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5章 第198話 (変わった人に)好かれる平凡な女子

 いざ大学生になってみれば、結構色々と生活は変わった。高校とは授業の受け方も違うし、大学内の空気感も高校とは違う。

 他府県からの入学者がグッと増えているので、そう言う部分にも違いがある。浮ついた人も幾らか居るし、何とも不思議な感じだ。

 これが大学と言う環境なのかと、困惑する部分もあったりして。そんな中でも一番の変化は、鏡花(きょうか)にあった。


 先ずその、雰囲気が大人びて来たと言うか。服装も関係あるんだろうけど、純粋に成長もしているのだと思う。

 ストレートに表現するなら、綺麗になった。輪郭や体型の微妙な変化が、そう感じさせるのだろうか。

 より大人の女性に近付いた様に思う。それもあって最近は、結構意識してしまうタイミングもある。


「ごめんね、(まこと)。待たせたよね?」


「いや、大丈夫だよ。今来た所」


 大学の構内で待ち合わせ場所に現れた鏡花は、今日も綺麗だった。朝の講義開始が違ったので、今朝は一緒に来て居なかった。

 だから本日の鏡花を見るのは今が始めてだ。ただ薄い青のワンピースを着ているだけなのに、やはり大人っぽさを感じる。

 服のデザインも手伝って、穏やかな大人の女性に見える。そんな鏡花の隣には、見知らぬ女の子が居た。新しく大学で出来た友人だろうか。


「なぁ鏡花、隣の彼女は誰さん?」


「あっ、あ〜。その、えっと」


「初めましてぇ、鏡花ちゃんの彼氏さん」


「あ、ああ。よろしく」


 若干あざとい感じもしなくはないが、結構可愛いのではないだろうか。身長は鏡花よりちょっと高いから、160cmぐらいだろう。

 メイクもファッションも派手めな感じで、小春(こはる)寄りの何かを感じさせる。何だろうな、鏡花ってこう言うタイプに好かれがちなんだろうか。

 思えば高校時代でも、わりと我が強い派手な友人が多めだった。結城(ゆうき)さんと小日向(こひなた)さんは違ったけど、後はそう言うタイプばかりだ。

 京都の稲森(いなもり)って子もキャラが濃い。卒業旅行で京都に行ったついでにと、ちょっとだけ会ったのだけど相変わらずだった。

 何故か毎回ダメ出しをされるから、俺はちょっと苦手だ。あの子はどうしても小春2号にしか見えない。この子が小春3号でない事を祈るばかりだ。


「うんうん、鏡花ちゃんは良い趣味してるね」


「だ、だめだからね! 真は駄目!」


「分かってるよ〜僕は人の物には手を出さないからね」


「……ん? 僕?」


 あれ今この子、僕って言ったのか? いや自分の事を僕って言うタイプも中には居るらしいし。

 俺の周りには居なかったけど、大学と言う環境にもなればそんな子が居ても不思議じゃない。

 地域によっては、女性がオレを使う場所もあるらしいし。だから一人称が何であろうと、イコール性別が決まる訳じゃない。

 じゃないんだけど、まさか男なのか? こんなどう見ても派手めな美人が、男だったら詐欺だろう。


「な、なぁ鏡花、その人って」


「あの、その、男の人です……」


「名乗って無かったね、僕は秋山大樹(あきやまだいき)だよ」


「嘘だろ……」


 どこからどう見ても、女の子にしか見えない。線の細い体つき、綺麗な二重瞼にパッチリした目。

 ややメイクは派手めではあっても、元から顔の作りが美しいのは間違いない。声も中性的で男っぽさは何処にも……あぁ、確かに喉仏は出てるな。

 でもチョーカーなんかで隠されたら、絶対に判別は出来ないだろう。と言うか、じゃあコイツは鏡花の男友達と言う事になるのでは?

 それなら、要警戒対象なんじゃないだろうか。何が目的で鏡花に近づいたのか、問い正す方が良いのでは?


「あ、あのね! 秋山さんはね、その」


「恋愛対象は男性だからね。鏡花ちゃんをそう言う目では見てないから安心して」


「お、おう? なら良い、のか?」


 それなら別に側に居ても問題ない、と考えても良いのだろうか。むしろ男である事がメリットになるのだろうか。

 鏡花に寄り付く男達から守ってくれるならば、この人は丁度良い存在なのかも知れない。

 だったら俺の抱えていた問題は解決……解決したのかこれ? ちょっと突然の情報量に理解が追い付かない。鏡花の側に置いていい、と言う事でアンサーなのだろうか。


「はぁ。こんなイケメンが彼女持ちなんて、世の中世知辛いよね」


「あ、ありがとう?」


「絶対に真は駄目だからね!」


 そう言って俺の腕を抱え込む鏡花から、柔らかい感触が伝わる。最近ちょっと大きくなった様な気がするその感触も、今はちょっと喜んでいる状況ではない。

 要するにこの秋山……さんは男性が好きな女性的な男性と言う事になるのか。まあ、そう言う人も中には居ると知っては居る。

 特に嫌悪感も持ち合わせて居ないので、そこは別に構わないんだけど。ただこの状況はちょっと意味が分からないです。


「だから大丈夫だってば〜狙わないから」


「本当だよね? 信じるからね?」


「僕はそこで嘘をつく様な卑怯な人じゃないよ」


 何だろうか、この気持ちをどう表現したら良いんだろうか。今までに無かった展開なので、どうにも対応に困ると言うか。

 どうすれば良いのかは分からないんだけど、とりあえずこれだけは言いたい。鏡花って、たまに変わった人と仲良くなるよな。引き寄せる電波とか、発信されてないよな?

言う程たまにか?

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