懲りない少女
第3部を無事終わることができました。
続きはまた後日更新致します。更新日は改めて活動報告より告知致します。
楽しんで頂いた方、これからも楽しみにして頂いる方も、ブックマーク、もしくは☆での評価をいただけるととても嬉しいです。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
パルティア出発前日の夜
パルティアの町では夜通し宴会が続いていた。
「お兄ちゃん! どこー?」
「若様ー!」
「レン様! レザリアに残ってください!」
何やら俺を探す声が響いている。アルスはまだ俺をあきらめていないことが分かる。
俺は宴会を抜け出し、建物の上にいた。帰る前に焔と話しておこうと思ったのだ。
『焔。聞こえる?』
『レンか。久しいでわないか。元気だったか』
『うん。事件も落ち着いたから一度帰ろうと思って』
『それは良い。みんなレンに会いたがっておるよ』
俺は今回レザリアで起きたことを詳しく話した。
『そうか。ストロノースも逝ったか。あやつも一人でよく国を守ったほうじゃ』
『焔も天啓の事は知ってた?』
『直接聞いてはおらんが、セドリックがそのようなことは言っとったよ。ワラワは帝国の聖女に会ったことはないから詳しくは知らん』
『そっか』
それから今後の方針を伝えた。
『ダキアや、ロベルタ様と比べるとまだまだ俺たちは弱い。もっと別の方法で稽古をしていかなきゃ強くなれないかな』
『その二人はそれほどか?』
『うん。ダキアは別としても、ロベルタ様は別格だろうね。まったく勝てる気がしなかったよ』
『レンがそう言うのならそうなのだろう。ワラワもこうしてはおれんな』
『とにかく帰ったら、光月旅団の強化稽古をするからそのつもりでいて』
『あいわかった。そうだ、レンに言われた通り、魔の迷宮に行ってちゃんとミスリルを取ってきておいたから期待しておれ』
『おお! それは楽しみだ。これで新しい武器も作れるね。帰ったらさっそく作ってもらいたいものがあるんだ』
『なんじゃそれ。レンが欲しがるものなんて危険極まりないのじゃが······』
『大丈夫大丈夫。今回は俺専用のだから』
『だから、それが心配なんじゃよ!』
それからしばらくの間、俺は焔と話し続けた。
最後は狐月に見つかり、夜通し付き合わされることになった。
***
出発の朝、パルティアの街の入り口は大騒ぎになっていた。
その入口にはレザリア王国の騎士団のレイブン総長の隊が並んでいた。その前にはレザリア王国の女王アルス・オルクライン・レザリアの姿があった。
その姿を見に、パルティアの民が集まってしまったのだ。
「女王陛下に見送って頂けるなんて光栄です」
「レン様。今まで通りアルスで構いません。本当に行ってしまわれるのですか?」
「申し訳ありませんが待っている者たちがいますので」
アルスが悲しそうな顔をする。
「レイブン。どうにかしてレン様を捕える方法はありませんか?」
「陛下。民衆の目があります。それは難しいかと······」
何を言ってるのこの人たち。
俺はあえて聞こえないフリをした。
見送りにはハザクとハウザーも来ていた。
「レン殿には本当にお世話になりました。また会えることを楽しみにしています」
「こちらこそです。ハウザーさんもお元気で」
「レン殿、私はギルドの交流試合を楽しみにしています」
ハザクめ。忘れてなかったか。
二人はストロノースにやられてからの記憶がないので不完全燃焼なのだ。
「僕も楽しみにしています」
俺は社交辞令を述べて、ハザクが忘れることを期待した。
こうして俺たちはパルティアの人たちに見送られて出発することになった。
オクロスを追ってレザリア王国に入り、拐われた子も助ける事ができ、桜火も帰ってきた。多くの目的を果たしたので、今回の旅もこれで終わりだ。
帰りは人数が増えたので、マルクスさんが馬車を用意してくれた。本当に彼には良くしてもらった。
俺は御者席に陣取り、隣には狐月が座っていた。
「狐月。桜火を連れて帰ってきてくれてありがとうね」
この数日バタバタしていてちゃんと礼を言うのを忘れていた。
「いえ、若様の為ですから。それに、マダムとの関係をちゃんと若様に伝えていれば、ご心配をおかけすることもなかったはずです。申し訳ありません」
「謝らないで。俺は狐月を信じてたから平気だよ。本当にありがとう」
「若様······」
狐月がスッと肩を寄せてきた。
「あー! また狐月さんはそうやってぬけがけする!」
抜け駆けとはどういう意味だ、妹よ。
せっかく落ち着いていたのに俺の頭の上で二人の言い合いが始まった。
俺はそんな二人を放っておいたら、森の中から大きな音がした。木が倒れる音がだんだんと馬車に近づいて来た。
音の方に目をやると、見覚えのある光景が目に入った。
「うわわわわあああ。れ、れ、れんさーん! どうしよう!」
大きな卵を抱えたメルがこちらに向かって走ってきた。隣には同じく卵を抱えたマイルの姿もあった。
懲りないやつだなぁ。
案の定二人はナーガキングに追われていた。マイルなら討伐も可能なはずだが、卵を持っているせいで刀が抜けないらしい。
「若様。若様」
おばかだなぁ。
「ねえねえ、二人とも。それぐらいにしてあの二人を助けてあげて」
俺は頭の上で言い合いを続けてる桜火と狐月に、二人の救援を頼んだ。
「桜火さん。どっちが速く倒すか勝負です」
「望むところよ」
今度はどっちが速く倒すかの言い合いが始まった。
いいから早く行ってあげて。メルが食べられそうだから。
その後は、シャルティアも討伐に参加し、それを止めようとルカまで馬車を降りていった。
こうして、レザリア王国の旅はナーガキングに始まって、ナーガキングに終わったのであった。
「早くかえりたい······」
いつも読んで頂きありがとうございます。
短編の新作をあげました。
今回は第七王子と辺境伯令嬢のお話です。
落ちこぼれと言われ国を出た第七王子は実は魔王の息子。一方の辺境伯令嬢は実は転生者だった。
二人の目的はただ一つ。楽しく生活をすること。
それを守るためには魔王の息子であること、転生者であることはバレる訳にはいかない。
色々な勘違いや、すれ違いはあるが、お互いの秘密を守り抜こうとする二人のお話です。
楽しんで頂ければ幸いです。
下にリンクが貼ってあります。
https://ncode.syosetu.com/n3206jo/
第七王子と辺境伯令嬢「僕が魔族、私が転生者ということは──バレる訳にはいかない──」




