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第2話 入学式②

「天鳴――雷撃!」


 生徒会長の指先に、青紫色の光が集中する。


「……っ!」


 すすす、ストップ、ストップうぅう!

 と、制止する暇もなく――蛇のような軌道を描きながら、僕の方へと青紫色の光が飛んで来る。欠伸なんてするんじゃなかった。いやいや、欠伸くらい許してくれてもいいんじゃない? これからの新生活に緊張して、眠れなくなる夜くらいあるでしょうに。

 せめて、多少の慈悲をくれても――、


「えぇい、くそっ!」


 ――走馬灯のよう、内心で愚痴りきる。

 勢いよく立ち上がり――勢いありあまり、椅子が後ろに倒れる。が、気にしている場合ではない。襲いくる生徒会長の言葉に、真正面から対峙する。


『論争』開始。


 ただの会話は、安全な言葉のキャッチボールだ。これは正反対、安全性の欠片もない言葉のキャッチボールだ。目には目を、歯には歯を――『言霊』には『言霊』しかない。

 軽く息を吸い、僕は口を開く。


「僕は否定する――雷撃!」


 同時、急角度な方向転換。

 僕の方に向いていた青紫色の光は打って変わって――生徒会長を目掛け、疾走する。僕にとっては当然の光景。しかし、相手にとっては予想外の事態だったのだろう。

 生徒会長は目を見開き、


「ん、なっ!? 欠伸小僧! お主、なにをしずぉぶらばびっ」


『論争』終了。

 皆まで言い切る前に、壇上には煙を上げながら――大の字で倒れる生徒会長の姿があった。所々、制服が焼け落ちてしまい――半裸。おぉっ! し、白の上下。つい先ほどまでの威厳さなど、なんのその。


 それにしても、結構な破壊力じゃないか。ふぅう、くらわなくてよかった――安堵のため息。続けて、後悔の念が押し寄せてきた。ふぉお、ため息を吸い直す。

 ……やってしまった。僕はやってしまった。


 しん、と静まり返る体育館。

 入学式に参加している校長、先生方、新入生、僕も含めて――誰もが一様。まるで、時が止まったかのよう、今の出来事に体を硬直させていた。一体全体、ここからどう収拾をつけるのか? 


 そんな矢先、壇上に一人の女生徒が歩いて来る。

倒れる生徒会長の手からマイクを奪い取り、ぺこりと一礼しながら、


「どうも。司会進行役を務めていた、風宮蓮と申します」


 静かなだけあって、一層のことよく響き渡る。丁寧で透き通る声だな、なんて感慨にふける余裕は勿論ない。

 立ち尽くす僕に視線を投げ掛け、風宮蓮と名乗る女生徒は、


「現・生徒会長、弓丘天音は敗北しました」


 淡々と、無表情のままで、


「この時、この瞬間――言動言也さん」


 僕の名前をどこで知ったのだろう? いや、今はそんなことはどうでもよかった。

 なにを言うのか、容易に予想できる。

 ま、待っ、


「とぅえ」


 ちょ、待って。

 あまりの急展開に、上手く舌が回らない。

できれば、言葉にしないでほしい。してしまえば、重みを増す。今の状況なら尚更だろう。

 地に立つ者と、横たわる者――勝者と敗者、一目瞭然なこの光景。いっそのこと、帳消しにしてほしい。無理やりだけれど、入学式の余興と説明すればなんとかなるかもしれない。


 だから、だから――、


「あなたが、この『葉言高校』の生徒会長となりました」


 ――僕の平和な高校生活は、始まりと同時に幕を閉じた。

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