レザリア王国
第3部レザリア王国篇スタートです。
俺はイーファとメルと一緒にレザリア王国の王都を目指している。エルミナの王都を出て、レザリア王国との国境を越えると広い高原が広がっていた。
レザリアの王都に行くには途中で森に入り、そこを抜けてパルティアという街を通ることになる。
そして今俺達はその森の中で遊んでいる。厳密に言うと、遊んでいるのはメル一人だ。
「うわわわわあああ。れ、れ、れんさーん! どうしよう!」
「だからよせって言ったのに」
メルは今ナーガキングという大蛇に追われている。
森に入ってメルがナーガキングの巣を見つけて、卵がないか見に行きたいと言い出したのだ。ナーガの卵は希少性が高く、高値で取引されるらしい。希少な卵を産む鳥の時といい、メルは卵マニアなのだろうか。
本人は魔物除けがあるから大丈夫と言って、一人で巣の中に入って行った。
俺はメルに、冒険者になったのだから自己責任でやりなさいと忠告した。魔物除けは本来魔物が近づいてこないという効果があるのだが、自分から魔物に近づいて効果があるのか疑問だった。
案の定、大声をあげながらメルが巣穴から飛び出してきたのだ。
「どうするんだレン。あのままだと丸飲みにされるぞ」
助けてもいいが、今はあのサイズの魔物の素材を街まで運ぶだけの手段がない。無闇に殺すのも良くない気がする。だって悪いのはメルだから。
俺はしょうがなく焔から預かっている眷属を召喚した。召喚と言っても俺の影に隠れているのを呼ぶだけだった。
「悪いなシオン。ちょっとメルのこと助けてあげてくれる?」
「クオーン!」
いつも一緒に行動していたシオンは俺の言う事ならなんでも聞いてくれる。緊急用の移動手段にイーファとメル用のフェンリルも俺の影に隠れている。これも炎帝の加護のおかげらしい。
シオンはメルを拾い上げて、ナーガキングから距離を取る。それを見てイーファが魔法で霧を創り出した。それを利用して全員ナーガキングから身を隠すことができた。
シオンが匂いをたどって俺達のところまでやってきた。
「初めての冒険どうだった?」
「めちゃくちゃ怖かった···」
よく今まで死なないで炎帝の森でやってこれたな。孤児院の子供達の為に生きて帰らないといけないという責任感があったからだろう。今は俺やイーファがいるから、少し甘えが出ているようだ。今まで甘えることを我慢していたのだから今ぐらいはいいか。そんなことを思いながら見ていたら、メルが何か抱えているのに気づいた。
「それ何?」
「ナーガキングの卵!」
素材ハンターとしては優秀なようだ。あなどれん。
ナーガキングが離れていくのが分かったので、俺達はそうそうに森を抜けることにした。
森を抜けると草原が広がっていた。街に続いているであろう街道が見えたので向かっていると、今俺達が出てきた森からキャラバンが飛び出してきた。どうやら何かに追われているらしい。
キャラバンの後を追って森から出てきたのはまさかのさっきのナーガキングだった。俺とイーファはメルを見た。メルは慌てて「ごめんなさい」と叫んだ。そうこうしているうちにキャラバンが俺達の横を通り過ぎようとしていた。
「き、君達すぐに逃げなさい! 丸飲みにされるぞ!」
うわあ···本当にごめんなさい。
すでに誰か飲まれているようだ。これでは素材云々関係なく、責任を取って処理しなければならない。それに時間から考えると、丸飲みなら生きているチャンスがあるかもしれない。
「イーファ、足止めできる?」
「愚問だな」
そう言うとイーファはナーガキングの足元を凍らせ始めた。
「メル、責任取って仕留めてきなさい」
「わ、分かってるよぉ···」
止まったナーガキングを仕留めるくらい、エルミナの冒険者ならわけないはずだ。メルも伊達に冒険者の資格を持っているわけではない。実力で勝ち取ったのだ。
足は止まっているが頭はまだ自由に動くので攻撃は可能だ。メルが近づくとすぐさま攻撃を仕掛けてきた。
メルはそれらの攻撃を丁寧に躱し、カウンターを決めていく。徐々にナーガキングの動きが鈍くなって、攻撃も雑になってきた。
最後は頭部に攻撃を加え、ナーガキングが沈んだ。勝利したメルはその頭の上で飛び跳ねていた。
何度見ても教え子の成長は気持ちがいいものだ。と言いながらも、すぐに動きの修正をメルに伝える。職業病だ。
「おいレン。そんなことしてていいのか?」
イーファはぱんぱんに膨らんだナーガキングの腹を指差していた。そうだった。早急な人命救助。すっかり忘れて指導に夢中になってしまった。
俺はすぐにナーガキングの腹を切り裂いた。その瞬間、中から人がドロッと2人も出てきた。
「し、死んじゃってるの?」
メルは恐る恐る覗いていた。明らかに息をしていなかったのを見てイーファがすぐに動いた。
((うわあ···。))
あまりにも酷い荒療治を見て、俺とメルはドン引きした。しかし、その甲斐あって、二人とも息を吹き返した。
二人とも状況が飲み込めていないようだったが、倒れているナーガキングを見て、自分達が丸飲みされたことを思い出したらしい。再び気絶してしまった。とりあえず息はしているので少し寝かせておこう。
そうこうしているうちに、逃げていたキャラバンが戻ってきた。ナーガキングが倒れているのに気づき、引き返してきたらしい。
「き、君達がやったのか? ···ん? それは···ラスクとメイフィスじゃないか! 生きてるのか!?」
キャラバンの男は倒れている人を見て驚いていた。ラスクは男で、メイフィスは女だった。二人とも冒険者風の恰好をしていた。
「一応息はありますよ。お知り合いですか?」
「あ、ああ。二人とも私の護衛として一緒に行動していた。途中で興奮したナーガキングと遭遇してしまい、二人とも丸飲みにされてしまったのだ。いつも通り注意して巣から離れたところを通っていたはずなのだが···」
はい、その巣穴から出したのは間違いなく俺達です。ごめんなさい。
「すまない。挨拶がおくれてしまった。私はこの先のパルティアという街で商人をやっているマルクスという者だ。仲間を助けてくれたことの礼を言わせてほしい。本当にありがとう」
「と、とんでもない。当然のことをしたまでですよ。な、なあメル」
「う、うん。困ったときはお互い様ですよ。あはははは」
俺はすぐにでもその場から立ち去りたかった。これで謝礼を支払うなんて言われたらただのマッチポンプになってしまう。
「それにしても、うちの護衛が手も足も出なかったのに···。みなさんは冒険者か何かですか?」
レザリア王国にはオクロスの調査で来ている。このことはまだ知られたくないので、レザリアの冒険者ギルドに着くまでは、冒険者だという事は黙っておこう。
「いえ、僕らはただの旅人です。ここに来る前はエルミナ王国によっていました」
「エルミナ王国!? 本当ですか!?」
なぜ驚く。そうか。エルミナ王国は魔物の大暴走が起きたばかりだった。この時期にエルミナ王国から来たとなれば驚くのも当然かもしれない。
「あの···、みなさんはこれからどちらに? 良かったらこの先の街までご一緒しませんか? このナーガキングの素材も私が運ばせていたがきますよ」
それはありがたい。そもそも運搬方法があれば狩っていた訳だから。お言葉に甘えることにしよう。
「それは助かります。こちらからもお願いいたします」
俺達は素材を回収し、マルクスのキャラバンに乗せてもらうことになった。向かうはレザリア王国最初の街、パルティアだ。
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