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最重要クエスト 特依

 少し他国のギルドマスターを甘く見ていたみたいだ。まさかここまで情報収集に長けているとは思わなかった。ルーカスがあんな自由な感じのギルマスだったからそれを基準にしてしまっていた。

 ハザクはイーファに興味があるみたいだった。それは強さを求める武人のものなのだろう。いつもだったら、立ち合いの機会を与えて、ハザクの実力を測りたいところだが、今はそれどころではない。


「ハザクさん、今回の件が終わったら、お互いのギルドで交流試合をするのはいかがですか?」

「それはいい! 是非お願いしたい!」


 早まったか···。めちゃくちゃ乗り気じゃないか。しかも本人が参加しそうな勢いだ。とりあえず今は事件のことだけに集中しよう。


「ハザクさん、事件の話にもどってもいいですか?」

「これは申し訳ない。つい、冒険者の血がさわいでしまって。確か王城の地下に研究所みたいなところがあるという話だったかな?」

「はい。人体実験のことが本当ならすぐにでも動きたいところですね。警備が厳重なのでそこが問題ですね」

「そうですね。一度見つかれば戦いは避けられないでしょう」

「地下への潜入はこちらでなんとかなりますが、救出の人数がどれくらいになるかで行動が変わってくると思います。僕らの中で想定しているのは3つ、


・地下救出戦


・王国軍戦


・冒険者ギルド本部戦


 になります。

 少なくとも王城に全て集まらないようにしないといけません。僕たちも3つの部隊に分かれて行動しようと考えています」


 別に全部集まって来てもこっちにはイーファがいるから何とかなりそうな気もするけどね。ただその場合は加減が難しくなるから死傷者が出る可能性が高くなってしまう。それだけは何としても避けたい。

 一番被害が少なく済みそうなのは、ちゃちゃっと救出してとっととこの国から立ち去ることだろう。

 しかし、オクロスの事件自体を終わらせるには国王軍との戦闘は避けられないだろう。ん-悩む。


「レン殿、(とら)われた者を全員救出することは可能ですか?」

「全員救出することは可能です。ただし、逃げ出す際に王国軍と戦闘になるのは確実です。事件に王国が関与していた証拠がなければ国際問題に発展することになると思います。僕もれっきとしたエルミナ王国の一員なので」

「救出が出来るなら問題ないです。(とら)われている人の中に全ての(かぎ)(にぎ)っている人物がいるはずです。その人さえいれば、現国王を断罪できます」

「その人はどういった方なんですか?」

「反国王派の最大派閥であるオルクライン公爵のご令嬢です」

「!?」


 ハザクの言葉にユリベラが反応した。

 なるほど、そういう事か。ユリベラが言っていたリーダーというのが誰か分かった。ハザクが言っていることが本当なら、救出作戦さえ何とかなれば事件解決につながるかもしれない。国王相手にどうしようかと思っていたがこれで何とかなりそうだ。

 まあ念のためその対策の手も打ってあるし大丈夫か。国際問題は国のお偉いさん同士でやってもらわないとね。


「ハザクさん。冒険者ギルドパルティア支部に正式に依頼したいことがあります」

「何でしょう?」

「僕の家族や罪なく(とら)われている人たちを助ける為に王城を出るまでの護衛をお願いできないでしょうか?」

「それは我がギルドがレザリア王国と敵対しろと?」

「いえ、ただ平和な生活を願っている人を守って(・・・)欲しいと言っているだけです」

「······。フィーリア、クルーノくんを呼んできてくれ」

「は、はい、すぐに」

 

 ハザクの指示でフィーリアが()け足でクルーノを呼びに行った。ハザクはその間一言も発しなかったが、すぐにクルーノがやってきた。


「お待たせしました」

「クルーノくん。仕事だ。すぐにパルティア支部に登録されている冒険者を全員招集してくれ。来なかった者は登録を抹消すると伝えくれてかまわない」

「え···、今すぐ全員ですか?」

「私も出る。特依(とくい)だ」

「わ、わかりました! すぐに招集します!」


 特依(とくい)とはパルティア支部の業務用語で、ギルマス案件の最重要クエストを意味する。普段から緊急時用のマニュアルみたいなのが出来ていたのだろう。その一言で事の重要性が理解できたらしい。クルーノはすぐに部屋を飛び出していった。ユリベラも特依の発令に(おどろ)きの顔を隠せなかった。


「レン殿、その依頼、冒険者の名にかけてこのハザクがお受けします」


 さすがギルマス、(いき)なまねをしてくれる。


「ありがとうございます。僕らも全力でエルミナの冒険者ギルドの力をお見せしますよ」

「それは楽しみです」


 こうして、俺が異世界に来てからずっと姿が見えなったオクロスとの直接対決が始まろうとしていた。

 しかし、そこでルカから重要なことを知らされることになる。


「し、師匠···、伝え忘れていたのですが···」

「ん? どうしたの?」

「シャルのやつ、ベレンさんからもらったあれを持っています」

「······え」


 シャルよ。頼むからおとなしくしといてくれ···。

 このあと、俺の願いもむなしく、救出作戦は直前で大きく変更せざるを得なくなるのだった。

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