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4章 第153話 新たな協力者

「佐々木先輩! 聴きましたよ昨日の投稿!」


「めっちゃ良かったです!」


「う、うん。ありがとうねいつも」


 いつもの様に中村(なかむら)さんと宮下(みやした)さんが声を掛けに来てくれた。嬉しい反面、本当にあれで良かったのか、と言う不安もあったり。

 私がもっと小さかった頃に、有名なアニメの主題歌だった曲を歌った動画。もう流行りでも何でも無かったけど、満足してくれたらしい。


 最近では、1年生でも話し掛けてくる子達が居て困惑しっぱなしだ。気になるのはそれだけじゃない。

 つい最近合唱部の2年生が、新入部員達に佐々木先輩の素晴らしさを〜とか語り出したのを必死で止めた。

 そんな伝達の仕方をされても困る。ただ、シンデレラの話はもう手遅れ感が凄い。


 最初は一緒に歩いている、小春(こはる)ちゃん達が見られて居るのだと思った。小春ちゃんと水樹(みずき)ちゃん、そして友香(ともか)ちゃんの3人は滅茶苦茶目立つ。

 下級生が憧れる理想の先輩そのものだから。でも、最近違和感を感じる事があった。1人で歩いていても、やたら視線を感じるからだ。

 変だなと思って周囲を見渡したら、見知らぬ下級生の女の子とガッツリ目が合った。


「えっと、私に、何か?」


「あ、あの! 応援してます!」


「えっ……」


 そのまま走り去った1年生の名前は、今も分からないままだ。それ以降も、似たような視線は絶える事は無く。

 それから、男の子からのあまり嬉しくない感じの視線も感じる様にもなった。そっちの方は、まあまあ不快だ。

 小春ちゃん達と比べたら、大した数ではないんだろうけど。それでも嫌なものは嫌だ。無遠慮な視線を向けないで欲しい。


「あんたなぁ〜そんなもんガッ! と睨んだったらエエんや」


「出来たら苦労しないよぉ〜」


「気付いてると、分からせるのは大事よ」


 視線に関しては、一番向けられているだろう人達に相談するのが良いかと思って友香ちゃんと水樹ちゃんに聞いてみた。

 何故か小春ちゃんが不在だったけど、この2人が居たから問題は無し。無かったけど、私にも出来る範囲でレクチャーが欲しかった。

 私には睨み返すなんて先ず不可能である。むしろこっちが、目を逸らしたいぐらいなのに。


「暫くは僕たちと一緒に居た方が良いかもね」


「おう任せろ!」


鏡花(きょうか)、ちゃんと呼ぶんだぞ」


 とりあえず当面は、男子に頼らせて貰おう。流石に男の子と一緒に居るのに、不躾な視線を向けては来ないだろうし。…………来ないよね?

 あのゾワッとする感覚が物凄く嫌だ。私より可愛い女の子なんて沢山居るのに、何でわざわざ私なんだろう。

 と言うか、友達でもない女の子にそんな視線を向けるのが先ずおかしいんだけど。そして、友達でも駄目だよあんな目線を向けるのは。


「にしても、先輩としては箔がついたしエエやんか」


「そうなのかなぁ?」


「ファンの子は大切にしなさいよ」


 ファンとか言われてもなぁ。全然実感とかないんだけど。結構色々な人達が、投稿や配信をしているのだから私じゃなくても良い筈だ。

 この学校でも、色んな人がSNSで投稿をしていたりする。教室で踊っていたり、ただ仲良く下校するだけの配信とか。

 SNSがあって当たり前のこの時代に、わざわざ私を選ぶ理由が分からない。どう考えても、水樹ちゃんや小春ちゃんのメイク講座の方が観る価値あるよ。


「多分、鏡花ちゃんだから良いんだよ」


「あ〜そうかも〜。夢あるよね〜」


「夢? どう言う意味?」


「目標にし易いって事よ鏡花」


 水樹ちゃんの説明で、意味が理解出来た。そう言えば、竹原(たけはら)さんも言っていたっけ。モデルが美人過ぎるから、最初から諦めちゃう人も居るって。

 この人は綺麗でも、自分は違うから無理って考えてしまう。その気持ちが、私には痛いほど理解出来てしまう。

 どれだけメイクを頑張ったとしても、小春ちゃんにはなれない。生まれ持ったビジュアルが違うのだから。

 だからこそ、なんだ。私はそう言う人達の期待を、いつの間にか背負っていたんだ。


「ま、もうちょい堂々とした方がエエわな」


「頑張れ〜キョウちゃん」


「綺麗に見える歩き方なら教えるわよ?」


 先輩として、自覚を持てと言う事なんだね。そっか、(あずさ)先輩がカッコ良く見えたのはそれが理由なんだ。1人の先輩として、恥ずかしくない様に。

 そんな自覚が、先輩にはちゃんとあったのだろう。私の前では、だらしない姿を見せた事がない。

 ちゃんと先輩出来てるかな? なんて聞かれた事は無い。いつも先輩は、堂々として居た。

 見られていると言う、自覚を私もしっかり持たないと駄目なんだ。後輩達の視線に、ビクビクしていてはいけないんだ。


「居た! キョウ見つかったよ!」


「小春ちゃん? 何処行ってたの?」


「それは良いから、見てコレ」


 小春ちゃんが差し出したスマホには、録音環境を貸しても良いと言う旨のメッセージが写されていた。

 本当に見付けて来てしまった。この人に不可能は存在しないのだろうか。もはや神に愛されたチートキャラを疑うレベルだ。人生2回目の人じゃないよね?


「このVTuberをやってる人だってさ」


「「あぁーーーっ!?」」


 そのイラストを見て、真と私は思わず叫んだ。だって、そのキャラは最近目にしたばかりだったから。

 小春ちゃんが見付けて来た新たな協力者は、この前遊園地で見たあのVTuberだった。

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