまった。



「……どうやって家まで帰るの?」



「走って帰る」



「俺と相合傘するの嫌?」



「…嫌」



 というか、コイツと2人で相合傘をするなんて目立ってしょうがない。

 残りの学園生活はなるべく平穏に過ごしたいのだ。



「…じゃあこの傘あげる」



 そう言って私の手に自分が持っている傘を押し付けてくる北川。



「え」



「茜センパイを雨に濡らして帰らせるわけにいかねーし」



「あ、あんたはどうすんのよ!?」



「別に俺は少しぐらい雨に濡れても平気だし」



 な…何よそれ…

 アイツは心配してくれてるのに……私はくだらない意地ばかり張って。



「……ま、待って…さっきまでのはウソ…わ…私も傘に入れてもらってもいい?」




 そんなこんなで北川と2人で並んで帰る帰り道。2人で学校から一緒に帰るのはなんだかだで初めてだ。



 歩きながらも北川と2人で相合傘をしているところなんて見られたら噂になりそうだなーとか思ってつい周りを気にしてしまう。



 まあ、ホームルームが終わってから30分以上経ってるのもあって帰宅する生徒はほとんどいないのが救いだ。



 よく見ると北川は私の方に傘を傾けてくれている。ありがたいけど、そのせいで北川自身は濡れてしまっている。



 その心遣いは嬉しいのだけども…



「というか、あんた濡れてるじゃない。もっとコッチに寄りなさいよ」



 私のせいで風邪なんてひかれたら後味が悪すぎる。



「な、なに」



 そう言うとジーと私の顔を見てくる。



「……じゃあ寄るわ」



 何秒か私を見たあとにそう言って近づいて来る北川……



「あ、あのさ…」



「ち…近くない?」



「茜センパイが俺にそうしろって言ったんじゃん」



「そ、そうね…」



 ど、どうしよう……よく考えたら北川がコチラに寄るってことは…私との距離が近づくってことで……



 な、なんか凄く2人の体が密着してる! 気をつけないとお互いの体にぶつかりそうだ。

 


 でも…こうしないと…北川が雨で濡れちゃうし…



 そのまま会話もなくお互いに無言で歩みを進める帰り道。隣を見上げれば横を向いている生意気で私の心を乱してくるムカつく後輩…



 今も私の手と奴の手がたまにぶつかるだけで心臓の音がバクンバクンといってうるさい。

 


 この男と一緒にいると私の心は動揺してばかりだ…こんな奴の言動一つ一つに少しでもドキドキさせられている自分が情けない。



 でも……そんな自分を嫌がってない時点でもう手遅れなのかもしれない。



 きっと、認めたくないけど私はコイツのことがどうしようもないぐらい好きなのだ…

 


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