4章 第148話 配信活動について
結局カラオケを投稿してから、想像以上の再生数になった。そのお陰で、後輩達は喜んでくれたみたいで良かった。
またあの2人が観ましたと報告に来てくれた。それでとりあえずはオッケーかなと思っていたけど、それだけでは解決しなかった。
「も〜変なコメント付けないでよ。小学生の下ネタだよ〜」
「あ〜居るわ~そう言う奴。問答無用でブロックしときな」
「面倒よね、そう言うの」
本日は小春ちゃんの家へ、水樹ちゃんと共にお邪魔している。投稿や配信の注意点など、色々と教えて貰う為だ。
水樹ちゃんはモデルとして、メイクの動画等をアップしている。小春ちゃんも似たような感じで、結構配信が受けている。
そもそも小春ちゃんは彼氏が配信者だから、そのうち一緒にやったりするんだろう。ただ、私はそう言う方向性に進むつもりは無い。
聴いた人が喜んでくれてるなら、それで良いかなって程度。これで食べて行こうとか、有名になろうとかは特にない。
「まあ先ず、当たり前だけど身バレ回避よね〜」
「歌だけだよ? 分からないよね?」
「いえ鏡花、映り込みとかもあるわよ」
あぁ〜たまに聞くヤツだ。それでVtuberの人が顔バレしたとか聞いた事がある。私はたまにしか観ないから、遭遇した事はないけれど。
そっか、そうだよね。勝手に大丈夫とか思い込んでたけど、カラオケのモニターとか色々あるもんね。
部屋によってはモロに鏡があったりもする。何も考えずにやってたら、いつかやってしまいそうだ。
「あと変なファンよね。キョウは素直だから要注意だかんね!」
「え? どうして?」
「巧みに個人情報とか聞き出そうとするわ」
「えっ……こわ」
そんな人居るの? 聞いてどうするんだろう。何を目的としているか分からない人に、住所とか知られたら恐怖だよ。
たまに見ている配信者さん達は、運営さんが居て対応してくれたりしている。しかし私はただの個人。
そう言う所は特に注意しないといけない。思っていたより、投稿活動をするって大変なんだね。
「とにかく何か変だなと思ったら、アタシか水樹にすぐ聞いて」
「仕事中じゃなければ答えるから」
「うん、そうするよ」
自分1人だったら絶対こんな事は出来なかった。2人が居たから、こうして安心して投稿が出来る。何をやったら良くて、何をやったら駄目かすぐ教えて貰える。
1人孤独にやっている人達は凄いなぁ。とても私には出来そうもない。それを出来た人が、有名配信者になって行くのだろう。
「キョウはあんま無いかもだけど、ストーカーも出るからね」
「ホントに辞めて欲しいわ」
「あぁ~2人は多そうだよね」
特に水樹ちゃんはモデルとしても活躍している。だから誰かに顔を知られる機会は多い。そうなると、やっぱりその分変な人にも目を付けられてしまうんだろう。
水樹ちゃんはやりたい事をしているだけなのに。世の中ままならないよね。まあ私にストーカーなんて…………駄目だ真に言われたんだった。
そんな考えだと駄目だぞと。私も女子の端くれである事を忘れてはならない。ストーカーとか絶対嫌だよ怖いもん。
後輩達の期待に応えたいだけで、変な人の期待に応える気はありません。
「とりあえずこれぐらいかしら? 水樹はどう?」
「一旦はこれで良いでしょう」
「ありがとう色々と。気を付けるね」
と言う訳で、投稿活動の基本授業でした。色んな人の配信を観ている側だったけど、自分が投稿する側に回るなんてね。
ただ、やってる人達の気持ちもちょっと分かったんだよね。自分の歌を喜んでくれる人が居る、楽しんでくれた人が居る。
それがこんなにも嬉しい事だとは思わなかった。自分の為と言うより、後輩達や喜んでくれる人達に向けて頑張ってみようと思う。
「で、こっちが本題だけど」
「え? 何?」
「3人で何かやらない?」
「私は良いわよ」
それは所謂、コラボ配信的な話ですか? いや〜私はちょっと顔出しはNGでお願いします。何より、この2人に挟まれて配信は晒し首の様なもの。
声だけ出演とか、そっち系で良ければやらなくは無いけど。小春ちゃんの事だから、そう言う方向性でやってくれるとは思うけど。
「あ、もちろんキョウは顔出し無しで良いから」
「良かったぁ」
「でも何するの小春?」
最大の問題はそこである。この3人で何か配信するとしたら、共通の趣味がない。3人で歌うとかなら、まあ有りかなぁ。
でもそれなら、別にわざわざやる事でも無い様な気もするんだけど。私もコラボ配信とか観た事あるけど、何かしら特別な事をやっている事が多い。
この3人でやるからこそって内容の方が良いよね。じゃあ何をって言われたら、ちょっと返答には困るんだけど。
「大丈夫、色々プランは考えてるから」
「そ、なら良いけど。」
「ハードルは低めでお願いします!」
そこから先は、いつもの雑談モードだ。何が美味しかったとか、最近買ったコスメが良かったとか。
たまに新しいメイクを教えて貰ったりしながら、楽しい時間を過ごした。進路の事とか受験だとか、考えないといけないのは分かっている。
だけど、この時間だって大切な時間だ。だって、私達はそれぞれ違う道を行く。だからこそ、この何気ない時を一杯楽しんでおきたいんだ。