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3章 第106話 卓也side『ゆうべはおたのしみでしたね』

 学校の設備点検と、清掃業者による清掃の為に本日は部活及び居残りは禁止されている。たまには良いかと(まこと)達に誘われてファミレスへ。

 中学からの友人の翔太(しょうた)と、高校になってから知り合った恭二(きょうじ)も一緒だ。何だかんだで、このメンツが揃うのは久しぶりじゃないだろうか。

 真の引退事件があってから、何となく気不味い雰囲気があったから。個別に会う事はあっても、こうして揃う事は稀だった。


 それがどうだ、気付けばあの女嫌い疑惑すら浮上していた男が、見事に彼女持ちとなって戻って来た。

 そうかと思えば残る2人もいつの間にやら、各々恋人を作っているんだから驚いた。聞けば2人とも、佐々木さんの友達と付き合い出したらしい。

 まるで合コンでもしたのかと言う状況で尚更驚愕した。これは真達が美味しく頂いたのか、それとも逆なのかどっちなんだろうな。


「なぁ〜翔太サッカーやれよ」


「遊びならね。部活はラクロスで良いよ」


「そう言うなよ〜。冬の大会に出てくれ」


「なんだよタク、またやってるのか?」


 バレー部の恭二は、同じバレー部で共通の友人と同じくタクと呼ぶ。今ここに居る3人それぞれが、別々の呼び方をするのだから少し不思議な気分だ。

 と言うか誰であれ頑なに苗字で呼び続ける翔太が、他の奴等と違って少し独特なだけでもあるが。

 ん? そう言えば、何だか真が随分静かだな。友香(ともか)みたいにやたら喋るタイプでもないが、この話題で入って来ないのも珍しい。


「何だ真、どうかしたのか?」


「……あぁ、すまん。寝不足でな」


「珍しいな? バイトか?」


 真は昔から生活リズムがしっかりしている。健康管理も選手の努めだと言って、夜更かしの類は殆どやらない。

 部員の中には遊び呆けて試合の当日に体調不良なんてヤツも居るが、この男は絶対にそんな事にならない。

 だからこそ信用が置ける相棒だった訳で。そんな真が寝不足になるとしたら、最近やっているらしい短期バイトぐらいしか心当たりがない。


「いや、そうじゃなくてな」


「だったら何だ?」


「まあその……鏡花(きょうか)が中々寝かせてくれなくて」


 寝不足故にだろう、普段なら濁す様な話をこうも堂々と話すとは。それにしても信じられるか? あんなに恋愛よりサッカーだと言い切って居た男が、彼女が寝かせてくれなくて寝不足?

 何ともまあ、人は変わると言うが変わり過ぎだろうに。人生で初めて彼女を持った男が、数ヶ月でプレイボーイみたいな事を言い出しましたよ。


「はぁ? 真んちに佐々木が泊まってるのか?」


「お前は声がデカい! 気を付けてくれよ恭二」


「悪い悪い、ついな」


 確かにまあまあなデカさの声ではあった。他の客に聞かれたからと言って、それでどうなる事も無いとは思うが。ただあんまり他人に聞かせる話でもない。それはそれとして、気になるのは確かだ。


「で、どうなんだよ?」


「いやまあ、偶にだよ。バイト帰りにな」


 数々の女子達から告白を受けても即お断りだったあの真が、今や彼女を自宅に連れ込む日々とは恐れ入る。本当に凄い変わり様じゃないか。

 それに佐々木さんもああ見えて、中々に積極的なんだな。殆ど親が居ないんだから、お互い好き放題出来るだろう。そこはちょっと羨ましい部分だな。

 普通の家庭では中々出来る事じゃない。確か真の母親は、最近もドラマや映画に出て居るから暫く帰って来ないだろう。男子高校生としては、正に理想の家庭環境だ。


「な、なぁ。少し聴きたいんだが」


「随分と声が小さいね葉山?」


「そう言う話題なんだよ! あんまり他人に聞かれたくない」


「なるほど、そっち系ね」


 これは多分、シモ系の相談だろう。真は佐々木さんとのそう言う話は、可能な限り極力隠す。他の男に彼女のアレコレを、聞かれたくないのも分からなくはない。

 ただそれにしても、少し真は独占欲が強い様に思う。気にし過ぎと言うか何と言うか。まあコイツの望みだから、その方向性で対応するけど。


「思ってたより大変じゃないか? その、そう言う事をするの」


「大変って、具体的に何がだ?」


「体力的な問題だよ。まさかこんなに体力が必要とは」


「そりゃ大変っちゃ大変だが、言うほどか?」


 分からなくはないが、そこまでキツイと思った事はない。どちらかと言えば、正しいセックスの仕方を知る方が大変だった。

 AVは当てにならないと聞くが、本当にその通りで最初は中々苦労した。色々と(あずさ)に教えて貰わなければ、知らないままだった事は多々ある。

 エロ漫画の方も、結構なファンタジー要素が含まれるので同様だ。そっち方向の話なら分かるが、体力的な問題であればそれほど苦労した経験はない。


「翔太と恭二はどうだよ?」


「俺は別に?」


「僕もそこまで疲れないな」


「やっぱ体力作りしないとか? 衰えてるんだなきっと」


 それは確かにそうだが、球技大会や体育祭を見る限りだと十分な体力があった様に思う。あれだけ走れていて持久力も健在なら、衰えたと言っても多少の筈だ。

 わざわざ性行為の為に、今から体力作りをする必要は感じない。真や佐々木さんが余程特殊なプレイをしても居ない限り、そんな事にはならないんじゃないだろうか。……待てよ? もしかして。


「なあ、参考までにどれぐらいする? 一晩で」


「え? そうだな。昨夜は5回かな」


「ん? 一晩だよな?」


「そうだけど?」


 あ、あ〜ね。そう言う事かよ。平日の夜、一晩だけで5回ってお前。どんだけするんだよ妊活中なのか? そう言いたくなる気持ちを何とか抑える。

 きっとそんなつもりは無いだろうし、2人はきっとそれが普通なんだろう。これまで聞いて来た情報からすると、佐々木さんも中々だな。

 あんなに小さくて大人しいのに、案外そっちは違うらしい。人は見た目で判断出来ないと言うが、これは中々にまあ。

 少なくとも俺は、一晩で5回もするのはキツイ。そりゃあ寝不足にもなるだろう。と言うか、応えてる真も真で結構アレだな。まあその……お熱いですねとしか。


「え? 何だよ? どうした?」


「ああいや、気にするな。頑張れよ」


「おう? そうするよ」


 また走り込みするかと意気込む真から、それとなく視線を逸らす俺達。そうだよな、お前らもそう思うよな。流石にやり過ぎだよな。

 一晩で5回もしたら腰がバグるわ! と言うツッコミを心にしまった俺達は、温かい目で真を応援する事にした。やっぱ、チームワークって大事だよな。

10代って超元気ですよね……今はもう……

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