デート3
「お腹すいた」
北川のこの一言により猫カフェを出て遅めの昼食を取ることになった。
別に猫カフェで食べても良かったんだけど……さっきの子たちに会ったら気まずいから外で食べることにした。
駅に向かうの途中で見つけた回転寿司の大手チェーン店ぐら寿司に入り、タッチパネルで人数と希望の席を入力して指定された席に向かう。
時刻は14時半を過ぎようとしている。時間が遅いこともあって待つこともなくスムーズに席に着くことが出来てよかった。
「あんた水いる?」
私も北川もぐら寿司に入ってそのまま席に座ったからまだ水を持ってきていない。
そもそもこの男が水を飲むのかどうかは知らないけど、私はいつも水を取りにいくからコイツにもいるかどうか確認する。
「…俺が持ってくる」
「え、別に私が持ってくるわよ」
「センパイは座ってて?」
そう言って私に有無を言わさずに行ってしまった。
…まあ、北川が取りに行ってくれるなら別にいいか。
その間に注文しちゃおう。まずはマグロと生だこを頼むのが私の中での鉄板だ。
アイツは何を頼むんだろうか? なんとなくサーモンとかマグロとかかな?
「はい」
戻ってきた北川から水が入ったコップを受け取る。
「ありがとう」
「別に」
私がそう言うと、どうでもよさそうに返事をする北川。だけど、言葉とは裏腹にホントに少しだけど唇が緩み嬉しそうな顔をした。
……それはちょっとあざとくない? 私は可愛いとか思わないから!
「ほら、私は注文したから」
北川にタブレットを渡す。その間に私が注文していたマグロと生だこが届いた。
その後すぐに山盛りのポテトが運ばれてきた。
「一緒に食べようぜ」
「じゃあ、もらうわね」
山盛りポテトのあとに来たのがたくさんの魚介を使った塩ラーメン。
…どうやら私の予想は外れたみたいだ。北川が最初に頼んだのはポテトとラーメン…
さすがにこれを当てるのは難しいと思う…
そのあとも各々が好きなものを注文していく。
「あ、5皿になった」
「ああ、ゲームが始まるんだっけ」
ぐら寿司はお皿を5枚入れるとピックラプンというミニゲームがスタートとする。
実際に私がキャラを操作したりすることは出来ないから完全に運ゲーなんだけど。ただ、勝てば景品が貰えて今は『見た目は大人・頭脳は子ども』のキャッチフレーズで知られている『迷探偵ゴナ男』とのコラボをしている。
「そう、子どもみたいかもしれないけどピックラポン好きなのよね」
「俺のこと?」
「違う…アンタじゃなくてピックラポン」
そうこうしているうちにレースのミニゲームが始まった。
敵キャラとのレースが始まって優勢に勝負を進めていたがゴール目前で落とし穴に落ちて負けてしまった。
「まあ、そんなに上手くいかないわよね」
ちょっとだけウナ男くんが欲しかったんだけどな…
ちなみにウナ男くんは主人公ゴナ男くんの友達で自分のことをうな重だと思ってる変人キャラだ。
いつも人に会うと「おっす! オラ! うな重!」と挨拶をしている元気のいいキャラだ。
「結局当たらなかったわね」
私も北川も食べ終わったが1回もミニゲームに勝つことは出来なかった。
私は8皿と北川に貰った2皿で2回挑戦したけど、あえなく失敗した。
「じゃあ俺も最後の一回」
そう言った北川がお皿を投入口に1枚ずつ入れていく。
5枚入れるとBGMが流れるのと同時にミニゲームがスタート。
今回は金魚すくいでの勝負みたいだ。最初はお互いに水槽を見ているけど、ついに敵キャラが動き出して金魚をすくおうとした。
このまま負けるのかなと思って残念な気持ちになりかけたけど、ここでプレイヤー側のキャラのカットインが入る。
そしてメラメラと燃えた目をしたキャラが横に向かって拳をフルスイング。
拳は横にいた敵キャラの顔面にクリーンヒットする。そのまま徐々にめり込んでいき、最後は敵キャラを空の彼方まで飛ばした。
……なんで! 金魚すくい関係ないじゃん!
画面にはk oと表示されて上にあるガチャガチャからカプセルが落ちてくる。
「…金魚すくい関係なくね?」
うん、本当にその通りだと思う。
「はい、これセンパイにあげる」
「い、いいの?」
「うん、これ茜センパイが好きなキャラでしょう」
よく見ると北川が持っているのは私が好きなウナ男の缶バッジだった。
「ありがとう」
「うん」
・・・
ぐら寿司で昼食を食べ終わったあとは寄り道もせずにそのまま電車に揺られて最寄り駅まで帰ってきた。
今日の北川とのデートは正直なところ楽しかった。
悔しいけれど最近の私はこの男に心を乱されている。今日みたいにアイツの周りに他の女の子がいると嫌な気持ちになる…
き、きっと……それは私が…アイツのことをす…好きだから。
だからちゃんと私も告白してくれたアイツの気持ちに答えよう。
「あ、あのね…っ! この間の告白の…こ…答えなんだけどね…っ」
「あー、別に急いで答えを出さなくていいよ」
それだけ言って奴は自分の家に入って行った。




