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4章 第176話 癒し×癒しの贅沢

 夏休みも後少し、そんなタイミングだからこそやって来ました『DOG CAFE MOCHA』に。

 (まこと)の成績アップ記念と、サクラちゃんお帰り記念を同時に行おうと言う贅沢な発想。自分の素晴らしいアイデアに100点満点をつけたい。

 この世で最も癒してくれる男子と、同じく癒してくれるワンコのダブル摂取である。こんなにも贅沢なのに、固定資産税は取られないと言う素晴らしさ。


「サクラちゃん会いたかったよ〜!!」


「相変わらずだな、この子」


 サクラちゃんは真しか見ていないけど、それはそれで構わないのだ。好きなだけ撫でておくから。

 あぁ〜フワフワの体毛だぁ〜。毛量が凄く多くて、体はほっそりしているから超モフモフだ。

 パピヨンの良い所の一つだと私は思う。この小さくてもフワッとした感触は、毛量の多い小型犬でのみ楽しめるのだから。


「そう言えば、ここって何の工事してたんだ?」


「空調設備って書いてあったよ。重要だからね、動物を扱う以上は」


「犬に扇風機で我慢しろなんて、言えないもんなぁ」


 犬は人間より体温が高くて、人間より体格が小さい。一部の大型犬はそうじゃないけど、大半は人より小さい。

 そして人間でも、この時期にエアコン無しは厳しい。それなのに更に小さな小型犬なんて、もっと辛いに決まっている。

 エアコンを使わない高齢者の家庭で、飼い犬が熱中症になんて悲しい事故もたまに聞く。

 犬や猫の場合、熱中症の死亡率は50%もあるらしい。自分で飼い始めた時を考えて、色々調べたから知っている。ペットの為のエアコンは、滅茶苦茶大事なんだよ。


「サマーカットだけじゃ無理だよ」


「そうだよなぁ、これだけ暑いし」


「それに、パピヨンはこのフワフワのままが良いもの!」


 私はパピヨンのサマーカット反対派だ。毛を刈り取られて細い体が丸見えになると、別の犬みたいになってしまう。

 耳だけがパピヨンの売りじゃないと私は思う。このフワモコで優雅な見た目こそが、パピヨンの象徴だと思うから。

 このサラサラの毛が良いんだよね。あ、ごめんなさい、今そこを触られるの嫌でしたか。怒られちゃったよ。


「あ、鏡花さ、後でまた英語見て貰って良い?」


「良いけど、A判定だったんだよね?」


「ギリギリでさ。まだ安全圏とは言えないから」


 そこまでストイックにならなくても、大丈夫じゃないかと思うけれども。まだ秋が丸々残っているから、一旦羽休めをしても良いと思う。

 もちろん真が望むのであれば、全然私は付き合うけれど。ただ大学に行くのでは無く、私と同じ大学に行く為。

 原動力がその想いであると言うのは、素直に嬉しいと思う。だからその手伝いぐらい、私は幾らでもする。

 その時間もまた、恋人としての時間だと思うから。何もそれらしい事をするだけが、恋人と言う関係じゃないと思うから。

 先日の、私の一番であり続けると言う言葉は嬉しかった。それなら私は、頑張る真を応援し続けようと思う。


「鏡花って特別リスニングの勉強して無いけど、点数良いよな? どうして?」


「え、何だろう? ……洋画を字幕でしか観ないから、かな? 多分」


「そんな方法があったか」


 意図してやっていた訳じゃないし、聴き取りに困らない理由ならそれぐらいしかない。他に何かした事も無いし。

 英語での会話を良く耳にしていたから、自然と馴染んだと言うか。大体B級映画って、よほど有名じゃないと吹替版がそもそも無い。

 大体は字幕のみだし、好きな作品には吹替が無いものばかりだ。それでもう慣れ切ってしまっている。

 だから映画館で観る時も自然と字幕版を観る。好きな声優さんが吹替に参加している時は、両方観たりする事もあるけど。


「効果があるなら、俺もやるか?」


「あ、でも速効性があるかは分からないよ?」


「試すだけでもやってみるよ」


 やっぱり真みたいな人は、行動力が陰キャのそれとは違う。考えるだけ、口にするだけで終わらない。

 私もなるべくそうしようって、真似はしてるけど中々難しい。そんなに簡単に出来たら苦労しないと言ってしまえばそう。

 だけど、どうせ出来ないとかやるだけ無駄とか、そんな考えで居ても前には進めないと知った。

 それを色んな人に教えて貰った。私と違って元から知っていた真だから、きっと良い結果に繋がるんじゃないかな。


「じゃあ、後でオススメを紹介するね」


「ありがとう、助かるよ」


「お礼を言われる程では、あ、はい、すみません撫でます」


 サボるなとお嬢様がお怒りの様です。手はちゃんと動かしなさい! と言う声が聞こえて来そうだ。

 最近ではこのツン具合が、結構良いなと思っている。何だかんだで、撫でを要求して来る。

 それはつまり、私はそのポジションとして認めて貰えたと言う事。犬や猫は、自分に触れて良い人間と触れられたくない人間をしっかり分ける。

 ダメな人には、近付くだけで威嚇したりする。こうしてサクラちゃんの、パーソナルスペースに居るのが許された。

 そして撫でる係としても認められた。これは結構な進歩と言って良いんじゃないかな。


「結構仲良くなったよな、鏡花とサクラちゃん」


「ホント!? そう見える!? 嬉しいな~」


 お嬢様、これからも私に癒しを下さい。勉強疲れ諸々が溜まったらまた来ますね。

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