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王女、喋る

 産声を上げずにいた私は死んだと思われていたらしい。

 始めに王妃が勘違いして気絶し、他の者がそちらに意識が向き、ばあやが攫うように私を保護したため、私の存在は忘れ去られた。私が死んだと思われた要因に、王妃の「わたくしの赤ちゃんが死んでしまった!!」と半狂乱で暴れた事件があり、ばあやはボケていると思われて私のことを話しても取り合わず憐みの目で聞き流されていた。

 なんという不幸なすれ違いだろうか。もはや喜劇だ。

(私悪くなーい、転生させた女神悪い)


 部屋の空気が悪い。ばあやと弟だけが空気を読まずに騒いでいる。いや、弟はこの空気に耐えられないから泣いているのか。

(ど、どないしよ)

 今更ながら困ったことがある。子供ってどういう言動すればいいのかわからない。そもそも今現在、私は喋れるのか?言葉はわかる……と思う。

 結局、私は思考停止して無言を貫いた。ばあやの王を称える歌を唄いだし、思わず笑いそうになったが耐えきった。


 悲しい事件を乗り越え、ようやく私はスタート地点に立った。

 そう、異世界転生のスタート地点。現状把握に。

 ばあやは息子夫婦に引き取られ、いなくなってしまった。これには少し哀しみを覚えたが、ボケたばあやの話の半分以上が与太話だったと知って、これまでの情報収集が無駄だった。

 何よりも私の名前自体が間違っていた。メルディアナは先祖の名前らしく、本来の名はその名をあやかったものだったそうだ。で、結局メルディアナのままとなった。私の両親は基本的に緩いようだ。

 私は自由に動き回れるようになって情報を集めた。

 王族あって城外のことは見ることも叶わなかった。危険ということでバルコニーや窓際にさえ立てなかった。なんだ、暗殺者が弓でも構えているのか、この世界は。

 そう、そもそも世界観すら把握できていない。過去現在未来、どこであろうと王族はいる。このいかにも中世と言わんばかりの城の外が、超高度の機械文明がある可能性だってある。

(まぁ、なかったけども)

 周囲の会話に耳を傾けながら城内を探索し、ようやく図書室にたどり着いた。

 転生して2年、ようやく字の確認である。他の転生ものなら既に何か大きな事件でも解決している年数じゃないか。いや、私のように赤子から転生したものもある。まだ慌てるような時間じゃない。


 ばあやの代わりとなった侍女に、目で訴えて適当な本を取ってもらう。単にどう頼もうか黙っていたら察してくれただけなのだが。コミュ症が加速するわ。

「ありがとう」

 まぁ、礼くらいは言えるぞ、うん。危機感を覚えたからじゃないぞ。

 すると侍女は本を落とし、慌てて図書室から飛び出していった。

「しゃあああべったあああああああっ!!」

 などと喚き散らして。

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