表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/129

勇者降臨? ➀

「みなさん覚悟はありますか?」


 俺は全員に向かって聞いた。すでに覚悟はできているようだった。戦う覚悟、傷つくく覚悟、死ぬ覚悟、どれでもない。みんなの顔に現れていたのは、必ず(さら)われた者たちを助けるという覚悟だった。


「当然だ。死んでも助け出してやる」

(うん、良いね。でも死んだんじゃ助けられないよ?)


 ユリベラの覚悟にみんなが呼応(こおう)した。ラルフも中に混ざって「俺も死んでやるでやんす!」と意味の分からないことを叫んでいた。

(ラルフはただ死にに行くみたいなこと言ってるだけだな···)


「分かりました。それでは僕たちも全力で戦いましょう。まずは、僕たちが考えている計画をお伝えします」


 俺は知っている情報と、今後の動きのことについて話した。


 王城の地下に研究所らしきものがあり、そこに(さら)われた者が運び込まれていること、また、俺達がオクロスを探していて、今回の件と関係していることを伝えた。


「それと、騒ぎになれば確実に王国軍と冒険者が出てくることを前提としていますから、救出には少数精鋭で向かおうと思います」

「厳重に警備が()かれていてどうやって侵入する?」

「それは僕たちのほうで何とかします。準備まで数日かかると思いますが必ずご案内できるとお約束します」

「これだけの情報もそうだが、すでに王城の対策まで進んでいるなんて···。レンさん、あなた達はいったい···」


 一通りの話を聞いていたマルクスが(おどろ)いていた。情報収集はマルクスの専売特許にもかかわらず、たった数日で王城についての情報をマルクス以上に集めていたからだ。

 ふふん、僕らにだって情報収集のスペシャリストを抱えているんだよ。


 救出作戦について話をしていたら、反王国勢力(レジスタンス)のメンバーが慌てた様子で部屋に入って来た。


「ゆ、ユリベラさん大変です!」

「なんだ。会合中だぞ」

「今、エルミナ方面で警戒中のファルムから連絡があって、人(さら)いの馬車がこっちに向かっているらしいです」

「「「!?」」」

「どういうこと!? 詳しく話して!」


 反王国勢力(レジスタンス)のメンバーは各方面に人(さら)いの警戒の為、偵察隊(ていさつたい)を何組か配置していたようだ。連絡は遠隔通信(マクリノス)という魔法石を使って行っているらしい。


「ファルムが配置されていた場所を2台の馬車が通過したらしいんです。馬車の特徴が以前目撃があったものと同じだったみたいで···」

「それだけでなんで人(さら)いと分かるの?」

「そ、それが···。ファルムのやつら馬車を止めて中を確認したみたいなんです。そしたら、中に亜人の女の子が···」


 間違いない。お手柄じゃないか。それなのになんでそんなに慌てた顔をしている。


「2台とも押さえたのか?」

「いえ、1台はそのまま逃げられてしまって」

「何をやっているの!」

「ち、違うんです。もう1台も押さえようとしたら、エルミナの方からその馬車を追って来たやつが、ファルムたちを賊と間違って(おそ)ってきたみたいなんです。そいつから逃げる為に、もう1台をあきらめたようなんです」

「そいつは被害者の仲間ではないの? 助けたことを伝えれば良かったでしょ?」

「それが聞く耳も持たず、いきなり攻撃を仕掛けてきたみたいなんです。ファルム達も被害者の仲間か、賊の仲間かも確認できず、今はひたすらこちらに向かって逃げているようなんです」


 報告に来たメンバーとユリベラが会話をしていると、久しぶりの念話が飛んできた。


『レン、今大丈夫か?』

『今ちょっと忙しい』

『そうか実は···』

(結局話すんかい!)

『···実は王都で人(さら)いが起きた』

『え? 起きたのって王都なの?』

『なんじゃ知っておったのか?』

『いやこっちでもそのことが話題でバタバタしてるんだよ。なんか、人(さら)いの馬車を助けたら、それを追って来た人に(おそ)われているみたい』

『それな···。ルカじゃ。』

「え!?」


 俺は思わず声に出してしまっていた。みんなが俺に注目していた。俺は謝って壁の方を向いた。


(ほむら)どういうこと? なんでルカが人(さら)いを追ってるの?』

『言いにくいんじゃが(さら)われたのがシャルのやつでの、ワラワが向かうと言ったのじゃが聞かなくての。ワラワはルカの代わりでお留守番じゃ』

(あいつ何回(さら)われれば気が済むんだよ!)


『馬車は2台って聞いたけどシャルの他は誰だか分かる?』

『1台はシャルのやつじゃ。もう片方は知らん』

『そっか。分かった。ありがとう知らせてくれて。またなんかあったら教えてね』

『うむ。···そのなんだ。ルカめちゃくちゃキレとったからそっちも気をつけるんじゃの』

(えー···。)


 念話を終えて、俺はイーファとメルに状況を伝えた。


「れ、レンさんそれってまずくないですか? 今馬車を救出しに大勢向かったらしいですよ。シャルティアさんのことになったらルカさん···。考えただけでもぞっとします」


 いつの間に増援が!? そうか焔と念話している最中にこっちでも話が進んでいたのか。確かにまずいぞ。ルカはまた自分のせいとか思っているはずだ。そうだとしたら、冷静な判断ができないかもしれない。多分賊か賊じゃないかの判断なんてしないで、救出優先で行動するに違いない。少しでも抵抗した時点で賊とみなすだろう。急いで何とかしないと。


「ユリベラさん。すぐに全員に投降するように伝えてください。すぐにです。絶対に抵抗はしないように伝えてください」

「何を言ってる。こっちは20人近く応援に行ってるんだぞ。たった一人になぜ投降しなければいけない。こっちは救出した立場だぞ」

(くぅぬっ! 説明がめんどい!)


「抵抗すれば全滅しますよ。相手はそれだけの力があります」

「何をばかな···。そんなこと起こるはずない」

「知りませんよ」


 俺は忠告はした。ルカのことだきっと殺しはしないはず。多分。しないよね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