ガレラ山の魔王Ⅲ
この世界は広いだろうか、それとも狭いだろうか。返答は人によって異なるかもしれない。ダルクスというまだ無名の剣闘士がいた。ダルクスをよく知る剣闘士達は皆口を揃えてダルクス程強い剣闘士を知らないと言う。強靭な肉体、勇敢な心、戦士としての資質を彼ほど多く兼ね備える者はいないと彼らは口を揃えて言った。
「ダルクス、ガレラ山に潜むという魔王をお前ならば倒せるのではないか」
「噂では八十八星座の剣闘士も殺されたという話らしい。その魔王を倒せばダルクスの武勇も国中に知れ渡るぞ」
ダルクスは友人に言われ魔王のいるというガレラ山を一人目指した。国中の剣闘士を競わせ最も強い十二人の剣闘士に最高の名誉、地位、財を与える国がダルクスの生まれたメダリアという国だった。まだ無名ではあるもののダルクスもまた最高の地位を目指す剣闘士の一人だった。
魔王とは一体どういうものだろうかとガレラ山に向かう道中ダルクスは魔王の噂を聞いて回った。調べてみてわかったことはガレラ山に入り魔王に出会った人間は誰一人として戻ってこないということだ。ごく稀に死体が見つかることもあるが見つからないことも多い。見つかる死体は全身の骨を折られて死んでいる。刀剣や槍での傷があれば剣闘士の多いメダリア国だとすぐにわかるがそういった傷跡はなく、全身の骨を折られて死んでいるというのが特徴的だった。魔王が人ではないことはわかる、では魔王の正体は一体なんだろうか。ダルクスは情報を集めながらガレラ山の麓へと辿りついた。
ダルクスという無名の剣闘士がガレラ山の麓に到着した頃、十二星の一人牡牛座のアルバスは魔剣ダインスレイヴを持って屋敷を出立しようとしていた。
「留守の間、屋敷を頼むぞ」
「お任せください、アルバス様。ご武運を祈っております」
「それほど心配する必要はない。良い剣が手に入った、これがあれば剣が折れることを気にせず存分に戦える」
ジャイロは魔剣ダインスレイヴを一瞥して言った。弟子達の多くは魔剣の禍々しさに却って不安を覚えていたが魔剣に魅入られたアルバスは弟子達の不安に気付いていなかった。