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【別視点】 王城の戦いにて/帝国への帰路

 【別視点】 王城の戦いにて



 レザリア王国の上空では黒龍(ドラゴン)が旋回している。それを王城の上から見ている男がいた。


「あれは北の厄災じゃないか······」


 男が気を取られていると、王城の敷地内が騒がしくなっていた。


 黒龍から、視線を敷地内に向けた男が見たものは、黒い翼を持った女によって、騎士たちが蹂躙(じゅうりん)されている姿だった。


「おいおいどうなってんだ。せっかく集めた亜人も持ってかれて、目当てのストロノースもやられちまってるし、これじゃ計画が台無しじゃないか。せめてストロノースだけでも連れて帰ることが出来れば······」


 男が城内を覗くと、ストロノースが膝をついて倒れていた。

 

 その後も戦闘が続いていたが、突然その部屋の中に先程まで敷地内で王国騎士たちを蹂躙していた女が現れた。


 その女は、この国の師団長を二人も殺し、王国兵士たちを圧倒していた少年を、いとも簡単に倒してしまった。


 全員殺されると思われたが、それ以上は何もせず魔族の子供を抱えて部屋を出ていってしまった。


「あの女はやばい。とりあえず戻って報告しなければ」


 男がその場から立ち去ろうとすると、男に影がかかった。男が上を見上げると、先程まで場内にいた女が黒い翼を広げていた。


「あ、あ······」


 男は女に一睨みされて動くことが出来なくなっていた。


「貴様もオクロスか······薄汚い気配をたれながして······」


 女が杖を前に出すと空に大きな門が出現した。


永遠の監獄(アエテルニタス)


 その言葉と同時に門が開き、そこから大きな腕が伸びて、男を鷲づかみにする。


「や、やめろ······。は、はなせ!」


 男を掴んだ腕はそのままゆっくりと門へと戻っていく。その腕が完全に門の中に戻ると、男の悲鳴と共に門が閉じた。


 女の表情からは一切の感情が伺えなかった。


「帰ろうダキア」


 男に抱えられた子供がそう言うと女は、


「はい殿下」


 と言って、黒い霧の中に消えていった。

 



   ***




【別視点】 帝国への帰路



 レザリア王国からアールスフォード帝国向かう軍の中に豪華な馬車が1台混ざっていた。その中には帝国の聖女マリア・ロベルタと片腕を失ったルーカス・ミネルバの姿があった。


「マダムよ。なぜ、小僧に本当のことを教えてやらんかったんじゃ? (ぬし)の実の兄なんじゃろ?」


 ルーカスはロベルタをマダムと呼んだ。


「お兄様は優しいの。いざという時私を見捨てることができないのよ。それではお兄様の未来はなくなってしまうわ」

「だから正体を明かさんのか?」

「そう。私にはお兄様が全てなの。お兄様を助ける為なら神だって殺すわ」

「その予定があるのか知らんが、恐ろしいことを言うのー」

「ふふ」


 ロベルタは楽しそうにほほ笑んだ。


「ストロノースのおかげで、しばらくは大丈夫でしょう。次にお兄様に会うのが楽しみだわ」

「その前に魔王が出て来なければいいがのー」

「それは平気よ。彼とお兄様は出会う運命にあるから」

「天啓か······。あの伝説とも言われる魔王と出会う運命とはのー。主の兄はいったい何者なんじゃ?」

「お兄様が何者か。私にとっては大切な人だけど、それを決めるのはこの世界の人たちでしょうね。神か悪魔か、勇者か魔王か、幸福か災難か······」

「見る者次第ということかのー」


 人類にとっての魔王でも、魔物にとって魔王は勇者ではないかという話だ。


 ルーカスは以前エルミナ王国の剣術大会で、騎士団総長のアーサーに話したことを思い出していた。


「わしの役目はだいたい終わったんじゃろ?」

「ええ。今まで本当にご苦労様でした。後はすきに動いてもらって大丈夫よ」

「それならわしはかわいい後輩どもの様子でも見に行くかのー」

「それはいいわね。私はパルクたちと遊んでようかしら」

「それは······かわいそうじゃのー」

「なんでよ」


 ルーカスの笑い声は馬車の外まで聞こえた。

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