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ポルンとルカ、師匠を超える

 俺達が光月村(こうづきむら)に戻ってきて、もうすぐ1カ月になろうとする。そろそろ王都に戻らないと、クエストの期限が切れてしまう。そうすればせっかくの白金貨100枚が無駄になる上に、初のペナルティを食らうことになる。


 俺は出発を告げる為、エルグに主要メンバーを集めてもらえるように頼んだ。村長のエルグ、財務担当のミリア、技術顧問のゼノスとベレン、隠密(おんみつ)部隊月光(げっこう)のセリナ、村の兵士長のナバル、光月道場の指導担当のギルティ、最後に冒険者担当は元の三人に加え、ポルンとルカが参加することになった。


「皆さん、これからしばらくの間、村を空けることになります。(ほむら)も居ませんが、一応村には結界が張ってありますので安心してください。村の警備関係はナバルさんが、光月道場に関してはギルティさんに一任してあります。そして、今後王都のとの連絡手段は、月光率いるセリナさんにお任せしたいと思っています」


 この1カ月間やれることはやった。やはりこの世界の人は成長が早い。セリナに関しては個人的な趣味により、「忍びの心」を叩き込んだ。既に動きや能力は忍者と言っても過言ではない。


「同族の救出に関しては、月光を中心に情報収集を行ってもらいます。エルミナの王都での情報収集に関しては、資金集めをやりながら、僕達が行います」


 村に残ってもらうメンバーには、引き続き村の建築を進めてもらうことになった。ゼノスとベレンには武器の開発を頼んだ。


 ある程度引継ぎが終わり、最後にセリナから話があった。


「賊に関しての情報なのですが、私達を運んでいた御者(ぎょしゃ)の雇い主が分かりました。···ただ」


 セリナが言いづらそうにこちらを見るので、話を促す。


「今回の御者(ぎょしゃ)の雇い主は冒険者でした。しかも、その冒険者はギルドの依頼を受けただけだと話していたそうです」


 なるほど言いづらい訳だ。俺達が何週間かギルドに通ってたはずなのに、何の情報も得られていないのだから。こうなると早急にギルドに戻って情報を集めなければならなくなった。


 俺は皆に謝罪し、早急に賊とギルドとの関係を調べることを約束した。他に話が無いことを確認し解散することになった。こうして俺の久しぶりの里帰りが終わったのである。




 村を出てしばらく経つと、高値で売れるあいつが現れた。ブラックホーン君である。


 今回は初の遠征になる、ポルンとルカに任せてみた。二人はじゃんけんをしてどっちがやるかを決めている。結果はルカの勝利である。「やったー」とはしゃぐルカ。そんな僕っ子のルカを見ると、たまに女の子ではないかと勘違いしてしまう。


 ポルンとルカは、ベレンが造った小太刀を使用している。桜火(おうか)の小太刀とは違って、今回は量産品を持たせてある。実は、俺と焔も異世界初の刀を持っているが、これも量産品である。これにはちょっとした理由があって、何度ベレンが刀を鍛錬(たんれん)『小太刀ー桜火ー』を上回る刀が造れなかったのだ。


 日本刀を手にした焔が性能を試したいと言って、桜火と立ち合いを始めると、桜火の一太刀で焔が使用していた刀が切られてしまったのだ。これに対し焔が猛抗議(もうこうぎ)を始めた。()められるベレンが寝ずに刀を鍛錬(たんれん)しても一向に『小太刀ー桜火ー』に勝るものは出来なかった。ベレンを詰める焔をなだめ、最終的に俺がサーベルで焔の日本刀を切り落とし、「武器に頼るな、己の未熟さを知れ」の一言で焔は黙った。


 本当のところ『小太刀ー桜火ー』については謎が多い。なぜそのような業物(わざ)が生まれたのか。俺も何度かサーベルでブラックホーンを切ったことがあるが、桜火が最初に切り落とした腕のようにはいかなかった。


 そんなことを考えていたら、ルカの戦闘が始まっていた。ポルンとルカに関しては俺とも特別稽古(けいこ)を始めているので、以前よりも反応は段違いに上がっている。さて、どの型で仕留めるのか期待してた俺は、ルカの予想外の攻撃に(おどろ)いた。


 ブラックホーンが斧を振り落とし、再びその斧を振り上げようとした瞬間、ルカは腰を落とした。右手が腰の(さや)から小太刀を抜き、そのまま右上方に切っ先を滑らせる。その小太刀の切っ先から炎の線が出来上がってそれが爆炎(ばくえん)()す。それは焔がドラゴンに放った技と同じものだった。


 切られた上に強力な爆炎(ばくえん)が発生するので、くらえば一溜(ひとた)まりもない。案の定、ブラックホーンは切られたところがほとんど吹き飛んでいた。ルカはいつの間に、こんなことが出来るようになっていたのだろう。隣を見ると焔がニヤニヤしていた。お前か!


