大災害再び
ルーカスの攻撃はとにかく速かった。それだけならまだ良いが、気を抜くと足元を魔法で狙われる。ネムが使っていたものと同じだった。
「本当にすばしっこいのー。でもそろそろお嬢ちゃんも限界じゃのー」
いつの間にかマーレと呼ばれる子も加わっていた。桜火は何とか片足だけ自由になったみたいだが、軸足だけだと、防ぐのがやっとだった。焔だけでもなんとかなれば。
そう思っていたら。隣の方から大きな衝撃音が聞こえた。
ドムと呼ばれていた男が、木に叩きつけられて気絶していた。少し黒く焦げて体からは煙が上がっていた。
「頑丈さだけは褒めてやろう。しばらくそこでねているがいい」
焔のほうは決着がついたみたいだ。
「焔! 桜火の援護に回ってくれない!」
「それはちーとばかり遅かったようじゃのー」
俺が桜火の方を見たら、桜火の動きが止まっていて、マーレという子に抱えられていた。
「じじい! 何とか付けたぜ! ったくどうやったらこんな強くなるんだよ!」
「つべこべい言ってないでさっさと運ばんか」
「へいへい。マーレそいつを頼んだぞ。俺とネムでドムをやったやつの相手をしなきゃいけないからな」
「いやだ。やるならパルク一人でやって」
「何だと!」
「僕はこの子連れて行くからね」
パルクとネムは相変わらず言い合いをしていた。マーレは気にせず桜火を抱え立ち去ろうとしていた。そこへ焔が立ちふさがった。
「簡単に行かせると思うか?」
焔の刀には既に炎が纏っていた。その炎を纏った刀がマーレに向かって振り下ろされた。
しかしマーレに当たる手前でその攻撃が爆発と共に弾かれてしまったのだ。そこには見えない壁のようなものが展開されていた。
「び、びっくりした」
マーレは一瞬驚いていたが、何かに守られたことに気づき、すぐに姿を消した。
「待て! くそ、よもや絶対障壁まで出してこようとはの」
絶対障壁は魔力を貯め込んだ魔法石の事だ。どんな攻撃も防いでくれる絶対防御の一つで、その性能の高さから、貯め込む魔力は膨大で、一つ作成するのに数カ月はかかるかなり貴重なアイテムだ。
焔はすぐに追おうとしたが、今度はパルクとネムが立ちはだかった。
「少しの間お相手頼むよ炎帝様!」
「パルク、ふざけないで、死ぬよ」
「邪魔だ虫けらがぁ!!」
焔が二人を炎で薙ぎ払おうとしたが、ネムが水の魔法で応戦していた。焔が足止めされた以上俺が行くしかなかった。俺はルーカスを無視して桜火を追おうとするが簡単には行かせてもらえなかった。
「お嬢ちゃんを助けに行きたかったら、わしを倒すしかないのー」
そう言うと、ルーカスは姿を消した。次の瞬間、俺の周りを囲むように何人ものルーカスが姿を現したのだ。
原理は分からないが気配はどれも同じように存在した。そのうちの一人が後ろから攻撃してきた。俺が体をずらしてそれを躱すと、その攻撃が地面を破壊した。やはり実態を帯びていた。
ためらってはいられなかった。俺は攻撃してきたルーカスをそのまま斬りつけた。胴体を切り裂いた感覚はあったが、その体は霧のように消えていった。やはり何かの魔法で、どれか一つが本体なのだろう。
何か考えるのが面倒になってきた。全員斬れば分かることだ。
俺は片っ端から攻撃することに決めた。ルーカス一人一人が刀を持っていて俺の攻撃をそれで受けようとしていた。死角から攻撃を仕掛けてくるやつもいるが、実体がある以上気配がある。気配さえあればおれは攻撃を受けることはない。
ただ一つだけ厄介なことがあった。中には離れたところから魔法を使ってくるやつがいるのだ。攻撃範囲が広い魔法は速めに察知しないと躱すのに苦労する。魔法を使う奴には死角から投げ用ナイフで狙っていった。
「さっきから地力の攻撃ばっかじゃの。お主、なぜ魔法を使わん?」
(くっ! 使わないんじゃない。使えないんです)
「このままだと、あのお嬢ちゃんも無事ではすまんぞー」
煽りたいのか何なのかは知らないが、俺が怒るのに十分な一言だった。自重なんてどうでも良くなった。
「焔!」
一応焔には声をかけておいた。まぁ声をかけなくても気づくと思っていたが念のためだ。焔にはずっと止められていたが、今はどうでもいい。この村の復興ぐらいいくらでもする。俺は刀を鞘に納め、居合の体勢に入った。
「おい、あの木のところで寝ている男、あのままだと死ぬぞ。お主らも早くここから逃げるんだな」
焔はパルクとネムに忠告して、その場から消えた。
「おいちょっと待て! くそ! やられっぱなしだったじゃねーか! なんなんだあの化け物!」
「パルク、あれ、やばい」
「あーん?」
俺はルーカス達全員が射程内に入るように位置取りをしていた。全員逃げる以外命の保証は出来なかった。パルクとネムは焔の言った意味が分かったようだ。すぐにドムの元に向かっていった。ルーカスの姿をした奴は他にいたが俺は一人に絞っていた。
「なぜわしが本体だと分かった?」
「知りたければ力ずくだったのでは?」
「こりゃ一本取られたわ!ほっほっほっ」
ルーカスが笑った後、俺は刀を抜いた。
炎帝の森大災害。広範囲に森が焼かれ、多くの木が切り倒されていた。半分が焔の烈火でもう半分は俺の居合切りだった。
当時、試し斬りのつもりで木を斬ったのだが、俺の正面から扇状に木が次々と薙ぎ倒されていった。どれもかまいたちにでもあったかのように斬られていたのだ。これが大災害の真実である。
俺はかなりの被害があることを承知で刀を抜いた。軌道上に4人しかいないことは確認してあるからロエナ村の住民が被害に合うことはないが、村の大半がなくなることになるだろう。
俺の正面から扇状に何かが放たれたのが分かった。しかし、今回のは以前よりも威力が段違いだった。前回はサーベルを使用したため、正確な型がとれていなかったのだ。
ルーカス達も無事ではすまないと思っていたが、例の絶対障壁を使っていたようだ。
しかし、ルーカスの絶対障壁は破られていた。パルクとネムは同時に二つ使用していたみたいで無事だった。ドムも二人に守られていた。
「まさか絶対障壁を破られるとはのー。こんなの聞いとらんわい」
ルーカスの左腕は肩から下が切り落とされ、膝をつき血を流していた。そのせいか他にいたルーカスの姿も消えていた。
「もう止めにしませんか?」
「ふん。王国一の冒険者をなめるんじゃないわ」
ルーカスは魔法で攻撃してきたが俺はそれを全て刀で振り払った。
「やはりその力は厄介じゃのー、少しでも気取られると全て躱されるか、受けられてしまうからのー」
そう言ってルーカスは右腕を上げた。その手には刀が握られている。何かするつもりらしい。
「これは躱せるかのー」
ルーカスが刀を降ろすが何も来る気配がなかった。しかし、後ろから焔の声が聞こえた時には俺の胸から刀の刃先が飛び出していた。俺は後ろから刺されていたのだ。俺は全く気配を感じることができなかった。
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