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2章 第55話 女子トーク

「マコが手を出して来ない?」


「そ、そうなの。普通はどうなのかなって」


 7月の半ば頃、真夏の日差しから逃れる為ファミレスを訪れた鏡花(きょうか)小春(こはる)、そして友香(ともか)水樹(みずき)の4人は日曜日のお昼に女子会をしていた。

 そんな中で鏡花は、3人の恋愛強者達に相談を持ち掛けていた。自分では分からない、男女の関係と進展について。

 具体的に言えば、肉体的な接触に関して。カナちゃんと麻衣(まい)には断られてしまった相談事ゆえ、この3人に聞くしかなかった。


「なんや葉山、そこは案外紳士的なんか?」


「単に言い出せないだけじゃ?」


 GWに(まこと)の暴走を見ている友香は、とっくに手を出していると思っていた。水樹の方は、その気はあれども実行に移す勇気がないと見た。


「そうねぇ~マコだから、両方有りそうね」


「じゃあ真君は気を遣っても居るし、言い出す勇気もないって事?」


「そゆコト」


「葉山やったら変な拘り持ってそうやもんな」


 うーん、難しいなぁ男の子って。前に竹原さん達大人組に聞いたアレコレも含めて、中々に難問だなぁ。

 したいならしたいで、それで良いんじゃないのかな。実際キスまではしているし、それももう、数を数えるのが馬鹿らしい程度にはしている。


 案外そう言った部分にはストレートな思考を持つ鏡花には、複雑な男心が分からなかった。

 好きな女の子だからこそ、紳士的でありたいと思いながらも、その気はあって。でも下手な誘い方は格好悪いから言い出せない。そんな男の葛藤が。




「鏡花はどうしたいの?」


「わ、私? えと、興味はある、かな。ちょっと怖いけど……」


 水樹の問い掛けに返した鏡花の答えは、至って平凡な回答であった。如何にも鏡花らしいと言えばらしい返答だ。恋する乙女の、在り来たりな意見。

 あくまで鏡花のイメージに過ぎないが、快楽を目的にすると言うより、愛情を確かめ合う行為。それが恋人同士で行う性交渉への鏡花が持つ価値観だ。

 ちょっとした触れ合いやキス以上の幸福がそこにあるなら、是非とも知りたいと思っている。


「そんなら葉山が男見せなアカンやろな」


「付き合って1ヶ月ぐらいよね? 悪くはないんじゃない」


「マコはその辺スマートじゃないからな~」


 三者三様の回答。ただし3人共がやってしまえば良いとの判断。それならば致しても良いのかと、鏡花も思うわけだが同時に分からない事もある。


「普通って、どれぐらいでそうなるのかな?」


「うーん、普通か。難しい事聞くねキョウ」


「どやろな? 早かったら1週間ぐらいか?」


「あんまり早いのも嫌よね。当日とか」


 どうやら様々な形があるらしいのは鏡花にも伝わったが、結局正解は分からないままだ。1ヶ月程度では早いのか遅いのか分からない。

 どうしても基本に合わせたいわけではないけれど、参考として知っておきたかった。


「あんまり待たせると、嫌われるって聞いたから……どうなのかなって」


 一番気になる点はそこだった。それが理由で真君に嫌われるのはちょっと嫌だ。けどある程度の恐怖心もあるのは間違いない。

 場合によっては子供が出来てしまう。流石に今の内から子供を作る気はない。当然最終的にはそう言う事も考えるけれど、今はまだそんな段階ではない。成人すらしていないのだから。


「あ~それな。そんなんで別れるヤツなんて、最悪な男や気にしんとき」


「そうね。そんな男はお断り」


 辛辣な意見が友香と水樹から飛び出す。しかしそれは鏡花とて同感であった。最初から体目当てでした、なんて男性は鏡花も好きになれない。以前遭遇したナンパ男たちが良い例だろう。あんな相手とは手すら繋ぎたくない。


 ただそれと真を待たせて居ないか、と言う点については別の問題。こちらから何か、オッケーと言う態度を見せたりした方が良いのか、それが本題なのだから。


「結局問題はマコがどうかなんでしょ? 他の男なんて参考にならないんじゃない?」


「そ、そうなのかな?」


「確かにそやな。葉山やしな」


 世間一般と比べて自分達はどうなのか知りたかったのだけれど、あんまり意味がないらしい。それからも色々と話してみたけれど、結局は人それぞれであると言う結論に至った。


 どうするのが正解かなんて、分かり易い答えなんてない。一般的にどうと言われていても、全く違う在り方のカップルや夫婦が世間には居る。

 定石がないとまでは言わないまでも、結局は付き合う当事者の2人がどうかが全てだ。

 


「気になるのなら、鏡花から行けば?」


「えっ、私から?」


 それは、以前に竹原さん達に教わった内容と被ってくる。真君があまりにもハッキリしない様ならモノにしろと、そう言った教えだった。

 もう付き合っているのだから関係ないかと思っていたけれど、この場合でも使えるのかも知れない。やる事は同じなのだから。


「へ、変じゃないのかな? 彼女の方からって」


「そんな事あらへんよ? そう言う時もあるし」


「そうね。何回かあるわよ」


「キョウがその気なんだったら、良いんじゃない?」


 あっさりと肯定されてしまい、鏡花の疑問は早期に決着してしまった。大人組にも似たような事を言われていただけに、それも良いかも知れないと鏡花は考え始めていた。

 流石に付き合う段階まで進んでおいて、今更そう言うのはちょっと、などと考えない。


「そ、それで、その。ど、どうなのかな? 実際に」


「何がや? やった感想って事か?」


 そこから先は、中々に生々しい会話が続く。鏡花は羞恥心と好奇心の狭間で揺れる事になった。

 なお隣の席で勉強をしていた男子中学生達は、美人で年上の女性達が語る会話に気を取られてしまい、全く捗らなかったとか。

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