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4章 第150話 私達の一周年

 (まこと)と相談して決めた、私達の1周年記念。その日にやりたいと思った事、それは皆と過ごす事。

 私達2人が、ここまで来れたのは皆のお陰。小春(こはる)ちゃんが居なかったら。カナちゃんが居なかったら。

 誰かが欠けていたら、私達の関係は続かなかった。見守ってくれた皆が、一緒に居てくれた皆が居たから今日があるんだ。


「俺に感謝しろよな!」


恭二(きょうじ)はほぼ何もしてないだろ!」


「佐々木さんらしい考え方だよね」


 皆を招いて、真の家で細やかなパーティー。料理は私が用意する。誰かの家に皆で集まるなんて、随分久し振りだ。

 小さい頃はやっていたけど、もう何年もやっていない。真の方はそこそこやっていたらしい。

 男の子って、そうなのかな。それとも私が友達少なすぎたのかな。……多分後者な気がする。


「なあ鏡花(きょうか)、ホンマに手伝わんでエエんか?」


「大丈夫! 座ってて」


「キョウの好きにさせてあげよ」


「相変わらず上手よね、料理」


 今日は真と私がホスト。お昼休みに皆でお昼を過ごす時とは違う。私達2人で、皆にありがとうを伝えたい。だから私が作って真が運ぶ。

 私の家でも出来なくは無いけど、真の家の方が広い。無理に狭い家でやるよりは、広い方の家でやる方が良い。

 もちろん真が両親への許可を取っている。勝手にパーティー会場にするのは悪いと思ったから。結局、そう言う友達を大切にしなさいと言われて終わったけれど。


「葉山君の家って、やっぱりオシャレだよね」


「凄いね〜キッチンがもう全然違う〜」 


 昔からの付き合いの2人、カナちゃんと麻衣(まい)も当然呼んでいる。もし私がぼっちだったら、真と向き合えただろうか。

 相談する相手が居なくて、1人で毎日悩んで。マイナス思考に陥って、逃げ出していただろう。そんな情景が簡単に思い浮かぶ。

 2人には私以外にも、友達がちゃんと居た。だから私と一緒に居る理由なんて無い筈だ。

 それなのにこうして、ずっと一緒に居続けてくれた。完全な孤独には陥らなかった、最大の要因なのは明らかだった。


「今日は一杯食べてね」


「費用は俺と鏡花持ちだからな。気にしないでくれ」


「お、マジか! じゃあ気にしねぇ」


 そろそろ良いかな。これ以上作ると、残った時に困ってしまう。幾ら真が沢山食べる人だと言っても、全部の料理が日持ちする訳じゃない。

 その辺りを考慮するなら、これぐらいが丁度いい。普段の皆を見る限り、これぐらいの量が妥当だと思う。

 こんなに沢山作ったのは始めてだけど、これはこれで結構楽しかった。誰かの為に料理をする、その楽しさを知った今ならこれぐらい平気だ。

 流石に料理人は目指さないし、飲食店をやりたいとまでは思わないけど。


「ほらマコ〜アンタが主催なんだからさ」


「えっ、そう言うの必要か?」


「当たり前やろ。バシッと決めや」


「あ〜その。皆のお陰で、俺と鏡花は無事1周年を迎えられました。ありがとう! 乾杯!」


 皆にどんなお礼が出来るかなって2人で考えて、出せた答えがこれだった。どこかのお店とか、焼肉食べ放題とかも考えてはみた。

 だけど、この形が一番私達らしいかなって思ったから。誰にも邪魔をされない空間で、皆で楽しく過ごす時間。

 お昼休みの屋上みたいな空気感が、一番気楽で良いのかなって。それに、記念日が来る度に皆の事を思い出せるから。

 例え卒業してバラバラになっても、この思い出は私達の中で残り続ける。私と真がどうと言うよりも、学生時代の楽しい思い出の一つとして残れば、それで良いかなと思っている。


「アンタも多少は気配りが出来る様になったわよね」


「多少ってなんだよ、失礼な」


「女子に興味ない空気出してた頃よりは、まあマシやな」


「鏡花の影響ね」


 いつもの様に真が3人に弄られていた。高校以前や1年生の頃を良く知らないから、どんな変化が真に起きたのか私には分からない。

 それでも、私と居る事で良い方向に進んだのであれば光栄だ。私のどんな所が影響したのかは、あんまり良く分からないけれど。


「キョウちゃんもだよね〜」


「明るくなったよね、鏡花ちゃん」


「えっ!? どれぐらい!? 豆電球とか!?」


「……そう言う所は相変わらずだね」


 少々納得の行かない評価を貰った気もするけれど、概ねプラス方向に進んでいるらしい。明るくなったかぁ。確かにそうかも知れない。

 入学して間も無い頃と、今の私は結構違う。その頃の私なら、皆に料理を作ろうなんて考え無かっただろう。

 カナちゃんと麻衣の3人で居られればそれで良かった。……いや違う、本当の事を言えば1人でも良かった。だから放課後に、孤独に教室で過ごしていた。


 他者との関わりを、必要最低限にしていた。家に居ても孤独で、それが当然の様に考えてしまっていた。

 本当にどうにかしたいなら、吹奏楽部かラクロス部に入れば良かった。そうすれば、カナちゃんか麻衣が居るのだから。

 もしくは今みたいに、合唱部に入る道もあった。それらを全部拒否したのは私だ。あのままだったら私は、こんな思い出は残せなかった。


「確かに佐々木の印象はだいぶ変わったよな」


「そ、そうかな? 変じゃない?」


「今の佐々木さんの方が良いと思うよ」


 そんな風に言って貰える様になったのは、ここに居る皆のお陰だ。こうして、皆にありがとうの気持ちを伝えられて本当に良かった。

 バラバラになる日が、少しずつ近付いて来ている。だからこそ、私は絶対に忘れたくない。この温かくて優しい時間を。

話的にも話数的にも、一区切りとして温かい話にしたいなと。そう思ってこの内容にしました。

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