〜始まりの鐘〜
「さぁお入り。
椅子に座ると良い。
今温かいミルクを持ってくるからね。」
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僕は今、教会に居る。
あの後老人は迷わずこの教会に足を運んだのだ。
教会はとても古く、牧師らしき人も見当たらなかった。
(あの老人、此処に住んでるのか?)
辺りを見回しながらそんなことを考えていた。
「ほら温かいミルクだ、お飲み。」
そう言って老人は僕に温かいミルクの入ったカップを渡してきた。
(あぁ、温かい。)
外は夜だったためとても寒かったのだ。
「ありがとう。」
自然に口からこぼれた。
一瞬だけだったが老人が笑った気がした。
「では本題に入ろうか。…話してごらん。」
老人はそう言うと僕の向かいの椅子に座った。
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老人は僕が話終わるまで黙って聞いていた。
「なるほど。
では君にこれをあげよう。
きっと君の願いが叶うことだろう。」
老人が渡してきたのは一つのベルだった。
そのベルは真ん中に黒いコウモリの様な羽根と真っ白な鳥の様な羽根が片方ずつ描かれていた。
不思議なベル……………。
「ねぇ……。」
僕が老人にベルについて聞こうと前を見ると……………………
…………………もうそこに老人の姿はなかった。
(あれっ?)
辺りを見回してみたが何処にも老人の姿はなく、先程まで飲んでいたはずのミルクの入っていたカップも消えていた。
(夢だったのか?)
僕は自分の手を見た。
そこには確かにあの老人から貰った不思議なベルがあった。
何だったんだろう…………。
ゴーン、ゴーン
突然教会の鐘が鳴った。
バタッ…………。
僕はその場に倒れ混んでしまった。
【さぁ新しい物語の始まりだよ。】
僕は薄れ行く意識の中で、あの老人の声を聞いた気がした。