冒険者ギルド パルティア支部
関連作品で短編を投稿しています。
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「これがパルティア···」
着いたそうそう賑やかな街並みが広がっていた。エルミナの王都に負けていない。これで一つの街なのだから、レザリア王国の大きさがうかがえる。
「パルティアはレザリア王国の中でも一番商業が盛んな街なんです。ここなら、王国にあるものならなんでも揃えられると思いますよ」
パルティアには国中の職人や商人が集まっているらしい。マルクスはその商人の一人で、主に他国の商品を持ち込んで販売しているみたいだ。
ここなら絶対障壁のような魔法石も手に入るのだろうか。
俺達はとりあえずマルクスのお店に案内されることになった。
「改めて。先ほどは助けて頂きありがとうございました」
護衛のラスクとメイフィスも無事に目を覚まし、マルクスの隣でお辞儀をしている。
二人とも冒険者で、今回の護衛も冒険者ギルドを介してのものだった。冒険者ギルド本部は各国に存在し、大きな街や村には支部が存在する。ラスクとメイフィスの二人はパルティア支部の所属のようだ。
今回の護衛の依頼は、本来なら失敗扱いになるのだろうが、ナーガキングの出現は俺達が原因なのでマルクスにお願いして任務成功扱いにしてもらうことにした。
「レンさんたちはレザリア王国には何をしにいらしたのですか?」
「私の住んでいた村には何もなく、多くの国を回って色々な事の知見を深めたいと思い、こうして旅を始めた次第です」
「そうでしたか。これも何かの縁です。この国で何かあればご協力させて頂きます。商品の知識や情報に関しては自信がありますので」
「情報···ですか?」
「はい。私は情報の販売も行なっております。依頼されれば調査し、それを報告することで商売として成立させています。何か必要なことがあればいつでも聞いてください」
なるほど。現世で言うところの探偵みたいなものか。オクロスのことを聞きたかったがそこまでマルクスを信用しているわけではなかったので今はやめておこう。
「その時は是非お願いします」
その後、マルクスからお勧めのお店を教えてもらい、パルティアの街を回ることにした。
一番最初に見に行った店は魔法石専門店だった。絶対障壁のようなアイテムがまだ他にもないか知りたかったからだ。
魔法石には攻撃魔法や、防御魔法、生活魔法などの色々な種類のものが存在した。例の絶対障壁はレジ横の頑丈なショーケースの中にいれられ、展示されていた。
「絶対障壁ってこんなに高いの···?」
「なんだい兄ちゃん。これが欲しいのかい? これは制作に2カ月かかってるから結構たかいんだよ。でも、どんな攻撃からも絶対守ってくれるから安心しな! わっはっはっは!」
いや、俺は例外を知っている。何事にも絶対はない。現に俺はルーカスの腕を吹っ飛ばした経験がある。しかし、制作に2カ月って···。確か、パナメラ達に持たせた絶対障壁って、焔とイーファに手を貸してもらって数時間で出来た気が···。
これは新たな商売を見つけてしまったかもしれない。他の魔法石の素材に関してもベレン達に聞けば全部揃えられるはずだ。
レザリア王国に入っている月光に会ったら伝えることにしよう。
次に向かったのは冒険者ギルドパルティア支部だ。ここに来た目的は二つ。一つはオクロスの情報を少しでも手に入れることだ。クエストの依頼に誘拐関係のものがあればそこから何かしらつかめるかもしれない。
もう一つは冒険者ランクの扱いに関してだ。国によってランクの評価制度が違うとパナメラから聞いていた。今までのエルミナの冒険者ギルドのランク評価はクエストの達成回数や、大会などの特典による特進などでランクを上げることができたから、実力が伴っていなかった。そのランクの違いを知りたかったのだ。
「みなさん。どうしてこちらに?」
冒険者ギルドに着くと、先ほどまで一緒だった、ラスクとメイフィスがいた。どうやら、クエストの達成報告を行っていたようだ。
「今日は本当にありがとうございました。おかげでクエストを失敗せずに済みました」
「いえいえ。こちらも素材が手に入ったので助かりました」
「実は私たち、冒険者になりたてで、今回のクエストも決まったコースの簡単な警護のはずだったんです」
「ちなみにお二人の冒険者ランクはおいくつなんですか?」
「二人ともEの最低ランクです」
Eランクじゃ参考にならないか。どうすればランクが上がるのだろうか。
「おいおい、へなちょこコンビのラスクとメイフィスじゃねぇか。こんなところで何をやってんだ? お前らが受けられる依頼はここにはねぇっていつも言ってるじゃねぇか。早くエルミナに行ったほうがいいんじゃねぇか?」
どこにでも絶対にいるんだな。しかも、今エルミナの冒険者ギルドを軽くばかにしなかったか?
いかにも性格の悪そうな冒険者達が話しかけてきた。
「ふん。今回はちゃんと依頼は達成したさ」
「へぇ。ゴミ拾いのクエストでもあったのか? ···ん? そいつら誰だ? ここじゃあんまり見ねぇ顔だな」
「この人達はマルクスさんの客人だ。ビクターには関係ないだろ」
「へぇ。マルクスさんとこの客人ねぇ···。あんたら、なんか依頼があればこんな雑魚冒険者じゃなくてBランク冒険者の俺達に言いな」
このビクターという男、Bランクなのか。Bランクなら参考になるかもしれない。
「ビクターさんでしたっけ? ランクBという事はナーガキングを単独で討伐することはできますか?」
「ナーガキング? あんまり見ない魔物だな。まあランクBの冒険者ならそれくらいは普通に倒せるだろうな。どっちにしても冒険者を語るなら単独討伐できないとなぁ」
ふむ。ナーガキングは死を呼ぶ大鳥と同じくらいの強さだろう。元ランクAのクリスが手も足も出なかったのだから、それと同等の魔物を単独で倒せるという事は、レザリアの冒険者ランクの水準は2つ以上上だったのかもしれない。
今のエルミナの冒険者が単独討伐するにはランクD以上が必要になる。
隣を見るとメルが少し俯いていた。ビクターの言葉を気にしているようだ。今回はイーファの助力があって討伐できたようなものだからな。
俺は他の人に聞こえないようにメルに呟いた。
「メル、上を向きなさい。エルミナの冒険者になったんだ。何を言われようと自信を持て」
俺の言葉で厳しい稽古を思い出したのか、表情が引き締まり、しっかり前を向いていた。
「それで、マルクスの客人さん。旅をするなら護衛なんてどうだい? 良かったら格安で依頼を受けてやるぜ」
「ビクター! マルクスさんの客人に失礼だろ!」
「うせぇ! これは冒険者の仕事の話だ! 雑魚は引っ込んでろ! 」
ラスクは何も言い返せず、悔しそうな顔をしていた。別に大した知り合いでもないが、あまり好きな光景ではない。メルも何かを勘違いしてそうだったから、この際だ。強さとは何かもう一度考えてもらおう。
「あのービクターさんは僕らを護衛できるほど強いのでしょうか?」
「あーん? 何言ってんだ?」
「いやぁ、護衛者が自分達より弱かったら嫌だなぁと思いまして」
その場の空気がピリついたのが分かった。俺達だけでなく周りで様子を見ていた他の冒険者達もよそ者の発言が気に入らなかったらしい。どうやら冒険者をばかにされたと思ったみたいだ。