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出会いは唐突に


「生田茜さん! 好きです! 付き合って下さい!!」



 私はこの告白されている瞬間が嫌いだ。どうせ断るのだから気まずくてしょうがない。



「ごめんなさい。あなたとは付き合えないわ」



 それに、わざわざよく知りもしない相手を否定しないといけないこの空間が嫌いだ。



「理由を聞いても? こ、これでも俺って女の子に人気なんだぜ」



 確かに彼は全国大会に出場したサッカー部のエースでキャプテン。

 彼の言うとおり、その実績と甘いルックスで女子からも人気だと思われる生徒だ。



「あなたのことはよく知らないので」



「これから知ればいいじゃん」



 それは少し面倒くさいし、人気があるだろう彼と仲良くなったら悪目立ちしそうで嫌だ。それにいかにも陽キャという感じで私とは合わなそうだ。



「結構です」



 私は玉砕して項垂れる彼を尻目に屋上の扉を開けて教室に戻る。



 街中でイチャつくカップルを見つけると羨ましいという気持ちも少し芽生える。

 けれども、苦労してまで恋人が欲しいとは思わない。



 そんなことをしなくても世の中には楽しいコンテンツが沢山ある。

 私の場合は趣味の野球や漫画、小説を見るだけで気がつけば時間が過ぎ去っている。



 それに、誰でもいいから付き合いたいというわけでもない。

 告白されたからって全く知らない人と付き合うのは怖いし、さっきの彼もそうだけど、私を見る視線がいやらしい。



 自分でも言うのもアレだけども…私の容姿に惹かれていただけで、私自身にはたいした興味もないだろう。



 この時は…こんな冷めている私の心を乱してくる男の子が現れるなんて思いもしなかった。








・・・










 混雑する電車を乗り継いで水道橋までやって来た。

 正直人混みは苦手だし、普段はあまり外出しない私がわざわざ都心までやって来たのには当然ながら理由がある。



 それは私が好きな東京オリオンズという野球チームの試合を見に来たからだ。

 


 なんだかんだで東京ドームに来るのも久しぶりでワクワクする。それにしても、相変わらずこの場所は人が多い。



 まずはドーム内に入る前にオリオンズストアで選手のタオルとユニフォームを買う。

 グッズを買ったらチケットをスタッフに渡して入場する。



 最近の東京ドーム内は現金が使えないのだから時代の変化を感じる。 



「失礼します」



 席を見つけた私は目の前に座る人に一言告げて右端から2番目の席に着席する。

 



「ありがとうございます」



 私が通るスペースを作るために荷物を引っ込めたくれた横の人に感謝を伝える。

 


「別に」



 帰ってきた返事はだいぶ素気なかった。

 何となく顔を見たくなって横を見ると相手の男性もこちらを見ていた。



「え!?」



 その顔を見て私はつい驚きの声をあげてしまう。



「どうも」



「ど、どうも?」



 軽い感じに挨拶をされた私は動揺しながらもなんとか返事を返すことに成功する。



 彼が私のことを知っているのかは知らないが、私は彼のことを知っている。



 私が知っているというか…

 ウチの高校で彼を知らないという人はあまりいないだろう。



 なんせ、何故か私の横にいる北川隼人という男はウチの高校で女子生徒からとんでもない人気を誇るアイドルような存在だからだ。



 入学当初は50人以上から告白されたとか、バレンタインの日には持ち帰れないぐらいのチョコを貰ったとかいう噂を聞いたことがある。


 そんな有名人と……まさか野球場で出会う事になるとは。

 それも席が私の隣なんて漫画じゃあるまいし。



 彼も私のことを知っていたみたいで、その後も流れで一緒に野球観戦を楽しむことになった。

 点が入った時にはテンションが上がったてハイタッチをしたり、一緒に応援歌を歌ったりした。



 試合が終了したあと、他の客がだいたい帰ったとろでドームを後にする。その方が人混みに紛れなくても済むから楽なのだ。



 今日は東京オリオンズが試合に勝って今の私はテンションが上がっているのが自分でも分かる。



「今日は勝てて良かったわね」



 高揚した気分のまま彼に話しかける。



「ね」



「北川君も東京オリオンズのファンなの?」



「そう」



 一緒にいて気がついたことがある…どうやら我が校の王子様は敬語が使えないらしい。



 確かバスケ部じゃなかったっけ?

 ウチのバスケ部は強かったはずだけど、上下関係とかあんまり厳しく無いのかな?



 彼とは電車も同じだったから今日の試合の話しなんかをしながら帰っていたのだけど…



 最後は2人とも同じ駅で降りることになった…



「もしかして…北川君も一人暮らし?」



「そうだよ。センパイも?」



「うん」



 同じ高校に通っているんだから一人暮らしをしていたら最寄り駅が被ってもおかしくはない。



 そうして歩くこと10分。何故か同じマンションに到着した。




 …さらに同じエレベーターに乗り込み、同じ回で降りる。

 






「……お隣さんだったの!?」

 



「うん」



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