1章 第12話 学校で一番のイケメン男子に好かれて困っています~私はモブで居たいのに~
夕方にも3話連投しておりますので、見落としにご注意下さい。
「はっ!?……私の部屋……またか」
どうやら無事に帰って来て入浴を済ませて、ベッドにインしていたらしい。衝撃的過ぎてまた意識がどこかへ行っていたらしい。このパターン、最近増えて来たけど大丈夫かな?
しかし今日は特別にヤバい体験をしてしまった。
『俺は鏡花しか見てないから』
グフッッッ!! は、破壊力がヤバ過ぎる。あれは夢だったりしないだろうか? 寝て起きたら、いつものジメジメモブライフに戻ってたりしないだろうか?
こういう時に頬を抓って現実か確かめるみたいな事をやるのは、フィクションの中だけなんだからねフゥン!!
ほっぺにドン! バチン!!
痛い……
「と言う訳で、真っ直ぐに好意を向けてくれた男子と、これからどんな顔して会えば良いのか、教えて下さい」
『女の顔したら~?』
『知らないよそんなの』
くっ!! 頼りにならない。……当たり前か、3人揃ってモブの三連星だし。全員彼氏居ない歴イコール年齢の恋愛弱者達だ。あとなんだ女の顔って。余計分かんないよ。
普通はこう言う時、頼りになる親友キャラがアドバイスとかしてくれるもんじゃ…………あっ! 私達はモブ。メインヒロインじゃないから、頼りになる相棒ポジはいませんと。
月曜から真君とどんな顔して会えば良いか分からなくて困った私は、チャットアプリでカナちゃんと麻衣にグループ通話をして助けを求めたけれど、頼る相手を間違えたかも知れない。……まあ他に頼る人は居ないけど。
『と言うか~もうキョウちゃんはモブを自称したらダメじゃない~?』
『まあ、そんなラブコメみたいな事してるからモブじゃないよね』
「ぇ゙っっっっ! 待って、見捨てないで……」
何でそんな事言うの? 私は全然メインヒロイン枠じゃないよ!? 見捨てないでお願いします!
『見た目はモブだけど、やってる事はメインヒロインだよ』
『そだよ~主人公だよ~』
「だから困ってるんだよ!? 私見た目も中身もモブ全開なのに、メインキャラがこっちに来るんだよ!!」
これで眼鏡を外したら超絶美少女で、脱いだらモデル体型とかなら良いよ!? それなら明日から誰だあの子!? あんな美人居たか!? みたいな展開になるよ!
だけど見て下さいこの貧弱ボディ! 眼鏡を取っても全然モブフェイス! これでは戦っていけませんよラブコメの世界では!
『でも~嫌じゃないんでしょ~?』
「そ、それは」
嫌とかじゃなくてその、どういう顔して会えば良いか分からないってだけで……嫌とかそういう話じゃないじゃん。
『一緒に居たい男の子なんでしょ?』
「いや居たいって言うほどでは……ただ一緒に居るのが楽しいってだけで」
友達としてね! 友達として、一緒に居るのが楽しいなぁってだけですから! これはホラ、恋とか愛とかじゃないでしょう!
『もう攻略済みだよ~この人~』
『鏡花ちゃんはもう、爽やか体育会系男子エンドが確定してるじゃない』
「まだ決まってないから!」
そんなもうルートが決まった恋愛シミュレーションゲームみたいな!? 違うよそうじゃないんですよ聞いて下さい!
『『まだ』』
「ゔっ」
それは言葉の綾と言いますか、言い方が悪かったのは認めるけど。2人で攻め立てるのはズルくない? フェアじゃないと思います!
『まあでもさ~何でも良いんじゃない~?』
「え?」
麻衣が急にそんな事を言い出す。困った事に、この間延びしたのんびりキャラの様な話し方をする彼女は、突然核心を突いた事を言い出す傾向がある。
そしてそういう時は、反論の余地が一切無い結論である事が多い。そういう所が麻衣の良い所でもあり、魅力的な部分だと私は思う。
『だって~私達には何が正解か分かんないでしょ~?』
『そうだよ。考えても答えは出ないよ』
「それは…………そう、だけど」
やっぱりというべきか、麻衣がもっともな結論を出した。それはその通りで、彼氏が出来た事のない私達が、こうして顔を突き合わせて話していても正解は出ない。
だって誰もその経験がないから、こうすれば良いなんて回答は出ない。3人寄っても文殊の知恵にはならない。
『だから~その時その時で~キョウちゃんが出来る反応をするしかないって~』
「え~~それで良いのかなぁ?」
葉山君としては、して欲しいリアクションとかあるんじゃないの? 男子の心の機微とか全然知らないけど。少女小説だと、色々あるじゃない?
『どっちにしろそれしか出来ないでしょ』
「ま、まあそうだけど……」
カナちゃんの指摘は、ぐうの音も出ないストレートな意見だ。出来ない事の話をしても仕方ない、それはそうなんだけどさぁ。
『つまりは~』
『『当たって砕けろ』』
「砕けてんじゃん!! ダメじゃん!!」
もう! 自分の事じゃないからって、好き放題言ってくれるなぁ! これでも本当に悩んでいるんだからね!
『それはそれとして、鏡花ちゃんに1つ注意点があります』
「え? なに?」
何だろう? カナちゃんが何か知恵を授けてくれるらしい。何でも良いから有益な情報が欲しい。
『高校生にもなって好き避けはしたらダメだからね』
「すき、よけ??」
初めて聞いた言葉なんですけど?? すきよけ? すき焼きは確実に関係ないとして……いや本当に関係ないのか? すき焼きの作法か何か?
