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5章 第239話 真の誕生日とお酒

 ひと時の楽しい時間から数日後、1月20日は(まこと)の誕生日だ。これで真も記念すべき20歳を迎えた。

 せっかくの記念日だし何をして欲しいかと聞いてみたら、私のご飯が食べたいと言われた。

 そんなの今更特別な事じゃないのに、それが真の望みらしい。その方が思い出になると言っているけど、本当にそんな事で良いのだろうか。

 一応プレゼントには、真が使うフットサルのシューズを買ってあげた。でも何故かそっちよりも、料理の方が楽しみなんだって。

 私の料理より1万円のシューズの方が価値があると思うんだけどね。もちろんそんな風に思ってくれるのは嬉しいのだけど。


「はい、真の好きな物盛り合わせだよ!」


「おお! どれも美味そうだ」


「熱いから気をつけてね」


 真はお金持ちの家庭に生まれたけど、食べ物の好みは結構庶民的だ。お金持ちとは言っても、先祖代々続く名家とかでは無いからかな。

 その視点で見れば美桜(みお)ちゃんの方がお金持ちっぽい。流石は京都のお嬢様学校出身だけある。

 茶道も習っているので、彼女は本格的にお茶も淹れられる。一方私の料理は、そんな雅さの欠片もない超庶民的家庭料理のオンパレード。

 おばあちゃん仕込みの田舎料理である。それでも真は喜んで食べてくれるから作り甲斐がある。やっぱり食べる人が喜ぶかどうかは大きいなぁ。

 今では見慣れたいつもの光景だけど、美味しそうに全部食べてくれる人が居るのは嬉しい。それは何度作ろうとも変わる事がない。


「ちょっと作り過ぎたかな?」


「大丈夫だ、全部いける」


「男の子だねぇ」


 良く食べる男性の食べっぷりは、見ていて清々しい。真は体も大きいから、大皿に一杯の料理ぐらい簡単に平らげてしまう。

 お誕生日記念と思って張り切って作ったから量が普段より多い。それでも平気と言うのだから、男の子は凄いよね。

 やっぱり体格が良いと必要なエネルギーも多いのかな。真は背が高くて体もガッシリしている。でも太っているのでは無く、程よい細さがある。

 これだけ食べても体型が変わらないのは羨ましい。私がこんなに食べたら、しっかり脂肪になってしまいそう。そもそもこんなには食べられないけれど。


「それはそうと鏡花(きょうか)、ホントにやるのか?」


「そうだよ? せっかく2人共20歳になったんだから」


「いやでも……大丈夫か?」


「大丈夫だよ、問題なし!」


 真の誕生日を祝う意味も込めて、今夜は2人でお酒を飲む。恋人同士で宅飲みとか、ちょっと大人っぽいよね。

 居酒屋さんで、と言うのもトライしてみたいけどそれはまた今度。何となく陽のオーラを感じて怖い訳じゃないの。

 ただその、どれぐらい飲むと酔っ払うのかを知っておきたいだけ。決して陽キャが集まる空間を恐れたのではないよ。

 そんな理由で居酒屋に入れない訳がない、私は大人になったので。兎も角、本日の挑戦は先ず普通の缶チューハイから。

 フィーリングで美味しそうだなと思った物を2人で買って来た。カシスオレンジとか、イメージ的に美味しそうに見える。


「でもほら、前に日本酒で滅茶苦茶酔ってたし……」


「あ、あれは強いお酒だったからだよ! 今度は大丈夫!」


「何故こんな時だけ自信満々なんだ……」


 実は私が過去に犯した失敗へのリベンジでもある。かつて水だと思って一気にグイッと日本酒を飲んでしまった。

 あんまり記憶は残っていないけど、朝起きたら裸で真に抱き着いていた。まあまあな黒歴史であるからして、今こそあの失態を帳消しにしたい。

 あの時はまだ未成年だったから、アルコールにやられてしまっただけ。20歳となった今ならば、少しぐらいは平気な筈。

 大人っぽくなったと最近良く言って貰えるから、体もきっと大人になっているに違いない。

 お酒を嗜める大人の女性になる為に、その階段を登らせて貰いますよ。…………何故に今このタイミングで、篠原(しのはら)さんの顔が頭を過ったのだろうか。あんな風にはならないよ私は。


「ほら、ご飯も食べたし飲んでみようよ」


「ちょっとだけにしような?」


「分かってる! 20歳の誕生日おめでとう!」


 実はちょっとお酒に興味があった。篠原さんがあんなにも毎日飲んでいるから、そんなに美味しいのかなって。

 試しに買ってみた缶チューハイを、真と2人で1つずつ開ける。真はコーラサワーで、私はカシスオレンジを先ずは試してみる。

 …………ちょっと独特だけど、ジュースとそんなに変わらないかも。ビールはまだ分からないけど、これなら私でも飲めるかも。

 真と交換して飲んでみると、こちらも中々悪くない。ほぼジュースだよね、これなら全然大丈夫だよ。

 やっぱり大人になったから、これぐらいは平気になったんだ。ちょっとポカポカして来たのは、アルコールの効果だろうか。


「案外悪くないな」


「おいしいよね〜じゅーすみたい」


「……鏡花? 大丈夫か?」


「ぜんぜんだいじょうぶ〜〜えへへ」


 そこから先の記憶は残っていない。気がつけば朝になっていた。そしてまたしても私は、裸で真に抱き着いて寝ていた。

 おかしい、こんな筈では無かった。そんなに沢山飲んでいないのに。もしかして私って、お酒に弱いのかな?

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