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4章 第142話 布教活動は大事リターンズ

 時間の流れは早いもので、もう春休みだ。大学受験がジワジワと迫って来ている。だからこそ、勉強も必要なんだけど今日はちょっと一休み。

 (あずさ)先輩と2人で出掛けている。出掛けていると言うか、布教活動中だ。私のお気に入り、『DOG(ドッグ) CAFE(カフェ) MOCHA(モカ)』に先輩をご招待。

 犬や猫が嫌いな人は、そんなに多くないからね! 癒やしの空間を共有するんだ。


「私のイチオシ、サクラちゃんです!」


「へ〜パピヨン好きなんだ。確かに可愛い」


「ですよね! 先輩はどの犬種が好きですか?」


「そうね〜豆柴とかかな。ゴールデンも可愛いけど」


 分かるなぁ、可愛いよね豆柴も。あのコロコロのお尻が最高にキュート。ゴールデンレトリバーも可愛いけど、私の場合は覆い被されたら終わる。

 あと、散歩に着いて行けそうにない。引きずられる未来しか見えない。やはり私は小型犬一択だ。大型犬は動画で見ているだけで満足だ。


「はぁ〜癒される〜受験戦争で荒んだ心が潤うわね〜」


「やっぱり、大変ですか?」


「まあね〜やっぱり合格ってハッキリするまでは不安だったな」


 私に耐えられるだろうか、正直今から不安でしかないんだけど。運動は終わっているけど、勉強は得意な方。

 だから多分大丈夫だと思うんだけど、一行ずつ間違えるとかポカをやってしまわないかが不安だ。

 多少なりとも心は成長したとは思うけど、根っこの部分はそれほど変わっていないから。


「あ〜ごめん不安にさせちゃった?」


「いえ、元々不安でしたから。先輩のせいじゃないですよ」


「あんまり考え過ぎたらダメよ?」


 それも分かっているんだけどね、考え過ぎてドツボにハマるのを稀にやるから。自信満々に挑んで、あっさり決められる人が羨ましいよ。

 まだまだ私には、出来そうにない。ついつい不安になって、悩んで沈んで。そう言う癖が付いてしまっているんだろうね。

 少しずつ前に進めては居るけど、しっかり根を張ったネガティブ思考は1年ぐらいで抜ける筈もなく。はぁ、強力な除草剤が欲しいよ。


「ほらほら鏡花(きょうか)、犬に癒されようよ」


「そう、ですよね」


「あ、そうだ。私、4月から1人暮らしするんだ」


「え? そうなんですか?」


「今度遊びにおいでよ」


 1人暮らしか〜それに近い事はもうやってるんだよね。ただ自立とは呼べない実情もあって。

 私も早くしたいなぁ1人暮らし。あ、それか(まこと)と一緒に同棲とか? いやいや、それは流石に早いかな? 待って、梓先輩はどうするんだろう?


「先輩は同棲とか、するんですか?」


「考えては居るわよ? 卓也(たくや)が卒業したらね」


「な、なるほど。大人ですね」


「そうかなぁ? わりと居るわよ周りにも」


 えぇ、3年生凄いな。やっぱり先輩達は進んでるなぁ。もう大人の世界に仲間入りするんだ。

 勝手なイメージだけど、同棲は大人がするものと感じてしまう。だって、生活費とかも全部自分達で賄うんだもんね。

 ちゃんと働いてないと出来ない行為だ。アルバイトをしてたら出来るのかも知れないけど、家賃が相当安くないと厳しそうだ。


「ま、卓也がバイトでも始めたら考えるつもりよ」


「ですよね。お金無いと無理ですよね」


「鏡花達はどうするの?」


「まだ考えてないです。家賃ぐらいは払えても、他が足りないですし」


「そうよねぇ、やっぱり」


 結局そこが問題なんだよね。美羽市の家賃は大体4万円から6万円ぐらいまで。そこに水道光熱費や諸々が追加される。

 まあ、無理だよね普通に。ただアルバイトをしたぐらいでは。少子化が問題視される時代だけど、実際こうなのだから仕方ない。

 同棲すら軽々と出来ないのに、結婚と子育てとなると更に厳しい。


「親が仕送りしてくれる家庭が羨ましいわ〜」


「ですねぇ。それなら出来そうなんですけど」


「鏡花の所も無しなんだ? 辛いねお互い」


「え、えぇ。そうですね」


 うちは仕送りが無いと言うより、そもそも離婚の危機なので。最初から期待出来ないと言いますか。

 まあ父親は無駄に生活費だけはしっかり入れるタイプだから、もしかしたら出してくれるかも知れない。

 ただ、もし離婚したら養育費だけになりそうだし。あんまり期待はしない方が良いと思う。


「よし、こんな話はやめやめ! 楽しく過ごそう」


「そ、そうですよね!」


 同じ大学に行く予定なのもあり、梓先輩とはついついお悩み相談会になりがちだ。お互いに悩みを打ち明けられる関係性は有り難いけど、どんよりしがちなのは要注意だ。

 ダメダメ、こんな陰気な女がジメジメしてちゃあナメクジになってしまう。空気感を乾燥させて行こう。シリカゲル撒いて撒いて!


「そうだ。鏡花、雑誌に載るんだってね?」


「あ〜まぁ、はい。完成したら献本貰えるみたいです」


「何気に鏡花って凄いわよね」


「そ、そうですかねぇ? 今回のは色々あった結果ですし」


 単にそう言う流れになったからと言うだけで。自発的に動いたのではない。オーディションを受けて、とかなら凄いけど私は違う。

 身内ルートと言いますか、ちょっとしたズルみたいなものだし。それに載ると言っても、ちょっとしたワンコーナーだけ。

 女子高生でも出来るメイク講座の、ビフォーアフター係なだけ。水樹ちゃんみたいにババーンと表紙に載ったりはしない。


「それでも凄いじゃーん。良いなぁ」


「そうですか? ただの不可抗力ですけど」


「え〜駄目よ鏡花、もっと周りに差を付けなきゃ! ライバル蹴落として行こ!」


 またまたそんな物騒な。だけど、それぐらいの気持ちで居ないといけないのかな。モテる人が恋人である以上は。

 梓先輩ならキレのあるキックが出来そうだ。私は、全然蹴落とせないヘナチョコキックになりそう。


「ま、それぐらいの気持ちで頑張りなよ! 今年1年はさ」


「が、頑張ります」


 何にしても、勉強も恋も全部頑張るぞ! ところで、サクラちゃんのそのカジカジは、激励なんだよね?

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