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Prologue 2 最高のパーティー

 テーブルいっぱいに並んだ料理の数々。どれも美味しそうで祝いの席にふさわしいラインナップだ。


 まだかまだか、と待ちきれない2人。


 長い前挨拶もいらないだろう。俺は手に持ったグラスを掲げた。


「Dランク昇格を祝して乾杯!」


「「かんぱーいっ!」」


 グラスをぶつけて、中身を一気に飲み干す。


 炭酸が喉を刺激して気持ちいい。


「美味しいー! エール最高!」


「いいなぁ、ラトナちゃんは。私もお酒のみたーい」


「ユウナはまだ子供だからねー。マナトと仲良くサイダー飲んでおけばいいの」


「ぐぬぬ……」


 ラトナは見た目は俺たちと変わらないが実年齢は立派な大人。


 エルフは人間とは循環機能が違うらしく、100を超えても美貌を保てるらしい。


 さすが異世界。常識を簡単に覆していくなぁ。


「でも、大人の階段は2人の方が先に登りそうなの」


「「ぶふっ!?」」


「ぎゃー!? 顔にかかったのー!!」


「ラトナちゃんが変なこと言うからでしょ! もー!」


 顔を真っ赤にさせて優奈がラトナをポカポカと叩く。


「ったく、エルフはみんなあんな感じなのか……?」


 くんずほぐれつと(たわむ )れる優奈とラトナを見ながら、骨つきチキンを頬張る。


 もう冒険者として活動して1ヶ月。初めから仲は良かったが、かなり打ち解けたように思える。


 Eランクから始まり、ギルドが定めた昇格試験を合格した俺たちは本日付でDランクになった。


 せっかくの記念日だというラトナの提案もあり、絶賛パーティー中なわけだが……。


 いつまでも休んでいられないのは駆け出し冒険者の宿命だ。


「ほらほら、ちゃんと話を聞いてくれよ。明後日からは初のダンジョンなんだから」


 魔界遺跡(ダンジョン)


 魔王率いる魔族が作り出した奴らの基盤。世界各地に存在する魔物を生み出す工場の役割を持つ場所だ。


 遺跡に入れば嫌でも魔物と遭遇し、連戦などは当たり前。


 そのため戦場よりも数多く死人を輩出する。


 ギルドによってダンジョン攻略が認められるのはDランクからと定められていた。


「ダンジョンといえば未知の領域。未知といえば私の出番だよね。【教えて、魔導図書】」


 出番が来て、ドヤ顔の優奈も可愛い。


 スキルを発動させると、俺たちが求める情報を探し出した本は見やすい位置まで移動する。


「私たちが潜るのは王都からいちばん近い【食人魔族の棲家(すみか)】。冒険者の死体が見つからないことで有名なダンジョンだね」


「出てくる魔物は……げっ。状態異常系が多いな」


 レッドスライム、スノータイガー、ゴブリンゾンビ……。


 今まで倒してきた野良の魔物とは比べ物にならない厄介なラインナップだ。


 さらにこいつらは人間を餌として好む。骨まで残さない。


 いつだって見つかるのは死体ではなく装備だけ。


 故に、食人魔族の棲家。


回復薬(ポーション)万能薬(エリクサー)がいっぱい必要だね」


「うぇ〜、また出費が……」


「ダンジョンの魔物は単価が高いって聞くし、よっぽどひどい結果じゃなければ赤字はないから心配しなくていいって」


 そもそもダンジョンとは魔物を生み出す場所。


 最下層にコアとなる魔結晶があり、これを壊さない限り永遠と魔物を作り続ける。


 平和を守るためにも冒険者は地上へと魔物が出てこないようにダンジョン内で魔物を狩るのだ。


「普通のクエストと差を付けないと誰も受けないだろうしな」


「なら、よかったの〜。ワタシもうスープ生活には戻れないよ!」


 パクッとピザに食いついて、頬をとろけさせるラトナ。


 ゆるゆるの表情がさらにだらしなくなっている。


 なんとも説得力のある言葉だ。


「ラトナの言う通りだな。俺だってボロ宿なんかに行きたくない。だから、目標を決めよう」


「おーっ。マナトったらすごいリーダーっぽい!」


「よっ、愛人リーダー! かっこいいぞ!」


「リーダーおかわりしたい!」


「リーダー可愛い服買って!」


「ステーキ食べ放題!」


「お家ほしい!」


「俺はバカじゃないからな……?」


 2人とも本気で言ったわけじゃないのだろう。


 ケラケラと笑っているのを見て、つられて俺も笑ってしまった。


 ……やっぱりここは居心地がいい。


 ふざけあって、笑いあって、支え合う。


 だから、俺ももっと頑張れる。


「……でも、今のを本当に叶えられるようにしたいとは思ってる。改めてこれからもよろしくな」


 彼女たちはキョトンとして、互いを見つめる。


 それからニヤニヤしだしたと思うと、いきなり飛びかかってきた。


「うぉぉっ!? なんだよ、いったい!?」


「マナト好きー! ユウナも好きー!」


「えへへっ。私も大好き! 愛人くんはー!?」


 向けられる期待。ここで誤魔化すほど俺もひねくれていない。


「……ああ、そうだよ! 俺も2人が大好きだ!」


「ふふっ、よく言えました〜。またあの時みたいにぎゅーってしてあげよっか?」


「え!? なにそれ!? 聞きたい聞きたいの!」


「あー、もう! 耳元で叫ぶな! 優奈もからかうな!」


 結局、俺たちの笑い声は夜が更ける前まで絶えることはなかったのであった

今回の話から第二章が始まります。

冒険者として本格的に活動し始める愛人たちの活躍にご期待ください!


先日は誤字報告ありがとうございました!

至らない点もあると思いますが、ブックマーク、感想、評価(このページの下方にあります)などなどお待ちしています!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初っぱなが食人ってメンタル大丈夫かな? 場合によっては、むしゃむしゃしてる最中に遭遇してトラウマにならない? [一言] ダンジョンに適正ランクとかはあります?
2021/01/15 17:42 名無し忍者
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