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4章 第149話 プリンセスの正体

「ねぇ、カナちゃんと麻衣(まい)はどう思う?」


「無理に何かしなくても良いんじゃない?」


「私もそう思う〜」


 今日は久し振りに、モブ友の集まりである。私達がモブを自称して良いのかについては、諸説あるかと思いますがモブ友で通させて頂きます。

 本日のモブ会議の議題は、交際1周年に何をすべきかについて。時間の流れとは本当に早いもので、もうGWは終わっていた。

 怖いよね、どんどんイベントが終了していく。流石に今年は、竹原(たけはら)さんも自重したらしく何もイベントは無かった。

 GWは(まこと)と2人で、ひたすら勉強をしていた。……勉強だけでも無いけどね。息抜き程度には色々とね。


「でもさ〜何も考えてない彼女もどうなのかな?」


「人それぞれじゃない?」


「私は何も考えないよ〜」


 麻衣はそうだろうけどさ。逆にカナちゃんは滅茶苦茶しっかりと考えてそう。私は悩んだ挙げ句、結局何も出来ないか黒歴史を増やすかのどちらかだ。

 だから聞いてるんだけどねぇ。おかしいなぁ何かこれ既視感が凄いんだけど。


「あ、この部屋って鏡花(きょうか)ちゃんを問い詰めた部屋じゃない?」


「あ〜そうかも〜」


「既視感の正体はそれ!?」


 この部屋はいつぞやの、何回目かのモブ会議をした部屋だ。会議って言うか、私が一方的に遊ばれただけなんだけど。

 そう思うと、あれも大体1年前になるんだね。真の急接近についてカナちゃんに問い詰められて、相談したら付き合えば良いじゃないと雑に流された日。

 そんな日々も最早遠い昔だ。あの時の私は、ただただ困惑するばかりだった。真が私を好きなんて有り得ないって、全然信じられて居なかった。実際はその通りだったんだけれども。


「結局キョウちゃん付き合ってるし」


「だから言ったのにね」


「……仕方ないじゃない。あんなの好きになるよ」


 本当にあの頃はそんなつもりなんて無かった。住む世界が違うクラスメイト、ただそんな風にしか思えてなくて。

 自分と彼が恋愛関係になる未来なんて全く想像出来ていなかった。そこに一切の嘘偽りはない。

 だけど、真の真っ直ぐな好意が嬉しくて。困るんだけど、跳ね除ける気にはなれなかった。

 そうして居る内に、自然と触れ合う様になっていた。近くに居てくれるのが当たり前になっていたんだ。


「流石シンデレラは違うよね」


「ちょっ!? どこでそれを!?」


「あ〜それウチの後輩も言ってた〜」


 や、辞めて下さい羞恥心に心が堪えられないので! 何、あの話そんなに広がってるの!?

 もしかしてその内、全校生徒に知られてしまうのでは!? 嫌だよ、嫌過ぎるよ。高校生でシンデレラはちょっと痛いよ。

 でも、後輩達のあの期待感を裏切りたくはないよ。中村(なかむら)さんと宮下(みやした)さん、あれから良く会いに来てくれるんだよね。

 普通になんか、憧れの先輩扱いだよ。何故か水樹(みずき)ちゃんと同列に見られてるんだよ。モデル事務所所属と一般ピーポーを同じ様に見られてるんだよ。


「やっぱり鏡花ちゃんはメインヒロインだったね」


「ゔっ!?」


「もう違うって言えないよね〜」


 それについては申し開きの余地が無いよ。今日までの自分を、昔の自分に見せたらきっと思うだろう。何この陽キャ、自分とは住む世界が違う人だって。

 脱陰キャしたかった私がそう思うなら、それは成功したと言えるのかも知れない。根っこの部分はあまり変わっていないけど。


 変化が生まれたのは、小春(こはる)ちゃんや真の言葉。そして、友達で居続けてくれた麻衣とカナちゃん。色んな人々と向き合う様になったからだ。

 麻衣とカナちゃんは、すぐ陰キャを発動してしまう私を無理に連れ出さない。そして小春ちゃんや真は、こんな私でも良いと言ってくれる。

 だから、そんな人達の気持ちや気遣いに応える事にした。ただそれだけの差が、これだけの変化を生んでいた。


「私はシンデレラじゃないよ」


「えぇ〜それは無理がない〜?」


「もう素直に認めたら良いのに」


「そう言う事じゃないの」


 私は私1人でシンデレラなんじゃない。周囲の人々ありきの偽物だ。私単独では、シンデレラを体現出来ない。

 まるでシンデレラであるかの様に見える魔法。それを小春ちゃんって言う魔法使いが、使い方を教えてくれただけ。

 そして周りに居る皆のお陰で、シンデレラになれるだけ。王子様が居なければ、私はシンデレラになれない。だって私は、シンデレラ本人じゃないから。

 単独でも成り立つのがプリンセスだけど、私は単独だとただの平凡な一般人だ。そんな一般人の暮らす家で、舞踏会を開いてくれる人達が居るから偽のシンデレラになれるだけなんだ。


「佐々木鏡花は、佐々木鏡花のままだから。私の魔法は、皆がいないと解けちゃうんだよ」


「そっか。ま、鏡花ちゃんらしくて良いんじゃない?」


「嫌いじゃないよ~そう言うの」


 ダンスなんて踊れないし、ガラスの靴もないけれど。それでも皆のお陰でここまで来れた。……そっか、それで良いんだ。

 私と真の1周年に、必要なものが分かったよ。難しい事なんて何も無かった。悩む必要なんて、最初から無かったんだ。答えはここにちゃんとあったんだ。

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