プロローグ
連載を再開しました。
週一ペースで投稿していきますので宜しくお願い致します。
亜大陸にある森の中で、男は体力の限界を迎えていた。
男の名はルベルクといい、『幻の大樹』と呼ばれる魔の迷宮の攻略を目指していた。
『幻の大樹』を攻略するには森の中心にある、どの場所からでも見ることができるほどの大樹にたどりつくことが必須条件である。
通常の魔の迷宮を攻略するには、迷路のような洞窟や遺跡などが多く、トラップや隠し通路などを見つけながら進むのが常識だった。
しかし、『幻の大樹』はまったくの別物だった。トラップも隠し通路もない。あるのは自然に囲まれた大樹のみで、ただひたすら大樹を目指すだけである。自然には薬草などの素材や食べ物、そして魔物も含まれる。障害になるとすれば魔物ぐらいだろう。
ただ大樹を目指すだけなのに多くの冒険者がたどり着くことができず命を落としてしていた。
冒険者のルドルフもその一人だ。『幻の大樹』に足を踏み入れて何日経ったかも覚えていない。少し顔を上げれば大樹の樹頭が視野に入る。それを目指して進めど進めどたどり着くことができていないのだ。
「とんだ依頼を受けちまったもんだぜ⋯⋯」
そう言って、今回の攻略に至った原因である依頼書を握りしめる。ルドルフはその反対の手で腹部を抑えていた。『幻の大樹』に住まう魔物にやられてしまったのだ。
すでに食料もなく、回復薬も使い果たしている。一度は攻略を諦めて引き返そうとも思ったが、進んだ距離を考えるとすぐに不可能だと気づく⋯⋯その繰り返しだ。行くも地獄戻るも地獄、ルドルフの命運は尽き果てていた。
怪我を負っているルドルフは、木に寄りかかり、命が尽きるその時を大人しく待っていた。しかし、『幻の大樹』に住まう魔物がそれを許さなかった。
バリッ⋯⋯バリバリッ
甲高く弾けるような音が森に響き、その音が段々とルドルフの元へと近づいてきた。
暗かった森が青白い光りで明るくなり、その光を発する魔物がルドルフの目の前で止まった。
すでに目を開けることもできなかったが、あまりの眩しさに自然と目を開けていた。
目の前には、身体の周りに雷電を放っている魔物が立っていた。体躯は馬のようだがまったくの別物だ。角が生え、たてがみはあるが身体全体が白い鱗で覆われており、放つ雷電がその白い身体を反射させると、白く神々しい光を纏っているように見える。
ルドルフは魔物の名を知らない。魔物というより聖獣という言葉が頭をよぎり、とうとう迎えが来たのだと、不安よりも安らかな気持ちになっていた。
力が抜けたせいで、握りしめていた手の中から一枚の紙が放たれた。自分が命を落とす原因を作った依頼書だ。
依頼書には次のように記されていた。
――――――――――――――――――
『特別クエスト 幻の大樹攻略』
依頼内容:
幻の大樹の魔の迷宮攻略。
達成条件:
世界樹の葉
10枚の提出。
達成報酬:
白金貨5000枚
――――――――――――――――――
ルドルフが力尽きるのと同時だった⋯⋯。大地を揺らすほどの轟音とともに、魔物の近くの木に雷が落ち、その木にルドルフが寄りかかっていたため、側撃を受けた彼の身体は焼失してしまった。
こうして、また一人『幻の大樹』から冒険者が消えていった。
***
某国冒険者ギルド
「ギルマス、ルドルフは失敗したようです」
そう言った女が手にしている木の板の上には人の形をした形代が、燃え焦げていた。
「まぁそうなるだろうな」
ギルマスと呼ばれる男は、女に背を向けたまま興味なさそうに応えた。
「世界樹の葉なんて本当に存在するのですか?」
「俺が知るか、亜大陸の案件だぞ。依頼主が調べて持ってきた情報だったからな⋯⋯どちらにしても受けた以上はやるしかないだろ。依頼主は魔の迷宮攻略さえできれば手に入るって言ってるんだ。攻略できるまで送り続けろ」
「⋯⋯外部委託でも問題ありませんか?」
「うちが窓口だ、別に問題ない⋯⋯なんだ、当てでもあるのか?」
「最近新設されたギルドなんですが⋯⋯」
女は書類を取り出して男に手渡す。
「エルミナ王国⋯⋯魔物の大暴走があった国か?」
「はい、一度ギルドを解体し、新たに設立されたギルドで、調査によると、魔物の大暴走の防衛戦にて最も貢献したものがマスターに就任しているようです」
「確かあそこにはSランクの冒険がいただろ⋯⋯えーと、バスクーダ? ステイン? どっちだ?」
「どちらも違います。登録では⋯⋯『レン・コウヅキ』となっていますね。新設時に、前ギルドで登録していた冒険者は皆ギルドから追放されています」
「どういうことだ? そのレンなんとかってやつのほうが実力が上ってことか?」
「それが良くわからないんです。ギルド本部で登録されているレン・コウヅキの最終ランクはDランクのレベル1なんですよ。設立当時からSランク認定されている冒険者が二人いたんですが、それを差し置いて就任しているようで⋯⋯」
「ふーん、担がれてマスターになったってくちか⋯⋯面白い、エルミナに委託依頼として申請しておけ」
「報酬分配は⋯⋯」
「任せる」
「承知しました」
そう言って女は部屋から出ていった。男はさっき女から受け取った資料を手にして眺めている。
「⋯⋯レン・コウヅキね」
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