3章 第98話 蝶の様な君
何と最近になって、家からそんなに遠くない場所にドッグカフェが出来ました。犬派の私としては、是非とも行ってみたい。
家では飼えないので、そう言った施設に憧れがあった。SNSでは良く犬関連の動画を視聴するし、チャンネル登録もしている。それぐらいには犬が好きなので、これはもう行くしかない。
しかも、私が好きな小型犬専門らしい。実に素晴らしい事だと思う。定期的に通ってお金を落とさないとね。せっかく近くに出来たのに、潰れたら困るからね。
「おはよう鏡花」
「おはよう真君! 早く行こう!」
「随分と前のめりだな。珍しい」
だって、私が好きな犬種が居るんだよ。もう楽しみ過ぎて昨夜は犬の動画ばかり観ていた。そのせいで若干睡眠不足だけど、ワンコ達の為なら全然平気。私はまだまだ頑張れるよ。
「私の大好きなパピヨンが居るんだよ!」
「パピヨンって、チワワみたいな犬だっけ?」
「む、違うよ真君! パピヨンとチワワは全然違うんだよ!」
チワワみたいな犬、それは良く勘違いされるパピヨンの悲しい現実。外見上は特徴的な耳が似てはいる。だけど、発祥は全然違う犬種だし原産国も違う。
途中でチワワとの配合もあったらしいけど、根本的には別の犬。チワワの方が日本で人気が高いから、似たような犬だと思われがち。チワワは愛玩動物だけど、パピヨンの血統は狩猟犬なんだけどね。
原種とされる犬はヨーロッパで飼われていたらしく、主に貴族が好んでいたと言われている。あのマリー・アントワネットも飼っていたと言うのは、パピヨン好きなら知っている有名な話。
非常に賢くて明るい性格なので、野鳥の狩りにおいて狩猟犬として活躍していたと言う説がある。実際に運動が凄く得意な犬種だから、ドッグスポーツで大活躍していたりする。
あまり知られて居ないけど、日本では警察犬としても活躍している。今も継続しているのかどうか分からないけど、京都と北海道で採用された実例もある。
そんなかつては多数の王侯貴族のハートを掴んだ、高貴で聡明なワンコなのだ! カワイイ! 偉い!!
「そ、そうなのか。その知識も本で?」
「そうだよ! 昔から好きなんだ!」
「あ〜確かに言われてみたら全然違うな」
スマホで画像検索をした真君が、見比べてみて理解したらしい。そうそう、このフサフサで美しい耳の毛が良いんだよね。
犬初心者にも向いているから、いつか飼ってみたいなぁ。目茶苦茶活発だから、散歩でヘロヘロになるかも知れないけど。
「で、この店がそうなんだ?」
「そう! 早く入ろう!」
外観は綺麗な茶色い木造風で、所々に植物のツタや葉を散りばめた自然を感じさせる建物。良くあるオシャレな喫茶店を思わせる佇まい。
既に開店しているけど、予約制だから焦る必要はない。2時間毎に枠が用意されているので、その中から好きな時間に予約を入れる。あとは時間までに来店していればオッケー。
5分前に到着した私達は、店員さんに予約時に発行された予約番号を見せて待機。時間が来たら先に楽しんで居たお客さん達と、入れ替わりでいざワンコゾーンへ!
「うわぁ!! 凄い! 可愛い!!」
「へぇ〜結構広いんだな」
「走ったりするからじゃないかな?」
犬や猫にストレスは厳禁だからね。そのせいで病気になったりするらしい。多分予約制なのも似たような理由じゃないかな。無尽蔵に人間を入れて揉みくちゃにされたら、大人しい子達が疲れちゃうだろうし。
「居た! サクラちゃんだ!!」
「サクラちゃん?」
「この子の名前だよ!」
私のお目当て、綺麗な茶色に白が混じった美しい毛並みのパピヨンの女の子。つぶらなお目々があまりにも可愛すぎる。
スラッとした体が、フワフワの毛に包まれているのも良い。これが本物、画面の向こうじゃない実物のサクラちゃん。ホームページで観た時に、一目惚れした女の子。
「触っても良いですか?」
「どうぞ、構いませんよ」
「よーし! サクラちゃん、初めまして!」
近くに居たスタッフのお姉さんから、オッケーを貰ったのでいざ。挨拶がてらにフワフワの背中を撫でてみる。
おお………………これが本物のパピヨンちゃん。細身だけど毛は多くてサラサラだ。ちょっと高めの体温が掌から感じられる。ここが天国ですか? 私ここに住みます。
「あ〜これはもっと撫でなさいの顔ですね。お嬢様気質なので」
「そ、そうなんですね。よーし、頑張るぞ」
この見た目でお嬢様気質とか、最高に良いじゃないですか。完全に私得だよね。お嬢様、鏡花がお世話させて頂きます! これで如何でしょうかお嬢様!
「結構可愛いな、こうして見ると」
「でしょ! 真君にもパピヨンの良さが分かった!?」
「運動が好きって所が良いな」
そうなんだよね! こんなに小さくてハイソな雰囲気なのに、好奇心旺盛で運動が大好き。そう言うギャップも推せるポイント。しかもサクラちゃんはお嬢様、なんて可愛い子なんだろう。
「お? 何だ、結構人懐っこいな」
「あ〜〜良いなぁ〜〜」
真君がサクラちゃんにペロペロ手を舐められている。目茶苦茶羨ましい。私もペロペロして下さいよサクラお嬢様!
「アハハ。この子、イケメンにはすぐ懐くんですよね〜」
「そ、そんな……」
「そう言えば、動物には良く懐かれるな」
私はまだ下積みからスタートなのに、真君は最初から好感度が高い所からなんて。人間の女性だけでなく、犬の女の子にも人気とは恐れいる。これが本物のモテる人間の力なんだね。
「真君、体を貸して?」
「急にサイコパス!?」
「フフフ。これからオヤツの時間ですから、あげてみますか?」
「やります!!」
サクラちゃんにジャーキーをあげてみたり沢山構ってみたりして、何とか帰るまでには認知して貰えた。
幸いにも他のお客さんは目当てが別の子だったみたいで、真君と2人でたっぷりサクラちゃんと遊ぶ事が出来た。
でもサクラちゃん、何故に真君はペロペロで私はガブガブなんでしょうか?
昔飼っていたパピヨンを性転換して登場させました。
王子様な気質なのに、若い女性に「可愛い~」って言われたら超絶露骨に媚びてました。
ちなみにサクラちゃんの中では
真>自分>鏡花の上下関係です。