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3章 第104話 お酒には注意しましょう

 軽率にあちこち出歩けない高校生カップルにとって、土日の様な休みの日は非常に貴重だ。そんな中で、土日月と3 連休になった10月の3週目はこの上ない好機。

 土曜日は小春(こはる)達と過ごした鏡花(きょうか)だったが、日月と2日続けて(まこと)と2人の時間だ。当然ながら本日、日曜日の夜は鏡花が泊まって行く。

 いつもの様にブラブラとお出掛けデートをした後に、2人で仲良く葉山家(あいのす)へと帰って来た真と鏡花。

 ここからの時間は、本当の意味で2人きりで過ごす特別な幸せタイム。と、なる筈だったのだが。


「よ! お二人さんおひさ〜」


「さや姉!? 何で居るんだよ!?」


「いやさ〜叔母さんに頼まれてさ」


 俺達が帰宅したら何故か家に従姉であるさや姉こと竹原沙耶香(たけはらさやか)が居た。これから鏡花とまあその、何と言うかこう恋人ならではの時間だった筈なのに。

 これではそう言う訳には行かなくなる。普段は東京に居る筈の従姉が、何やら母親に頼まれて来ているらしい。タイミングがあまりにも宜しくない。

 せっかくの連休、せっかくの鏡花が泊まって行く日だと言うのに。……おい待てよ? まさかと思うが、さや姉が泊まって行くとかそんな話じゃないよな?


「な、なあ、今日帰るんだよな?」


「え? なんで? もう飲んでるから無理よ?」


「マジ……かよ……」


 夏休み振りの最高の機会だったと言うのに、酒飲みの従姉が示した先には空の缶ビールが数本転がっていた。

 思わず崩れ落ちる俺の気持ちなんて知らずに、カラカラと笑いながら鏡花に話し掛けている従姉が恨めしい。ああ、こう言う人だよなこの人って。

 最近はあまり来て居なかったから、忘れ掛けて居たさや姉との再会。昔からこうして、的確に邪魔して来る人だった。


 狙ってやっているのではないし、悪意も無いから邪険にも出来ない厄介さ。ここに小春が居ないだけでも、多少はマシと思うしかない。

 小春はさや姉の信奉者と言うか、仲の良い姉妹みたいな関係だから2人揃うと勝ち目がない。それを思えばまだこの状況はマシ、なのか?


「佐々木ちゃん元気してた〜?」


「あ、はい。元気です」


「コイツちゃんと告白した〜?」


「ま、まあまあ! そんな事よりホラ飲めよ注ぐから」


 不味いこれは非常に危険だ。酒も入ってテンション高めなさや姉が、秘密にしていた交際中と言う事実を知ったら何を言い出すか分からない。

 色々と知られている上に、今まで恋人を作らなかった俺に出来たとなれば大いに盛り上がるだろう、1人で勝手に。それはもう盛大に。

 あまりにも厄介過ぎる存在に、頭を抱えて蹲りたい気分だがそうも言っていられない。この厄介な従姉(よっぱらい)をどうにかしないと。


「あっ、それについてはその、上手く行きました」


「ちょっ、待て鏡花!?」


「お〜〜〜! そっかそっか〜例のアレは上手く行った?」


 いや本当に待ってくれよ!? 知らない内にさや姉が鏡花に何やら吹き込んで居たのか!? 何の話をしたんだよ!?

 接点はGWのあの時しか無い、んだよな? まさか連絡先を交換してやり取りしてるとかじゃないよな? だとしたら厄介過ぎるぞこの従姉様は。


「教えて頂いたお陰で何とかなりました!」


「そかそか〜やっぱ真みたいな頭だけは固い奴はアレに限るよね〜」


「待ってくれ何の話だ!?」


 ヤバイ、想像以上に鏡花がさや姉の影響を受けている。さや姉の影響を受けると皆小春みたいになって行くんだから、これ以上増えて欲しくない。

 友香(ともか)水樹(みずき)も、少なからず影響を受けている。そのせいで見透かしたかの様に、色々と即バレする事があるから困る。

 ただでさえ最近の鏡花は、厄介な美少女3人衆の影響が出ていると言うのに。小春みたいに小言を、逐一チクチク刺して来る鏡花なんて見たくない。


「さや姉、鏡花に何を吹き込んだんだ!」


「え〜ただの恋愛指南よ? ビビって手を出せないチキン野郎の攻略法をね」


「誰がチキン野郎か!!」


 ほらコレだよ、本当に厄介過ぎる。何で分かるんだよ、付き合う前だぞ鏡花とさや姉が会ったのは。…………いや別に俺から行かなかったのは、チキンハートを発揮したんじゃないけどな。

 やっぱそれはさ、誠意って言うか女の子のデリケートさに配慮したって言うか。そう言う事をしたい気持ちと、常識とかデリカシーとかを戦わせた結果だからな。

 ビビってなんか居ないからな、俺は簡単に手を出す様なチャラ男とは違うってだけだ。そう紳士的な判断と言うか、理性的な選択をしたまでだ。


「真はさ〜すぐ格好付けたがるからね。いちいち面倒なのよ」


「何の話!? 勝手な事言わないでくれよ!」


「佐々木ちゃんもさ、積極的にね? こいつは行動が遅いからね」


「な、なるほど。具体的には?」


 最悪過ぎる展開だ。もう鏡花はさや姉を参考にすべき人間と捉えている。終わった、俺はもう鏡花の尻に敷かれる運命。…………ん? それは別に問題ないのでは? 

 俺が優先権握りたいと言った思想はない。鏡花が居てくれればそれで良いのだから、そうなったとて何ら問題はない。

 と言うかそれはつまり、鏡花と結婚している未来なのだから望む所ですらある。大体尻に敷かれると言っても、鏡花のお尻は小ぶりで可愛い


「じゃ、じゃあそんな時はどうしたら」


「ま〜ま〜落ち着きなって。お姉さんに任せないな」


 ヤッバイ、変な想像をしている間に話がどんどん進んでいる。大体なんだよ、男が浮気してるか判断する方法って。するわけ無いだろ俺が浮気なんて。

 鏡花一筋で生きて行くよ俺は。実際鏡花以外の女の子と、そう言う関係になりたい気持ちは一切ない。美人とか可愛いとか、一般論として判断はつくがそれだけだ。


 ん? あそこに転がってる酒瓶は、母さんが良く飲んでる日本酒だよな。ビールだけじゃないのかよ。いつから飲んでたんだよこの酒好きは。

 あれ? じゃあ、鏡花の前にある透明な飲み物は酒って事に……


「待て鏡花!! それは水じゃない!!」


「……へ?」


「アハハ〜それ日本酒だよ佐々木ちゃん」


「…………わぁ〜~何かポカポカする〜エへへへ」


 この後、酔っ払い2人を相手にする事になったのは悲劇だったと言うか。幸いにもさや姉がリビングで泥酔していたから助かったと言うか。

 一口飲んでしまっただけの鏡花は、アルコールに酔ったらどうなるかこの日判明した。普段の3割増ぐらいに、物凄く積極的と言うかストレートに言えば魅惑的でした、はい。

鏡花ちゃんはお酒に弱いタイプです。

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