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勇者降臨? ②

 会合を行っていた場所は騒然(そうぜん)としていた。遠隔通信(マクリノス)での連絡が途絶えてから1時間以上は経過していたからだ。


「おい、まだ連絡はつかないのか?」

「···はい。悲鳴を最後に何度呼び掛けても返事がありません」

「本当に全滅したというのか···」


 そう言ってユリベラが俺の方を見た。


「レン···、君はさっき忠告をしてくれたけど、相手に心当たりがあるの?」

(だから最初から言ったのに。)


 状況がひっ(ぱく)し、たまらず俺の言葉を信じ始めたようだ。

 

(さら)われた子はエルミナの王都に住んでる子で、今それを追ってきているのはエルミナのAランク冒険者です」

「エルミナの? だったら応援部隊にBランク冒険者がいたはずだから全滅なんてありえない」


 ユリベラも他と同じように、エルミナの冒険者の評価が低いみたいだ。認識的には良くてランクCぐらだと思っているのだろう。しかし、今のエルミナの冒険者はそんなに弱くない。ルカは焔とイーファに次ぐ高ランク冒険者の一人だ。一個師団でも用意しない限り止めることはできない。


「···私も向かう。手が空いてる者はついてきて」


 ユリベラが準備を始めていると街の中が騒がしくなっていた。様子を見に行ったメンバーが戻ってきて報告を始めた。


「今、街の外で賊が暴れているらしいです。たぶんファルムたちをやったやつです」

「なんだって!?」

「今冒険者ギルドも動き出しています。賊がファルムを人質に取ってるらしく、何か要求しているみたいです」


 おいおい、一人で乗り込んで来るってルカらしくないぞ。いや、ルカらいしといえばルカらしいか。なんていったって(さら)われたのがシャルなのだから。でも今のタイミングで冒険者ギルドが動くのはあんまり好ましくないな。


「ユリベラさん。僕たちも一緒に行きます」

「すまない。それは助かる」


 多分並みの冒険者じゃルカを止めることはできないだろう。ルカの力がレザリアの冒険者にどれだけつうじるか見てみたいところだがそんな悠長(ゆうちょう)なことは言ってられない状況だった。

 俺達はすぐに現場に向かうことにした。




 (さわ)ぎは街の外で起きていた。すでに何人かの冒険者が倒れていた。冒険者とルカが話しているのが聞こえる。


「だから僕は賊じゃないって何度も言ってるじゃないですか」

「だったら背中の亜人はなんだ! それにお前が引きずってるやつはうちの街の人間だ! どちらにしても投降してもらう」

「ふざけないでください。僕はこの子をこいつらから助けただけです。それよりも、もう1台の馬車がこっちに向かったはずです。知っているなら場所を教えてくだい」

「お前さっきから何を言ってるんだ。そいつはファルムって言ってこの街の冒険者だぞ。そいつから助けたってなにか勘違いしてるんじゃないのか?」

「ならこいつが所属する冒険者ギルドに案内してください」


 お互い情報が分かっていない為会話がほとんど成立していなかった。言葉は優しいがルカは全員倒してでも街の中に入る気だ。これ以上(さわ)ぎが広まる前に何とかしなくては。


「おーいルカー!」

「し、師匠!? なんでここに?」


 俺はルカのところに急いで向かい今何が起きていて、ルカが何をしてしまったか説明をした。()けつけた冒険者にはユリベラが説明をしてくれていた。


 俺の説明を聞いて、ルカの顔色がどんどん悪くなっていく。勘違いとはいえ、30人近くの人間を沈めてしまったからだ。まあ死人が出ていないだけましだけど。


 冒険者ギルドの方はユリベラが話をつけてくれたみたいで、倒れた仲間を連れて引き上げて行った。そのかわりに、後日冒険者ギルドパルティア支部に出頭命令が出てしまった。


 残された現場には応援に()けつけた反王国勢力(レジスタンス)のメンバーも倒れている。それを見た他のメンバーも呆然としている。それをやったのは人を背負っている状態の子供だからだ。


「本当に君がやったのか?」

「ご、ごめんなさい。僕てっきり賊の一味かと思って···」


 ルカは冷静さを取り戻し、いつもの僕っ子に戻っていた。


「ルカ、背中に背負っている子は?」

「は、はい。馬車の中に(とら)われていました。扉も無穴錠(むけつじょう)だったので、例の賊かと思ってしまって」


 ルカが背負っている子はエルフの女の子だった。今は気を失っていて目を覚ましそうにない。他にもルカのせいで目を覚まさないでいるメンバーがいるので、とりあえずマルクスの店に連れて帰ることにした。



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