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3章 第103話 布教活動は大事

 今日も今日とてバンドの練習、の前に4人でティータイム。と言う名の個人的布教活動の真っ最中。

 この前、(まこと)君と2人で来た最高の空間『DOG CAFÉ MOCHA』を小春(こはる)ちゃんと友香(ともか)ちゃん、そしてカナちゃんを誘ってみた。

 小型犬を嫌いな人なんて滅多に居ない筈だし、特にこれと言ったアレルギーも無い3人なので提案したら来てくれた。


 ちなみに水樹(みずき)ちゃんは猫アレルギーらしく、猫カフェに行けないらしい。なんて悲しい事だろう、猫ちゃんと触れ合えないなんて。

 水樹ちゃん自身は動物好きなので、大いに嘆いていた。そんな悲しみを背負った水樹ちゃんの話はともかく、今はワンコ達を愛でよう。


「別に良くない? アタシら文化祭でやるだけだし」


「せやけど、あった方が良いんちゃうか?」


「バンド名か〜鏡花ちゃんはどう?」


 あぁ〜〜今日もサクラちゃんは可愛いね! 最アンド高! どうでしょうかこの撫で具合は。膝の上は居心地どうですか?

 今日も可愛いなぁ〜サクラちゃん、ワンコは良いね! ただ、相変わらず甘噛が絶えない。そろそろペロペロに移行してくれませんかね?


「アンタ満喫し過ぎやろ」


「ま、確かに可愛いわね。サクラちゃんよろ~」


「あっ、ご、ごめんつい」


 いけない本題をどこかへやってしまっていた。バンドをやるからにはバンド名が必要なのでは? と言う私達4人が抱える問題について、話し合うのが今日の目的。

 バンド名かぁ、正直ネーミングセンスに自信がないので役に立てるかどうか怪しい。クソダサバンド名を世に出してしまったら黒歴史過ぎる。

 無駄にドイツ語とかラテン語を使いがちな、テンプレ厨二病精神をしっかり抑えなければ。


「先ず語感は大事やんな。悪いと覚えて貰えん」


「目玉は鏡花ちゃんだし、鏡花ちゃんにクローズアップする?」


「えぇ!? 嫌だよ、私の要素無くて良いよ!」


 ただでさえ目立つポジションなのに、これ以上注目される要因は必要ない。そもそも私らしい要素なんて入れたら、クソダサバンド名待ったなしだよ。

 ミジンコガールズとかモブの極みとか、そんな変な名前になる道しかない。そんな事をするぐらいなら、適当なそれっぽい花の名前とかにした方がマシだと思う。

 デルフィニウムとかカンパニュラとか、語感だけで良いなら図鑑でも読めば幾らでもある。それっぽい名前も簡単に見つかるだろうし。


「キョウの要素なら、フラワーミラーとか?」


「ん~まあ、語感は悪くないわな」


「良くないよ!? ただの家具だよ!?」


 そんなネット通販でいつでも買えそうな名前はダサ過ぎると思います! 無理に私の要素を入れなくて良いんだよ。

 フレームが花の形をしていたり花柄だったり、そんな鏡の総称がたまたま私の名前と一致するからって、何もそれをバンド名にしなくても。そりゃあ何でその名前を? って言いたくなるバンド名も沢山あるけれども。


「私だけじゃなくて皆の要素入れようよ! 共通点とかさ」


「共通点なぁ、何かあるかいな?」


「え~そんなのあるかなぁ?」


 私だけをフューチャーされるのは恥ずかしいので、皆を巻き込む方向にしたのは良いけど何があるだろう?

 ぶっちゃけ小春ちゃんと友香ちゃんに対して、カナちゃんと私はかなり違う。メインヒロイン枠と背景のモブぐらい大差があるわけでして。

 外見や背格好で考えれば身長は低めって事ぐらいか。小春ちゃんだけが飛び抜けて高いから、4人の共通点とは言えない。

 所謂ガールズバンドってヤツだから、女性っぽい名前の方が良いだろうか。厳ついよりは可愛い方が良いよね、少なくとも。平凡モブ女とて、どうせなら可愛い方が嬉しい。


「アタシ達、全員名前にカ行が含まれるとか?」


「それで何か思い付くんか?」


「うーん、カ行変格活用?」


「カナちゃん、それはちょっと」


 微妙にありそうなラインなのがまた何とも。居そうだよねそんなバンド。文系大学生とかが名乗ってそうな、絶妙に滑ってる感が凄い。

 私達、カ行変格活用です! とかちょっと名乗りたくない。まだフラワーミラーの方がマシじゃないかな。


「お、何だいお前は? ほれほれ〜」


「小春、真面目に考えてや」


「え〜だってアタシは別に無しでも構わないし」


 あんまり興味が無いらしい小春ちゃんは、近付いて来たトイプードルと遊び始めた。あれは確か、ハルト君という男の子だ。

 トイプーも可愛いよね、あのモコモコ感が実に良きかな。トイプードルもヨーロッパの犬で、原種は泳ぎがとても得意とか。そのお陰で、鴨猟に同行していたらしい。 

 パピヨンと似たような歴史を生きて来た犬種だ。どうしてもシェパードみたいな大型犬が狩猟で使われがちなので、小型犬は全て愛玩動物と勘違いする人も居る。

 しかし意外と小型犬であっても、猟に出ていた子達は少なくない。まあそんな逞しい過去があろうと、可愛い事に変わりはないけど。


「ウチにもトイプー触らせてや」


「良いわよ、ほい」


「わぁ〜鏡花ちゃん見て見て、可愛いよ!」


 結局ドッグカフェ本来の楽しみ方に移行した私達は、可愛い小型犬達と楽しい時間を過ごした。バンド名については、一旦保留と言う事で。変な名前じゃなければ、もう何でも良いかな。


 そして本日の学びと言うか教訓ですが、他の犬と散々遊んでからサクラちゃんを撫でるのはダメらしいです。

 お嬢様は嫉妬して拗ねちゃうらしいです。いつもより激しめに、手をガブリと齧られました。私にはそんなに沢山、お肉は付いてませんよお嬢様。

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