デート2
「ここにはよく来るんですか?」
「いえ、初めてです」
せっかく猫ちゃんと戯れていたのに邪魔が入ってしまった。この人が来てから猫もどっかに行っちゃったし…
「猫も可愛いけど君も凄く可愛いよね? もしかして高校生とか?」
これはもしかしなくてもナンパだろうか。しかも、サラッと個人情報を探ってくる。
「ねぇ、俺の連れになんか用でもあんの?」
「い、いえ! 特に無いです!!」
ナンパ男はお手洗いから帰ってきた北川により撃退された。
イケメンのドスの効いた声と表情にビビったのか「彼氏持ちかよ!」と叫びながら男は逃げていった。
「ありがとう…た、助かったわ」
ナンパ男から助けてくれた北川にお礼を言う。
「はぁー」
感謝の言葉を伝えると急にため息を吐いた北川。
た、確かに迷惑をかけたのは悪いと思うけど…別にナンパされたのは私のせいじゃないのに。
「な、何よ…」
「センパイが可愛すぎる」
「な、いきなりなに言ってんの!?」
北川が頭を抱えて変なことを言いだした…
「茜センパイが猫とコラボしてるだけで天国なのに…いつもより表情も柔らかいし、ニャーとか言って猫に話しかけてるし」
「な!」
私が猫に向かってニャーニャー言ってたの見られてたの!!
北川に聞かれないように離れて小声で言ってたのに……恥ずかしすぎる。
穴があったら入りたい。
「センパイの可愛いところはスゲー見たいけど…他の奴らに見られるのは死ぬほどムカつく」
こ、この男は何故こうもストレートに感情表情をしてくるのか……こんな大きい男が不貞腐れてるのを見たからってキュンとか1ミリだって思ってないんだから…
この男に私の感情を乱されてなんて…無いんだから…
「ニャー」
私の前でトチ狂ったことを始めた2年E組北川隼人…
いや、ホントに何してるの??
「俺も頭を撫でてほしいニャー」
それでいいのか男子高校生…
そして私の周りでは「可愛い!」とか「私が餌付けしたい!」など周りの女性客が騒ぎ始めた。
「撫でてくれないの?」
つぶらな瞳でこちらを見つめる北川。
もう一度言うがホントにそれでいいのか男子高校生…
「す、少しだけ…だからね」
決してコイツのつぶらな瞳に負けたわけたじゃない。
恐る恐る手を近づけて撫でる。
「…サラサラ」
うん…もうコイツも満足しただろうし、私も恥ずかしいから手を離してもいいよね。
「もう少し」
そう言って私の手を掴む北川…
「いい加減にしろ!」
つい頭を叩いてしまった…
「…痛い」
でも、さっきのは流石にコイツが調子に乗りすぎだと思う。
「…俺も猫みたいに可愛がってほしい」
「ば、バカなこと言わないで!」
「ニャー」
両手を頭につけて猫のポーズをする北川…
そ、そんな格好見たって…か、可愛いなんて思ってないんだから…っ!
「わ、私は猫見てくるから!」
そう言った私は北川から離れる。そうして猫ちゃんをかまい始めた私の背後で声が聞こえてきた。
「あれ、隼人じゃん?」
「は? 市川と佐々木?」
「なんで疑問系? なんかウケる」
あ、あの子たち見たことある。この前コンビニで一緒にいた子たちだ。
とりあえず知らない人のフリをしてやり過ごすか?
「つーかどうして猫カフェにいんの?」
「そうだよー、私たちからの誘いは断ったのに」
この子たちに誘われてたんだ。
「別にお前たちには関係ないだろ」
とにかく猫と戯れて彼女たちに気付いてないフリをしよう。
おー、よしよし。私の膝の上に乗ってくれた猫ちゃんの頭を撫でる
「ていうか、あんた1人なの?」
つ、ついに聞いてほしくない質問が飛んできた。
人気のある北川と一緒にいることを同じ学校の人にバレたくないけど、私といることを隠されるのもなんかモヤモヤする。
「別に」
「1人なら一緒に遊ぼうよ」
え?
でも、よく考えたら北川が1人なら一緒に遊ぼうとなるのは自然だよね…
別にアイツが私より彼女たちを選ぼうと…
「すいません、コイツ今日は私の連れなんで」
しまった!
つい無意識に行動してしまった…
「あー、この人知ってる。3年のすごい美人な人」
「なーんだ、連れがいる早くそう言えよバカ」
「うるせぇ、もう行くから」
北川に腕を引かれてこの場を離れる。
「ちょ、ちょっと」
「ごめん」
歩くのをやめて謝る北川。
「な、なにが?」
本当になんで謝ってんだろ。
「センパイ…あんまり俺といるの学校の奴らに見られたくなかったでしょ」
「え、私のことを思って…」
「うん」
というか一緒にいるところを見られたくないって字面にすると酷いな。
「別にそんなことはいいわよ。なんか色々とありがとう」
「感謝してる?」
「う、うん」
「猫カフェ来てよかった?」
「うん」
「猫可愛かった?」
「うん」
「俺のこと好き?」
「う、す…好きじゃない」
…今のは危なかった。
流れで「うん」と言ってしまうところだった。
「…おしい」




