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3章 第108話 鏡花の価値

話数間違えていたので修正しました。108話が正しい話数です。

 漸くこの日が来た。文化祭当日の午後、自由参加枠のステージでアタシ達の出番が来る。中学からの友人と、今年新たに仲良くなった友人でバンド演奏をする。

 いつもの友香(ともか)の思い付きだったけど、結構面白そうだから乗っかった。それに、これで鏡花(きょうか)が正しい評価を受けるだろう。

 以前の事があったから、表立って鏡花を悪く言う生徒は少ない。だけどそれは、居ないと言う意味じゃない。やっぱり裏では見下して居たり、甘く見ている生徒達は依然として存在する。


 それがアタシは気に食わない。あんなに良い子で、魅力的な所もちゃんとある。だから真が惚れ込んだし、自分もこうして対等な友人として過ごしている。

 友達を悪く言われて、黙っているほど大人しい人間じゃない。けど見えない所でやっている相手にまで、言い返したりするのは難しい。

 そんな中で最高の材料が見付かった。鏡花の歌が、かなりハイレベルだった事だ。ただちょっと学校帰りに寄っただけの、単なるカラオケで披露されたそれは高校生の域を越えていた。


 多少なりとも歌が上手い生徒なんて、全国に幾らでも居るだろう。でも鏡花の歌唱力はそんな次元じゃない。確実にそれでお金が稼げるレベルにあった。

 ミリオンセラーとまでは言わなくても、歌い手としてネットで稼げる領域には居た。事実として、以前に上げた鏡花のカラオケ動画は今も再生されている。

 うちの学校の生徒も、大体は把握している例の動画だけど信じない者もいる。確かに姿を写しては居なかったから、別人説を唱える生徒が出るのは仕方ない。


 そんな時に友香がバンドなんて言い出したのは、実に好都合だと思った。ならば今度は、皆の前でこれが鏡花だと見せれば良い。

 まあ、本人の意思で姿自体は見せないけれど。けど、もうこれで下手な言い逃れは出来ない。認めるしかないんだ、()()()()()()()()()()だと言う事実を。


「ほんで結局バンド名は決まらんかったんやけどな、まあそれなりのもん見せたるからな〜!!」


「「「はははは」」」


 やっぱりこう言うMCを任せるなら、友香が向いている。関西出身だからか、人前で笑いを取ったり盛り上げたりが上手い。彼女が友人として居てくれるのは心強い。全てを安心して任せる事が出来る。


「ほなメンバー紹介な! 先ずはギターの神田小春(かんだこはる)や」


「やっほ! 皆よろ〜!」


「ほんでドラムの結城佳奈(ゆうきかな)


「よろしくお願いしまーす!」


「で、ウチがベースの水島友香(みずしまともか)や」


 ここまでは良い。それぞれの担当楽器を鳴らしつつ、紹介して行く良くあるパターン。しかしここからは違う。ある意味で私達の特徴とも言えるオリジナリティ。鏡花だからこその、このスタイル。


「3人だけに見えるやろ? 実はまだおるねん」


 このバンドの一番の売り、注目すべき相手はステージに居ない。体育館の舞台袖、音響機器や緞帳を操作する見えない位置に隠れている。

 大勢の前に立つのは絶対に無理だと主張する、小心者な彼女らしい在り方。しかしこうして、バンド演奏をすると言う勇気は持てる鏡花だから取れる形。後ろ向きだけど前向きなのが、実にらしいなとアタシも思う。


「ボーカルの佐々木鏡花(ささききょうか)は、恥ずかしがり屋なんで袖に隠れとる」


「よ、ょ、よろしくお願いします!!」


 友香のいつもの明るいノリで、まあまあ好意的に受け止められた。会場が爆笑とまでは行かずとも、そこそこ受けているので掴みは良し。そう、ここからが本番。ここから始まる、鏡花のお披露目タイム。


「まあでもな、わろてられんのは今だけやで?」


 さあ、魅せてあげなよ鏡花。()()()()()()()()()。ただの平凡なだけの女じゃないと。葉山真(はやままこと)に、相応しいだけの価値があると魅せてやれ。アンタの価値が分からない連中に、ここで分からせてやれば良い。


「♪〜〜〜」 


 最近流行った、現役女子高生が歌う流行歌。高校生なら大体知っている、学生の視点で作られた歌詞。元のアーティストとは違う、鏡花だから出せる柔らかさ。

 ストレートな歌詞なのに、どこか柔軟さを感じさせる歌声。普段の少し高めな彼女の声は、曲に合わせて変化している。普通の人間には無い、幅広い高低の音域。鏡花の上手さの本質はそこにある。



 小春達の前に出演していた、体育会系男子達の『ガチ組体操』なる演目が程よく滑っていたのも手伝いステージのハードルが低かった。

 そこに色んな意味で注目を集めていた4人組が、バンドとして登場したのだ。元々告知の段階でそれなりに注目されていたが、いざ舞台に立つとやはり盛り上がる。

 観客に居るのは、単に小春や友香を目的に来た生徒や、お祭り好きの生徒達。噂好きの生徒達は、最近話題の生徒を観に来ている。

 そして、一部で噂の鏡花や佳奈を値踏みに来た者達も居る。そんな様々な生徒達の前で披露されたのは、ただの生徒としてはかなりハイレベルの歌唱。


 もちろん演奏の方も、かなり本格的だ。やはりギターとベースが美少女と言うのも大きい。ステージ映えと言う点では、少々卑怯とも言えよう。

 それだけでなく、吹奏楽部で日々鍛錬していた佳奈のドラムも迫力十分。美少女コンビと平凡コンビの4人組が、体育館に集まった多くの生徒を沸かす。

 様々な目的で来ていた、沢山の生徒の関心を掴み取る。小春や友香目当てに来た男達も、今や鏡花の歌声に夢中となっていた。



「な? 言うたやろ? なぁ、鏡花出てこんか?」


「む、無理無理!」


 一曲目が終わり、小休止を兼ねて友香がマイクを取る。どうやら最初の1曲目で、十分皆に届いたらしい。佐々木鏡花と言う女の子の、とても素晴らしい魅力に。

 アタシとしても、友達を自慢出来てそれなりに楽しい。これは本当にやって良かったな。ま、流石にこのままずっとバンド活動は疲れるからごめんだけど。


「よっしゃ! ほな次行くでー!!」


 さあ、一緒に楽しもうよ、キョウ。

書きたかった話第2位が投稿出来ました。なお、某ひとりちゃんが主人公の作品とは何ら関係ありません。


時期的にそう見えてしまうと思います。ですが実態としては、文化祭でバンドは定番だからやった、程度のものです。どちらかと言えば歌が上手い設定の方がメインなので。

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