4章 第196話 卒業旅行 京都編
「おぉ〜これが金閣寺、ホントに金色だよ真!」
「いやすげぇな。テレビで観たまんまだ」
卒業式が終わってから、受験の結果も判明したので皆で卒業旅行に京都までやって来た。明日は友香ちゃんの出身地である大阪にも行く。
前もってお得なプランを小春ちゃんが見つけてくれていたので助かった。お陰様でちょっとお得にぶらり関西旅行に来れました。
中学の修学旅行は広島だったし、美羽高校の修学旅行は沖縄だった。だから実は人生初の関西入り。
修学旅行の定番である京都や大阪に来た事が無かったので、結構楽しみにしていたんだよね。
「アンタも合格してて良かったわねマコ」
「これで落ちとったら、まあまあ格好悪かったもんな」
「受かってたから良いんだよ。受かってたから」
そう、あれだけ心配していた真も無事に美羽大学に合格していた。これで私達は4月から同じ大学に通う事が出来る。
私達の中で不合格だった人は誰も居ないので、安心して旅行を満喫出来る。これから皆とはバラバラになるけど、だからこそこの瞬間が大切だった。
旅行から帰ったら、他府県に行くメンバーが引っ越しを始める。結局美羽市に残るのは、私と真に麻衣と村田君だけ。
他のメンバーはそれぞれ別の場所に行く。カナちゃんと高梨君は隣の県に、小春ちゃんと水樹ちゃんは東京へ。
そして友香ちゃんは大阪と見事に分かれている。こうして皆が揃っていられるのは、これが最後の機会となる。
「カナちゃんは京都、来たことあるんだよね?」
「1回来ただけだよ。それに目的は吹奏楽部の大会だったし」
「観てみたかったけどね、佳奈の活躍」
「そんな大層じゃないよ」
高梨君とカナちゃんも、相変わらず仲良くやれているみたいだ。最初こそ驚いたけど、いざ付き合い始めたらお似合いの2人だった。
冷静な人同士と言うか、落ち着いた2人だから安心して見ていられる。何だかんだと騒がしい村田君と麻衣とは対照的だ。
あの二人は何と言うか、感覚で生きている。たまに良く分からない勝負とかしているけど、楽しそうで何よりです。
美少女3人組も、それぞれ恋人とは上手く行っているらしい。皆が充実した日々を送れているみたいで、4月からはバラバラでも安心だ。
それにSNSだってあるのだから、何も接点がなくなる訳じゃない。連絡ぐらい、幾らでも取り合える。
「ほな、そろそろ次行こか。清水寺でエエか?」
「私は構わないわよ」
「俺達もそれで良いよな、麻衣?」
「うん、良いよ〜」
総勢9人の私達は、ちょっとした団体客だ。迷惑にならない様に気をつけながら、集団であちこち移動する。
清水寺と言えば、超有名な観光スポットだ。きっと沢山の人が居るだろうし、迷子にならない様に気を付けないと。
運動神経が貧弱な私が、人波に呑まれたら大変だ。真の側から離れない様にしよう。
流石は観光地と言うか、私達の地元とは大違いだ。バスも電車も沢山の乗客が居る。こんなパンパンになったバスなんて、先ず美羽市では経験しない。
「鏡花、大丈夫か?」
「う、うん。凄い人だね」
「ちょっと温かくなったからな。旅行に行く人は多いんだろうさ」
実際に私達が旅行客なわけで、私達みたいな年齢の人達も結構見掛ける。彼ら彼女らも卒業旅行なのかな。
歳が近いからって、卒業旅行とは限らないし地元の学生かも知れないけど。ただ何となく、旅行者っぽい雰囲気はある。
そして気付く、私達に向かう視線の多さに。年齢が近い人が多いと言う事は、当然私達は視線を集める。目立つ容姿の人達が居るから。
小春ちゃん達と、真達男子だ。美人美女にタイプの違うイケメン達が揃っている。それがバスなんて狭い空間に居れば、まあ注目を集めるわけで。
当の本人達は、散々浴びた視線だから慣れたもので。余裕でスルーしているみたいだけど。
「なんだ? どうした鏡花?」
「ううん、何でもないよ」
「そうか? なら良いけど」
ちょっとだけ気になったから、いつもより真に近い位置に移動する。この人には恋人が居ますよと、ほんの少しだけ主張しておく。
そんな大したアピールではないけど、分かり易い様に腕を組んで真に近付いた。これから先、こんな事は頻繁にあるんだろうなと思うとちょっと複雑だ。
真はモテる人だから、今みたいな視線が来る事は少なくないんだろうな。大胆な行動には出れないけど、こうして自己主張はしておきたい。
今までとこれからは、また違った環境に変わるのだから。恋人が居ると誰もが知っていた高校の時とは違う。
「着いたみたいだ、行こうか」
「うん! 楽しみだね」
「清水の舞台か〜どんな景色なんだろうな」
ちょっとしたトラブル未満の何かはあったけれど、楽しい卒業旅行は続いている。せっかくの時間を無駄にはしたくない。
皆とバスを降りて、清水寺へと向かう。沢山の観光客に混じりながら、私達は歩みを進める。
こうして皆とは、今までも沢山の想い出を作って来た。最初はGWから始まり、海に行ったりもした。どれを取っても楽しい記憶ばかりだ。
今回の卒業旅行が最後にはなってしまうけれど、また大人になってからも何か出来たら良いなと思う。
私達の人生は、ここで終わるんじゃない。ここから歩み続けた先で、また幾らでも道は繋げられるのだから。
なおバス内では冷静なフリを装っていますが、真君はめっちゃドキドキしてます