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野球の拳  作者: サムソン・ライトブリッジ
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プロローグ



 ──それはある日、ある場所、ある会合で行われたこと。


 すべての始まりであり、そして欲望渦巻く嵐の序章の物語の発端である。


 日本のプロスポーツ協会のトップが集まり、次なる各種目の世界大会……そう、『東京オリンピック』に向けての重要な会合であった。


 予算、放送権、会場規模、日程……このどれもが今回に限り、日本による日本だけの計画で進められる権限を手に入れることができたのだ。


 これは日本が長年をかけてやっと手にできた計画であり、いくつにも多方面に根回しをして勝ち取った、血と汗と涙が詰まる努力のプロジェクトであった。


 しかし、ここに来て問題が発生した。それは各種目の協会がその絶対的な権利を我が物にするべく、各々が勝手な主張を始めたのだ。


 本来であれば、これらの事は大会組織委員会の会長を始めとした事実上のトップが決めるべき事なのだが、その会長を含めた幹部一同が不思議な事に事故死や病死と言った急逝を迎えたため、各協会のトップが大会組織委員会の仮幹部としてその座についたからである。


 ある者は日程が被るためスケジュールの変更を訴え、ある者はもっと予算を増やせと言い、ある者は会場の独占を、またある者は特定のテレビ局への放送権の管理を申し立てる……そう言った私利私欲の渦が怒号となり、罵声が飛び交う。


 日本のプロスポーツ協会達によるオリンピックの会合は荒れに荒れた。


 そしてこのままでは(らち)が明かないと、誰もが思ったその時であった。



 ある者が言った──





『ならば正々堂々と戦って決着をつけよう』






 皆が嘲笑した、競技もルールも違うのにどうやって勝負をつけるのだと。


 だがある者は言い返した、



『文字通り戦うのだ。拳と拳、時には足や肘、頭も使えばいい。スポーツの王を決める戦いをリングの上で殴り合うのだ』



 周りは濁った顔をした。仮にもこれから世界へ羽ばたく有望なプロの選手達を、危険な目にはあわせられないと真っ当な反論をする。


 ──しかし、ある者は言った。『何を言ってる。どのスポーツ界でも脛に傷を抱えてる者がいるだろう。その者たちを戦わせるのだ。もはや翼の折れた天才達を代表に立てるのだ』と。


 各協会は息を呑んだ。誰しもが心当たりがあった。自分のところにどうにもとれぬ問題児がいることを、その扱いに困っていることを。


 かくして会合はその案をもって一つにまとまった。


 自分の私利私欲のために代表の選手を選ぶ者、今後のスポーツ連盟の支配のために野望を燃やす者、マイナースポーツをメジャーにすべくさらなる発展のために奮起する者、またはあわよくば勝ち上がり同時に鼻つまみ者の処理をしようとする者……。


 各々がこの戦いに向け、いま日本スポーツ界は混沌へと渦巻き、そして絶対的覇者を決めんがために暗雲立ち込めていたのであった……。






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