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4章 第193話 卒業前のモブ友トーク

 もう何度目か分からない利用回数となっているいつものファミレス。小学校の頃からモブ友3人組で集まっていたこの集まりも、もうすぐ終わりを迎える。

 大学からはカナちゃんと麻衣(まい)とは、進む道が別れてしまったから。だからこの3人でこうしているのも、今となっては貴重だった。


「カナちゃんと麻衣とは、春から別々だね」


「近くの大学が良いって、鏡花ちゃんらしいよねホント」


「キョウちゃん体力無いしね〜」


 ある意味で、私達らしい進路をそれぞれ選んでいた。楽器と音楽が昔から好きなカナちゃんは、となりの県にある音楽大学へと進学。

 運動大好きな麻衣は、村田(むらた)君と2人で同じ体育大学へと進学して行く。高梨(たかなし)君とカナちゃんは別々の大学だけど、同じく隣の県に行くので同棲するらしい。

 それぞれ上手く行っているみたいで、良かったと思う。高校生になった時は、昔から変わらぬモブライフを送っていた私達。

 それが今や全員彼氏と同じ大学に行ったり同棲をするとか、随分とまあ人生に変化が訪れたもので。今やあの頃の私達は、遠い過去に置き去りだ。


「キョウちゃん達はさ〜同棲するの?」


「うーん……ちょっとまだ出来ないかな」


「麻衣ちゃん達もするんだっけ?」


「2年生からするよ〜」


 信じられるだろうか、これがモブ達の会話であると。まさか私達がこんな会話を卒業間際にしているなんて、2年前の私なら信じないだろう。

 未来から来た私だよ、なんて言っている異常者だと思うに違いない。そんな私達の現在のテーマは、同棲をするかしないかである。

 そりゃあ、いずれはしたいと思う。しかしこう、毎日(まこと)と居る日々に耐えられるだろうか。私の心臓が。

 未だに恥ずかしいと言うのに、毎日ずっと真が同じ家に居る。それでは日に何度か心臓が爆発すると思う。


「……2人は毎日彼氏が家に居るって、照れ臭くないの?」


「えっと、鏡花ちゃん?」


「わ〜また中学生みたいな事言ってる〜」


 失礼な! 誰が中学生か! これでも朝起きた時、目の前に真の寝顔があってもベッドから転げ落ちない様にはなったんだからね!

 はい……そうですよ。中学生です私の恋愛観は。仕方ないじゃない恥ずかしいんだから。逆にどうして平気なのか教えて欲しい。

 無理だよ照れないなんて。恥ずかしいよ、毎日一緒に暮らすのは。何かしらの失敗とか、みっともない姿とか見せちゃうかも知れないし。


「普通にしてれば良いんだよ?」


「変な事気にするからだよ〜」


「えぇ……私がおかしいの?」


 うわパジャマ姿ダサいな、とか思われたくないし。あの日で下着が適当になってる所とか、絶対に見られたくない。

 寝顔を見られるのは、お互い様なので良しとして。常時綺麗な姿で居るのは不可能だし、ついうっかりで見苦しい所を見せる時もあると思うし。

 好きな人が一緒に暮らす照れ臭さと、やらかしたらどうしようと言う恥ずかしさ。この感覚はそこまでおかしい事じゃないと思うんだけどな。


「葉山君、細かい事気にしてないよきっと」


「葉山君はキョウちゃん大好きだもんね〜」


「そうかなぁ? ガッカリされないかな?」


「「今更?」」


 なぜそこでハモるんだい君達は。それじゃあまるで、既に残念な姿を全て見せたかの様な……見せたかの様な…………見せてるかも……。

 大体は見せた後かも知れない。見られて居ないとすれば、トイレの最中ぐらいしか残ってないかも知れない。

 そしてそんな姿をいちいち見に来る人は、変態さんぐらいだ。当然ながら真は変態さんじゃないので、わざわざトイレを見に来たりしない。

 案外もう、気にするポイントは無いかも知れない。後は私が、毎日真の居る空間に慣れるだけなのではないでしょうか。


「ん〜〜やっぱり恥ずかしいよ!」


「そう言う所は昔から変わらないねぇ」


「根っ子は進歩してないね〜」


 だって仕方ないじゃない恥ずかしいんだもの。きょうか。なんて言っていても何も変わらないんだけどね。

 高校生になって成長出来た部分と、変わらない部分がある。特に小心者と恥ずかしがり屋、根が陰キャと言った部分は相変わらずである。

 人付き合いはだいぶ出来る様になったし、友達も増えたけど。それでも成長が遅い点はどうしてもある。

 努力はしているつもりだし、超絶陰キャから超絶ぐらいは取れたつもりだ。だけど、恥ずかしいと言う気持ちまでは消えてくれない。


「鏡花ちゃんらしいけど、葉山君を待たせるのも可哀想だよ?」


「え、待たせてるの私?」


「絶対同棲したいハズだよ〜」


「うっ……が、頑張る」


 待たせてるつもりは無いんだけどな。一緒に暮らす生活自体は望んでいるし、結婚すれば絶対にそうなるわけで。

 ただこう、恥ずかしくて二の足を踏んでしまうだけで。一緒に居たい気持ちと、照れ臭くて躊躇う気持ち。

 それがどちらも混在しているから、積極的にはなれないと言うか。今更そんな事をって話なんだろうけど、気になるのは気になるんだからどうにもならない。

 大学生活が始まったら、なるべく早く慣れる様にはしたいとは思っている。バイト帰りに、またちょくちょくお邪魔するつもりだし。


「成人式で再会するのが楽しみだね」


「20歳のキョウちゃんか〜どうなってるかな〜?」


「ちょ、ちょっとは大人になってるよきっと!」


 それはもう立派な大人に……なれるんだろうか私って。あと2年ぐらいで大人の女性になれている、と思いたいなぁ。

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