 しかし、これも職業病、すぐにルカの所に行き、型の指導に入る。ルカは俺が教えた居合の型の一つに、焔から教わった炎の魔法を合わせたようだ。やり方は焔が教えたのだろう。さしあたり『居合切りー烈火(れっか)ー』と命名しよう。それより、ルカまで魔法を使えるとはなんと(うらや)ましい。


 俺達は素材回収を終わらせ王都に向かうことにした。今回は五人もいたから大量の素材が集まった。またパナメラがげんなりするだろうな。




 王都に着いたその足でギルドに向かった。今回はポルンとルカの冒険者登録がある。ポルンとルカは炎帝(えんてい)の民だが、見た目は人間と変わらない。元は人間が炎帝に仕えた事から、炎帝の民と呼ばれていただけなのだから当然と言えば当然だ。本当の眷属(けんぞく)とは、シオンとレオンのような焔の分体のことを言うのだろう。


 ギルドに着いてすぐ、特別クエストの達成報告を行った。光月村に関してはオブラートに包んで報告した。(まつ)り石に関してはエルグに確認をとり、レプリカを作ってもらっていた。炎帝の民が作ったのだから本物とも言える。魔物の討伐(とうばつ)記録は、素材とともに提出するだけだった。


「レンくん、本当に依頼を達成するなんてすごいです」


 パナメラは先日のクエスト奪取(だっしゅ)事件後から、俺のことを『レンくん』と呼ぶようになった。俺に抱き着いたことから距離感が(ちぢ)んだようだ。悪くない。桜火は不満そうだ。


「それでは『コウヅキ』の皆様、依頼達成報告を受理致しました。報酬は依頼主確認後のお渡しになります。素材は別途買取になりますのでこのままお待ちください」


 急に仕事モードになるパナメラ。クエスト完了報告の受理が終わったので、クエスト奪取(だっしゅ)の心配は無くなった。素材の鑑定(かんてい)は、今回量が多かった為、スタッフ総出で鑑定している。待っている間にポルンとルカの冒険者登録を行った。俺は嫌な予感しかしない。


 登録が完了し、ギルドカードが発行された。


――――――――――――――――――

ポルン


年齢:13

ランク:E

レベル:24

魔法適正:火

ジョブ適正:剣士、格闘家

所属パーティ:『コウヅキ』

――――――――――――――――――


――――――――――――――――――

ルカ


年齢:12

ランク:E

レベル:26

魔法適正:火、光

ジョブ適正:魔剣士、治癒士

所属パーティ:『コウヅキ』

――――――――――――――――――



 案の定俺よりレベルが高かった。何かがおかしい。パナメラに頼み、皆に内緒でレベル測定を行ってみたが、相変わらずレベル1のままだった。


「師匠はレベルいくつなの?」

(はい、レベル1です。すみません。)


 ルカが無邪気(むじゃき)に聞いてくる。


「内緒。聞いたらみんなショックを受けるからね」

「すごい! ショックになるほど高いんですね!」

「ぷっ!」

(笑ったな焔、覚えとけ。)


 俺は苦笑いしながら話を流した。焔は笑いが止まらないらしい。焔を放っておいて、もう一度ギルドカードを確認する。


 年は桜火とポルンが同い年だった。意外だったのは、ルカの方がレベルが高かったのだ。これはどういう事なのだろう。稽古(けいこ)の量と質は基本的に同じだ。違うとしたら、個人的に稽古をしていて、その内容が影響しているのだろうか。その証拠に二人のジョブ適正と魔法適正にも違いが見える。実際ポルンはまだ『烈火』を使えないらしい。


 これは研究が必要だと思った。後日改めて検証するとしよう。


「お待たせ致しました」


 そうこうしている間に素材の鑑定(かんてい)が終わっていた。全部で大金貨220枚になった。過去一番の収入に喜ぶ俺達だった。今日はポルンとルカの冒険者登録祝いに豪華(ごうか)な食事をとることにした。

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