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5章 第199話 交際3年目の海水浴

 私達が大学生になってから、時間の流れがより早くなった気がする。バイトと講義に追われながら、(まこと)と過ごす日々を送っていたらもう夏になっていた。

 相変わらず小心者な私は、大学生になったから友達沢山! みたいな生活とは無縁である。


 もちろん全く出来ていない事はないけど。秋山(あきやま)さんもといアキちゃんを筆頭に、何人かは大学にも友人が出来た。

 その方が可愛いからとアキちゃん呼びを要求して来た彼以外は、全員普通の女の子達だけれど。

 それは良かったのだけど、ただ少しだけ困った問題も発生している。それは男の子を紹介してほしいと言うお願いだ。


「あ〜鏡花(きょうか)も言われるわよね」


(あずさ)先輩もですか? あれってどうすれば良いんでしょう?」


「普通に全員彼女持ちだって言えば良いんじゃない?」


 真と霧島(きりしま)君に、私と梓先輩と言う今や定番のダブルデートスタイル。そんな4人で夏休みに海に来た訳だけど、青い海をそっちのけで相談モードだ。

 水着姿になったまま、海の家で悩みを聞いて貰っている。私は別に、沢山男の子の友人が居る訳では無い。

 たまたま偶然、真と言う恋人が出来ただけでしかない。決して恋愛強者ではないのだけれど、冗談だと思われてしまっている。

 本当に男の子の友達なんて少ないし、梓先輩の言う様に全員彼女持ちである。紹介とか合コンとか、出来る筈がないのに。

 完全フリーの男の子なんて友達に居ない。アキちゃんはそもそも、女性が恋愛対象じゃないし。


「でもそれ、信じて貰えなくて……」


「あるあるよね〜。秘密のキープ君なんて居ないのに」


「私にそんな器用な事出来ませんよ」


 何故か条件の良い男性を知っていると思われている。居ませんそんな人なんて。どこをどう見たら、そんな歴戦の恋愛猛者に見えるんだろうか。

 超絶恋愛初心者でしかないし、私に興味を持つ男性なんて…………ごく稀に居るぐらいだ。

 そんなホイホイ紹介出来る程、周りには居ないんだけどな。どうしてこう、恋人が居るイコール紹介出来るになるのだろう。

 一体誰が広めた風潮なんだろうか。わりと結構な迷惑である。せめて梓先輩ぐらい美人でスタイルも良ければ……良ければ……


「先輩、また大きくなりました?」


「あ〜まぁね。ちょっとだけよ?」


「良いなぁ……」


「鏡花だって成長してるじゃないの」


 それはそうなんだけど、未だに微妙なラインなのは変わらないのである。最近になって漸く平均的なサイズに近付いて来たけど。

 微妙ながらも育ちましたけど、梓先輩やカナちゃんみたいに大きな胸ではない。シンプルに羨ましいと言うか、憧れは今もある。

 色々乏しい貧弱ボディから若干貧弱ボディぐらいには進歩したけど、恵まれた持つ者には程遠い。

 20代まで成長するらしいけど、本当だろうか。せめて平均値までは行きたい。平凡な人間なので、平均ぐらいは望ませて欲しい。


「悪い梓、遅くなった」


「鏡花もごめんな、ちょっと並んでてさ」


「お帰り真、霧島君」


「全員揃ったし頼もっか」


 2回に分けて注文すると店員さんに迷惑かと思って、待って貰っていたオーダーを開始する。

 夏休みシーズンの海では色々な所が混雑する。先に私達が席を取っておいて本当に良かった。

 お昼時で人が山のように集まって来ている。こんな中で今から席を探していたのでは、どうにもならないだろうし。

 これだけ暑い中だと、流石に日陰で食べたい。それでも暑いのは暑いけれど、砂浜で食べるよりは良い。


「佐々木さ、じゃなかった。宮沢(みやざわ)さんだったよな」


「呼び辛いなら別に良いよ?」


「ごめん、もう少しで慣れるから」


 この夏になって、両親の離婚が正式に成立したので今は苗字が変わっている。お母さんの姓になり今は宮沢鏡花が私の名前。

 これと言って苗字に拘りがあったりはしないから、どっちで呼ばれてもそれ程気にはならない。

 大学等での手続きが面倒だったぐらいしか、これと言った弊害はない。友人の大半は名前で呼ぶし、苗字呼びだったのは男の子達ぐらいだ。

 そしてその男の子達は、殆ど高校時代を一緒に過ごして来た人達なので佐々木呼びでも違和感はない。


「私は鏡花でも気にしないんだけど……」


「駄目だ」


「この通り、真がね?」


「お前さぁ……相変わらず独占欲すげぇのな」


 ちょっと嬉しい気持ちもあるし、可愛いなと思う部分でもある。真は結構、独占欲が強いタイプらしい。

 やる事成す事何もかもを、ってわけじゃないけれど。ただどうしても譲れないラインみたいなのがあるらしい。

 男性が私を名前で呼ぶのはNGらしく、こうして絶対に拒否する。前に私が、名前で呼ぶ男性は真だけと言ったからだろうか。


「ふふ、葉山君て本当に鏡花が大好きだよね」


「当然ですよ」


「こんな所で言わなくて良いから!?」


 そんな真顔で主張しないで!? 滅茶苦茶周りに人が居るから! まあまあ恥ずかしいから! 突然の羞恥プレイは辞めて下さい!

 周りが騒がしいから良かったものの、もう少し静かだったら周りに丸聞こえだよ。いつも真っ直ぐストレートに好意を示してくれるのは嬉しい。

 ただ、私の羞恥心も考慮に入れて下さると助かります。嬉しいけどね、嬉しいんだけどね!

交際開始前だと、あんまり名前で呼んで欲しくないな。ぐらいの感覚でした。

鏡花ちゃんの真呼び開始後からは、他の男には誰にも呼ばせたくない。になりました。


誤字訂正しました。

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