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エルミナ王国王女テスタ

 テスタからの依頼内容は簡単だった。炎帝の森で調査をするのに護衛についてきて欲しいとのことだった。


 しかし問題が一つだけある。素性が確かでない者を光月村に連れて行く訳には行かない。炎帝の森の調査と言えば、必ず炎帝が絡んでいるはずだ。テスタ達の最終目的も、炎帝の碑石が含まれているに違いない。あそこは今じゃ村の入り口になっている。


「テスタさん。失礼ですが炎帝の森に入る理由を伺っても宜しいですか?」

「詳しくは話せませんが、一つが人を探しているということ、もう一つが炎帝の碑石に行くことです」

(やっぱりか。)


 俺がどうするか考えていると焔が唐突に口を開いた。


「王国のお姫様があの碑石に一体何用じゃ」

「「「!!」」」


 全員が焔を見た。テスタは目を見開いて驚いていた。レオは帯刀している剣に手を掛けていた。


「若様の前でそのような物騒なものを抜くつもりですか?」


 俺の後ろに立っていた狐月がいつの間にかレオの背後に立っていた。背後を取られたレオは、抵抗できないと悟ったのか、剣から手を離した。ちなみに狐月は何も武器を持っていない。背後を取るという事はそれだけの効果があるのだ。


「あなたは何故そのことをご存じなのですか?」

「質問に質問か。まあ気にするな。お主には関係ないことじゃ」


 全く意味が分からなかったが、テスタが王女だってことは間違いなさそうだ。


「テスタさん···テスタ様は何故このようなところにおられるのですか?」

「テスタで構いません。ここにはお忍びで来ております。私が王女だという事は忘れてください。ですが、知られている以上きちんと説明いたします」

「姫様···」


 レオが何かを言いかけたが、テスタがそれを止める。


「人を探しているのは本当です。それも目的の一つではありますが、現在王国では炎帝様の不在が噂されています。王国からもギルドに調査依頼を出しました。それを受けて下さったのが皆様なのです」


 調査内容は十分だった。しかし、テスタは肝心な炎帝様不在の真実が不明なことを良しとしていなかったのだ。これからこの王国を守っていく一人の王族として、きちんと事実を確認してから対策を考えていきたいらしい。


「炎帝様が不在となれば加護が無くなり、魔物の暴走が起こります。今までこの国は、···いえ、この世界は四帝様に頼り過ぎていたのです。それを忘れて人は、争いや侵略を続けてきてしまった。私はこの世界をもう一度、始まりの世界に戻したいのです。その為に私は炎帝様にお会いする必要があります。···それがあの人との約束だから」

「始まりの世界?」

「はい。この世界は元々争いのない平和な世界だったそうです。その平和を守る為に神が四帝様を使わされたと···。それが始まりの世界と呼ぶらしいのです。私はこの話をある方から聞きました」


 焔から聞いていた話とほとんど同じだった。テスタの目的は理解できた。さて、どうしよう。目的の炎帝様は目の前にいるのだが···。


『焔、どうする?』

『どうするも何も、ワラワは炎帝ではない。まあこやつなら村に案内しても構わんよ』

『ふーん』

『な、なんじゃ?』

『なんだかんだ優しいよね焔って』


「どうしたの焔お姉ちゃん、顔赤いよ」

「べ、別になんでもない」


 焔が一人であたふたしてる。とりあえず焔の許可も出たので護衛の件は了承した。ただ、一つだけ約束してもらった。俺は事前に光月村のことを話した。約束は村のことを絶対に口外しないという事だった。


「ありがとうございます。お約束は絶対にお守りいたしますわ。それにしても炎帝の森に村が存在していたなんて信じられません。噂では炎帝の民の村があるとは聞き及んでいましたが」


 テスタは興奮気味に話していた。レオが「姫様落ち着いて下さい」となだめるほどだった。テスタが落ち着くのを待って、日程を決めることにした。依頼も森の調査の護衛から、森の視察の護衛に変更された。


「視察にはテスタさんとレオさんのお二人で宜しかったですか?」

「はい。人数が少ないほうが秘密も守りやすいので。レオなら信頼できるので大丈夫でしょう。ただ護衛に関しては『コウヅキ』に頼りきってしまうことになりますが···」

「その辺は安心してください。その為の特別依頼ですから。万全の体制で護衛します」


 出発は二日後に決まった。話もまとまり、解散になりかけた時パナメラからも報告があるとの事だった。


「お待たせしていた『コウヅキ』への成功報酬を王城より預かっております」


 以前受けた特別クエスト『炎帝の森の調査』の成功報酬だった。テーブルに広げられた白金貨を見て全員が目を輝かせた。俺がちゃんと巾着に入れてしまおうとすると「若様」と言って狐月に止められた。


 さすがに白金貨は使わないよと思いながらも、しぶしぶ皆の言うことを聞く。今度の依頼の時に村に持っていくことになった。


 今度こそ解散になり。パナメラはテスタ達を送ってくると言って一緒に帰っていった。


「狐月とローラさん達も光月村は初めてだよね。ローラさんとシャルはどうする? 元々村に住む予定だったけど」

「私はルカ様と一緒にいたいです」

「私も『コウヅキ旅団』の料理担当なので皆さんとご一緒させて頂きます」

「私はいつも若様のおそばに···」

(うん。狐月はそうだよね。知ってた。)


「分かった。とりあえず今いる皆は王都組という事で良いね。でも今回は全員で村に帰ろう」

「「「はい」」」


 みんなの同意も得られたので。俺達も解散することになった。



 翌日、皆で村に持っていく物資を買い集めた。リストは事前にセリナからもらっていた。だいぶ荷物が多くなったので運搬用の馬車を購入することになった。なんてったって白金貨100枚だからね。何でも買えちゃうのだ。


 しかし、王都組の人数も増えてきたことだし、王都の拠点も考えておかないといけない。さすがにずっと宿という訳にはいかないからだ。村に戻ったらみんなで話し合うことに決めた。


 準備も終わり、炎帝の森の視察当日になった。テスタはお忍びで行くとのことだったので、王都の外で待ち合わせることになっている。


 予定の時間になると、テスタとレオが馬に乗って現れた。


 揃ったところで出発することになった。久しぶりの光月村はどこまで発展しているのだろう。期待しつつ、二度目の里帰りが始まった。

【次回予告】

「レオ、魔物ってこんなに弱いものなの?」炎帝の森に入ったテスタ。パーティ『コウヅキ』の実力を知る。


次回「テスタ森に入る」


毎日12頃投稿いたします。

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