3章 第121話 ガールズトーク 恋バナ編
もうすぐ冬休みというタイミングで、いつもの女子6人で女子会中。あの私が、女子会すら雲の上だった筈なのに、恋バナに花を咲かせる事になるなんて。
今年1年を振り返れば、あまりにも目まぐるしい日々だったと思う。一般的に見たら普通かも知れないけど、私から見たら華々しい日々の連続。
だけど今となっては、あまり気にならなくなりつつある。これが所謂、慣れるって事なのかなぁ。
「アンタらはエエよな〜ウチは遠距離やもん」
「ま、友香は仕方ないわよね。いっそ呼べば良いじゃん?」
「春休みは来てくれるんやけどな、冬はウチが行くしかないんや」
何と友香ちゃんは、地元大阪に彼氏が居る。親の都合で中学からは美羽市に引っ越し。それでも関係は切れずに、未だに遠距離恋愛を続けている。
小学生の頃からずっと、お互いを想い合っているなんて素敵だなぁ。まるで恋愛漫画の主人公みたいだよ。
見た目は明るいギャルだけど、凄く乙女な恋愛をしている。流石は美少女、恋愛までキラキラメインヒロインだ。
「水樹と小春んトコはどうなんや?」
「私? 特に変化なしよ。いつも通り」
「アタシも変わらずかな〜」
水樹ちゃんの彼氏は、一歳上の同じくモデルさん。小春ちゃんの彼氏は、大学生の有名配信者だそうな。
凄いなぁと言う、語彙力に欠ける感想しか出て来ない。もちろん真君は素敵な男の子だけど、一軍女子達は一味違うなぁと思ってしまう。
「アンタらはエエよなー好きな時に会えて」
「へ、へへ。何かごめんね友香ちゃん」
それについては、申し訳ないとしか言えない。私達5人は、好きなタイミングで恋人と一緒に過ごせる。それが贅沢な日々だと言う事は、重々承知している。
もし私が真君と毎日会えなくなったら、そう考えるだけで辛い。ふと寂しさを覚えた時があっても、すぐに会いに行けない。
いつもの様に、手を繋ぐ事が出来なくなる。そんな日々が訪れたら、とても耐えられる気がしない。
知り合って間もない頃は、私から距離を取ろうとしたのに。それが今では、傍に居てくれるのが当然と思ってしまっている。
「やっぱり、遠距離って大変なの?」
「そ〜それ気になる〜」
「そら大変やて、あっちには他の女もおるんやから」
カナちゃんと麻衣の質問に、友香ちゃんの回答。自分ならどうだろう? 何処に居ても真君は間違いなくモテるのは確実。
友香ちゃんの様に、周りの女性が気になって仕方ないだろう。毎日欠かさず、呪いの儀式をしてしまうかも知れない。
きっとデ◯ノートを心から欲しがってしまうと思う。同じ大学に行こうと約束していて良かった。
「キョウはマコと上手くやれてるみたいね?」
「そう、かな? たまに喧嘩するけど」
「それは痴話喧嘩でしょうが」
「見てて面白いわよ、貴女達」
えぇ…………私の知らない内に、水樹ちゃんには見世物と思われていたらしい。エンターテイメントを提供してるつもりは無いんだけどなぁ。
カナちゃんと麻衣は、友香ちゃんとの遠距離恋愛トークに夢中らしい。お陰で長身美女2人の興味を、私が1人で受け止める羽目に。
まあ、5人を相手にするよりは楽と思おう。と言うか、大して報告する事は特に無いんだけどな。
「いつも通りかなぁ、今の所は」
「なら良いじゃないの。あ、アイツの誕生日どうするの?」
「それ! 丁度聞きたかったの! 何が良いかな?」
「彼なら、何でも喜ぶんじゃない?」
それはそうなんだけど、私の時は凄く嬉しい誕生日にして貰ったから。だから私も、しっかりとお祝いしてあげたい。
ただ、男の子が誕生日に貰って喜ぶ物が何か分からない。色々調べてみたけど、どれもイマイチ真君にマッチしない。
もう辞めたのに、今更サッカーボールを贈るのは意味不明だし。ネットで調べたら凄く大きなプラモデルを贈るとか、最新ゲーム機やゲーミングPCを贈る話とか出て来た。
どれも真君は欲しがらないだろう。そもそも結構無欲と言うか、物欲があんまり無い人だ。むしろ何かこう、私が好きな物を共有したがる傾向にある。
「何が良いかなぁ? 2人は何あげたの?」
「アタシはゲーミングマウス」
「私は男性向けブランドのジャケットね」
「どっちも欲しがりそうに無いよー」
当たり前だけど、別人の話なんだから参考にはならない。人生で初めて、親族以外の男性に贈るプレゼント。それが最近の一番の悩みだった。
だから今日はその相談に来ているのだ。私のセンスでは、中々コレと言う答えが出ない。考え過ぎて、もういっそプレゼントはわ・た・しをやろうかと頭を過った。
その後、あまりにもアレ過ぎて床の上をゴロゴロと転がった。これは一生の秘密で、誰にも言えない黒歴史だ。
「ま〜アタシも何でも良いと思うわよ?」
「そうなのかなぁ?」
「鏡花の考え過ぎよ」
せっかくだから、思い出に残る様な誕生日にしたい。あの時は楽しかったねって、将来笑い合える様なプレゼントがしたい。
いつも真君が私にくれるのは、幸せな思い出ばかり。それなら私もまた、それに相応しいお返しをしたい。
私に今出来る、最高の贈り物を考えたい。真君が心から喜んでくれる、素晴らしい時間にしたいから。
「あ、じゃあさ? こんなのはどうよ」
「え!? どんなの!?」
その後教えて貰ったプランは、拍子抜けするような意外と普通の提案だった。いや世間一般で見たらと言う話で、私が実践するとなると凄くハードルが高い。
確かに喜びそうではあるけど、私に相当な覚悟を必要とする。私……が、頑張るからね! 真君!
定期的に黒歴史作るなこの子