オムライス
告白の返事をしようとしたら「急いで答えを出さなくていい」と遮られた翌日。
消化不良な気もするけどアレはアレで良かったのかもしれない。
あの日は早く返事をしないとと思って結論を急ぎすぎた気もする。
あの瞬間は好きだと思ったけど、冷静になって考えてみたらアイツのどこが好きなのか言語化できない。
だから…きっと私は北川のことを恋愛的に好きなわけでないのだろう。
というか……昨日の今日だとなんか会うのも気まずいな。
・・・
「うめー」
私が少し気まずいとか思っているのとは裏腹に北川はいつも通りの様子でご飯を食べに来た。
今日の晩御飯はオムライス。昨日なんとなく見たTV番組で紹介されていたのを見て食べたくなってしまった。
放課後にスーパーで食材を買いアイツが帰ってくる前に作り始める。
お互いに学校の近くに住んでいるから帰宅時間を予想しやすくて助かる。
アイツから部活の終わりを知らせるロインが来たら夕食の準備を始める。
まずは玉ねぎ、鶏肉、ウインナーを切ってフライパンで炒める。そのあとケチャップとご飯を入れて混ぜればチキンライスが完成する。
あとは卵を溶きフライパンの中で混ぜたりしたらチキンライスの上に乗っけてオムライスの完成だ。
1人で食べるのならやらない事が多いけど、今日は北川と2人で食べるからチキンライスも茶碗に入れてお皿に型抜きした。
オムライスを食べ終わったあとは2人で野球を見る。
「何してんの!」
今日の相手チームは青森ファイターズで先発はここまで防御率2点台前半の緒方ススム。
去年から我が東京オリオンズの選手はこのピッチャーにやられているし、なるべく先制点は与えたくない。
そんな中で4番の佐藤がホームランを打ってくれて先制した。
だというのに……その裏に2者連続でストレートのファーボールって…
ホントに何してんの!
いや、もう頼むからゲッツーで切り抜けてくれ。
心の中でお祈りを始める私。そして画面の中には3番の橋本選手。ここまで3割打っているバッター。
セカンドゴロ! もしかしてゲッツーかなと思ったけど結果は進塁打。
そのあと4番の佐々川選手に初球の甘く入ったスライダーを拾われて2点タイムリー。
一方でこちらの打線と言えば…
「またゲッツー!!」
3イニング連続のゲッツーって……あー! もどかしい!
しかも毎回ノーアウトのランナーって…
「もー! てかなんでアンタは笑ってんの!?」
さっきからニヤニヤしている北川に文句を言う。
「怒ってる茜センパイも可愛いなって」
「は!」
こんな時に何言ってんだと文句を言ってやろうと思ったけど……
…北川の顔を見たらなんか恥ずかしくなってきた…
うん、野球に集中しよう。
8回に2アウトから3番の横山がヒットで繋いで1打席目にホームランを打った4番の佐藤に打順が回ってきた。
「4番に回ってきたじゃん」
「うん。逆転の2ランホームランとか出たら最高なんだけど」
スコアは2対1。相手の守護神はここまで防御率0点台のロベルト・マルティネス。
9回まで回ったら勝利するのはかなり難しい。だから8回のこのピッチャーから何とか逆転するか最低でも同点まで持ってきたい。
「あ、追い込まれた」
最初にカーブを見逃して、次に外角のストレートを打ち損じてファール。
「あ!」
3球目の変化球が真ん中に変化せずに入ってきた。
そのボールを4番の佐藤がしっかりと振り抜いて打球はレフトスタンドに突き刺さった。
「入ったー!!」
佐藤が逆転ホームランを打ってれた喜びから北川に抱きつく。
「…破壊力やば」
「……」
嬉しさから思わず北川に抱きついてしまった……
上を見ると北川の顔が至近距離にあった。目の前にある整った顔と自分から抱きついてしまった恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
「やっぱり…けっこう大きい」
慌てて北川から離れる。
「…な、なに変なこと言ってんの!?」
「センパイから抱きついてきたんじゃん」
そう言われると反論出来ない…
私が羞恥心に襲われている間もゲームは進み、東京オリオンズの守護神オスナが三者凡退に抑えて試合に勝利した。
この日は劇的な逆転勝利をしたはずなのに喜びよりも恥ずかしいといった感情が頭を支配して離れなかった。