『あ~あれか~』
『好きだから恥ずかしくて避けちゃう、みたいなやつ。まあ許されるのは、中学生までじゃない?』
「へぇ~そんなのあるんだ。カナちゃん良く知ってるねそんなの」
私は聞いた事がない言葉だった。カエル化なら知っているんだけどなぁ。解釈が違ったってゲコってしまうやつ。
あ、カエル化するどころか好きピすら出来た事がないので、無駄な知識でしかないけどね!! 耳年増ってね!!
『漫画で見たよ』
「漫画かい!!」
まあ何と言いますか、同レベルの者達による同レベルの会話だったという事で。だって私達の中で、まともに恋愛経験がある人間はおりませんから。
『キョウちゃんはあんま漫画は読まないもんね~ゲームはするのに』
「あ~うん。何でかは分かんないけど、苦手なんだよね。読み方が分かんなくなっちゃって。文字だけなら平気なのに」
そんな会話を交えつつ、普段通りの雑談をして3人での通話を終了した。
ピコン
「あれ?……小春さん?」
3人での通話を終えた直後に、メッセージで小春さんが連絡して来た。
『キョウ明日って暇?』
うちの学校は隔週で土曜が休みになる。今日はその休みになっている土曜だから明日は日曜だ。カナちゃん達と約束でもしない限り、大体は図書館で過ごすだけだ。つまり暇。
『暇ですよ』
ピコン
『じゃ明日アタシに付き合ってよ』
小春さんに誘われて今日もまた駅前まで来ている。2日も連続で昔からの友達以外のクラスメイトとお出かけ! 脱陰キャ作戦が効いて来ている!!
「おは~キョウ! 急でゴメンね~」
「い、いえ。大丈夫ですよ暇だったから」
う、うぉぉぉ! 何だこの小春さんの私服姿! か、カッコいい!昨日も中々だったけど、今日は一段と凄い……カッコいいのに、ちょっとエッチな感じもする。
こ、これがスクールカーストトップのギャル。何だか大胆に両肩出てるし、スカート? の丈も短めで、それパンツ見えないのかな?
いやそもそも、それブラジャーどうやって着けてるんだろう? とか、ハラハラしてしまう。
鏡花はファッションを知らなさ過ぎて、小春が着ている服が何なのか理解出来ていない。小春が着ているのは、要するにオフショルダーのルーズワンピースだ。
ガッツリと両肩が出るデザインになっており、丈も短めに作られている。ベースは黒い生地で所々に白いラインが入れられており、胸の辺りにブランド名が英語で書かれている。
カッコよく見えるのは、そんな少しセクシーなワンピースと、ブルーのキャップを身に着けた小春が、それらを見事に着こなせるだけの優れたスタイルを誇っているからだ。
元から小春は身長が高めだが、厚底のサンダルを履いており、普段以上にスラリとした長身の女性に見えるのだった。
鏡花は与り知らぬ事だが、昨日ここまで攻めた格好をして居なかったのは、クラスメイトの男子達が居るからだ。
小春は女子のみの時と、絶対安全な真と居る時以外ではこの様な恰好はしない。変に気を持たれても困るのと、誘惑していると言う下手な勘違いを生まない為だ。
私は小春さんと一緒に、美羽駅前の繁華街を歩きながら雑談をしていた。せっかく誘って貰えたのだから、より仲良くなれたら良いな。
あくまで努力義務と言いますか、希望的観測? そうであったら良いのになぁってぐらいの心持ち。どんどんグレードダウンしている気もするけど。
「そいや普段キョウって休みの日どうしてるの?」
「大体は図書館に居ますね。たまに友達の家とか」
図書館は最高のスポットだと思うんだよね。先ずエアコンが効いてる。夏でも冬でも効いているから、避難場所としてとても有難い場所。
そして蔵書数も多いから、まだ読んだ事のない本が大量にあるんだよ。流石に通い過ぎて、そろそろ厳しくはあるんだけどね。
「ホントに本好きなんだね~」
「そう、ですね」
本はとても好き。読んでいる間は余計な事を考えなくて済むから。事実上崩壊している家庭の事情とかね。おっと、それは今必要無い話だ。
「堅いぞ~キョウ! もっと気楽に話してくれたら良いから」
相変わらず距離の詰め方が凄いなぁと鏡花は思った。……でもせっかく良くしてくれている人だから、もうちょっと仲良くなりたいとも思う。
「……えと、頑張り、ます」
「フフッ。キョウって結構面白いね」
面白い? 私が? 今面白いとおっしゃいましたか?
「えっ!?」
「アタシは嫌いじゃないよ、そゆトコ」
どういう所か分からないけど、小春さん的には面白いらしい。分からない、何がどう面白かったのかなぁ?
「あ、ありが、とう?」
小春さんは私みたいな地味モブ女でも、気さくに話し掛けてくれている。良い人なのは昨日だけで十分に分かっている。流石は真君の幼馴染だと思う。人の良さが良く似ている。
「今日はさ~服とか見に行きたいんだ」
ええと、何故にその目的で私を誘ったのでしょうか? その条件で言えば、最もクラスで相応しくない存在が私だと思うのですけれどもええ。
安くて機能性に優れ、在庫不足に陥る事がない『まきむら』でしか服を買わない私は不適格だと思うのですが如何でしょうか!?
「……私あんまり役に立ちませんよ? センスないし」
「え? 問題なくない?」
ホワッツ!? 何故ここで問題ないというジャッジになるのでしょうか? どう考えても問題しかないと思うのですが。
「えぇ!? なぜ!?」
「だって探すのはキョウが着る服だし」
うん? えっと? はい? え? 私が着る服を今から探すと言いましたか? うーん…………何故に!?
「……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
私を驚かせるのが趣味なんだろうか? この幼馴染達は。
明日も昼と夜に投稿予定です。