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代表者会議

 俺は全員にセリナたちを紹介した。


「話を中断させてしまって申し訳ありません。紹介します。こちらがセリナさんといって、(さら)われた仲間を一緒に探していた、ペルシア族の代表になります。それと、この子がマイルとって、エルミナの冒険者になります」

「セリナと申します」

「マイル、よろしく」


 マイルはティフラと一緒にシャルティアたちのそばにあるソファーに座り、ルカとセリナが俺の隣に立った。

 これで俺も代表者らしくなった。


「レン殿、今パルティアに来ているお仲間はイーファ殿とここにいる方々で全員ですか?」

「正確に言えばあと4人待機しています。それと王城には情報収集員が1人潜入しています」

「4人も?」


 本当は(げっこう)光の部隊が10人以上集まってるとは言えない。


「はい。みなさんがさっき気づいた気配はマイルのものです。ここにいるセリナさんと、待機している4人は気配を消すことに長けているので、気づかなくてもしかたありません」


 その言葉に、先ほど気配に気づいた人たちの表情が変わった。

 ハザクもハウザーも、冒険者ではないセリナたちの役割に気づいたようだ。この状況で他の月光が待機している理由は表立って顔をさらすことができないからだ。それをハザクたちは察したのだろう。

 ハウザーが口を開いた。


「お面の彼女も同じ仲間なのですか?」

「はい」


 ハウザーの言葉を聞いてセリナが反応し俺に視線を向けてくる。俺は気づかないフリをして話をつづけた。


「とりあえず、救出した人たちは僕たちがちゃんとエルミナまで連れて行きますのでご安心ください。こちらでの戦いは、ここにいる全員が参加します」


 その言葉にマイルが反応した。


「若、わたしも、残っていいの?」

「うん、せっかく来たんだし、手伝っていってくれるかな?」

「うん! 分かった!」


 マイルはティフラを抱えて踊り出した。


「レン殿、ちなみにマイル殿のランクはおいくつなのですか?」


 ハザクがまた興味を持った表情で聞いてきた。


「マイルは最近Dランクになったばかりですよ。実力はメルやシャルティアよりずっと上なのでご安心ください」

「ちょっと待ってください。メル殿はビクターを倒しているんですよ。それがなぜ、Dランクの彼女の方が実力が上なのですか?」

「メルはEランクですよ」


 ···············。


「「「えええええ!!」」」


 メルとビクターの立ち合いを知っている人が全員声をあげて(おどろ)いていた。


「レン殿、エルミナの冒険者ギルドはいったいどうなっているのですか···」

「ふふふ、それについては交流戦を楽しみにしていてください」

「うっ···」


 初めて交流戦の話題でハザクがひるんだ。


「レンさんのお仲間が強いという事は十分わかりました。

 申し訳ありませんが今からはレザリア王国の問題についてお話ししたいのですがよろしいでしょうか?」


 アルスの言葉に全員が姿勢を正した。


「今のレザリア王国は明らかに間違っています。現国王であるストロノース陛下も昔は他国との争いを嫌っておりました。それがどういう訳か、アールスフォード帝国とエルミナ王国に対し侵略をすすめるようになったのです。

 (わたくし)が小さかった頃から陛下は、私を娘のように扱って下さいました。いずれは第一王子であるレイフォード殿下と婚約させると常に(おっしゃ)ってました。

 私は殿下に釣り合うようにと努力を重ねて参りました。王国の政治にもずっと関わってきていたので今の陛下の考えが、今までのものと全く違うのが分かるのです」


「具体的にはどのように変わったのですか?」


「一番大きく変わったことは、アールスフォード帝国とエルミナ王国へ侵略を始めると言い始めたことです。

 これには多くの貴族が反対いたしました。もちろん、我がオルクライン家も反対いたしました。

 しかし、陛下の方針は変わることはありませんでした。

 そして、しばらくすると、アールスフォード帝国がレザリア王国に進軍を始めたのです。それが先ほどハウザーが話した、クラーク師団長の単独防衛戦になります。

 その頃からです。陛下が誰かと密会しているという(うわさ)が貴族の間で流れてきました。今思えばそれがオクロスの関係者だったのだと思います。

 しばらくすると王城の地下に研究所が出来たという話も聞くようになりました。

 そして、とうとう、他国から(さら)わてた者達がそこに運ばれているということが発覚したのです」


「王国内で発見された亜人の子供······ですか?」


 俺は怪我をした亜人の子供が王国内で発見され、それがきっかけで反王国勢力(レジスタンス)が生まれたという最初の話を思い出した。

 

「その通りです。(わたくし)は殿下にそのことを訴えようとしました。しかし、なぜか殿下と会うことが許されなかったのです。

 私だけでは真実にたどり着くことができず、ある者を頼ることにしました。それがハウザーです。ハウザーは元々軍にも所属していたし、冒険者のギルドマスターとしてもかなりの権限が与えられていました。王城の出入りもとうぜん自由に行えます。だから、調査の依頼を極秘に行ってもらうことにしたのです。

 同じ時期に、王都内で独自に調査を行っている集団がいると(うわさ)を耳にしました。私はハウザーの報告を待っている間に、その集団と接触することにしました。それがユリベラです」


 全てが(つな)がり始めた。ここで反王国勢力(レジスタンス)が結成されたのだろう。情報提供者はアルスで間違いなかった。


「しばらくして、ハウザーから報告が入るようになりました。

 王城に地下に研究所があり、そこで他国から(さら)われてきた人たちがある実験をさせられていると。

 (わたくし)たちも(とら)われていた牢屋(ろうや)のことや、陛下と密会している者のことについても報告がありました。

 ハウザー、陛下と密会していた男について詳しく皆さんにお話してしてもらえるかしら」


 アルスの話を続けるようにハウザーが話し始めた。


「陛下が密会していた男はオクロスと名乗っていました。それが個人の名前なのか、団体の名前なのかは判断できませんでした。

 何度か二人の会話を聞く機会がありましたが、その中でよく耳にする単語がありました。それは「落神(おちがみ)」「目」「力の顕現化(けんげんか)」というものでした。残念ながら私には何の話か分かりませんでしたがそのままアルス様に報告しました。

 帝国とエルミナの侵略を提言していたのもその男です。なぜか陛下はその男の言う事を簡単に聞き入れているように思いました。今ままでの陛下であれば考えられません。

 それから、陛下は一人になると変わった独り言を言うようになりました。「これも天啓(てんけい)か···」と」


 天啓(てんけい)。ここでもその言葉を聞くとは思わなかった。


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