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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-03『BLACK EXECUTER』
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第四章:とある平穏な幕間に/02

 そういうワケで三人でお買い物に出掛けることになったのだが、問題になったのは移動のアシの方だ。

 アンジェと二人なら普段通り戒斗のZ33に乗っていくところだが、今回は遥も一緒だ。二シーター……即ち座席が運転席と助手席の二つしかないZでは、残念ながら全員を乗せていくことは出来ない。

 かといって遥だけバイクで付いて来て貰うというのも、何だか彼女に申し訳ない気がする。

 ――――というワケで、今日のところは車を使わず……三人仲良くバスで行き先のショッピングモールまで向かうことになった。

 実を言うと電車でも行けなくはないのだが、あちらは路線の関係上、戦部家の最寄り駅からだと市街の方までぐるりと回って乗り換えをしなければならないから、どんなに早くても一時間前後は掛かってしまう。車で二十分弱で行ける距離にそれだけ時間を掛けるのも変だし、なら車で行くとの比較的時間の変わらないバスで……という話になって、結果的に今のこの状況というワケだ。

「遥さんは確か行ったことないんだっけ?」

「はい、私の記憶にある限りは。距離が距離ですし、私が行くような用事も特にありませんからね」

「そっかー、じゃあ初めてなんだ」

「どんなところなんですか?」

「んー、色々あるよ? この間カイトと行ったのが映画館だけど、他には大っきな本屋さんだったり楽器屋さんだったり、後は……レストランもいっぱいあるかな。フードコートも凄く大きいんだけど、それ以外にもお寿司屋さんだったりステーキ屋さんだったり、和食料理のお店に中華料理、後は何だったっけ……うん、とにかく凄く色んなお店があるんだ」

「へえ……! それは楽しそうですね!」

「うんっ! 服屋さんもいっぱいあるし、遥さんに似合うのもあると思うよ?」

「ふふっ、そうだと嬉しいです」

 街の中をゆったりと走る路線バス、その最後尾の席で横並びに座った三人……主にアンジェと遥がそんな風に笑顔で話していた。

 位置関係的には横に広い最後尾のシートのド真ん中に戒斗、そんな彼を挟むようにして左にアンジェ、右に遥が座っているといった感じだ。

 バスの中に他の乗客の姿は殆ど見受けられず、先頭近辺に二、三人が座っている程度。実にガランとしたバスの車内で、遥とアンジェはそんな風に楽しそうに言葉を交わしている最中だった。

「そういえば、遥とこうして出掛ける機会って殆ど無かったよな」

 二人がそんな風に楽しげな会話を交わしている中、ふと何気なく思ったことを戒斗が口にする。

「あー、確かに」

「言われてみれば、そうかも知れませんね」

 するとアンジェも遥も、揃ってうんうんと頷く。

 実際、遥とこうして出掛ける機会は稀だ。

 三人の記憶にあるのは……つい最近、夕飯の買い出しの為に三人で商店街に出掛けたことぐらいだろうか。帰り際にスパイダー・バンディットに襲われ、遥が神姫であることを知る切っ掛けになったあの日のこと。思い返せば遥と出掛けた記憶なんて、それ以外は数えるほどしかないような気がする。

 まあ、出掛ける機会が少なかったのも仕方のない話だ。遥は居候の身である自分にも何か出来ることを、と言って店の手伝いや、それ以外にも家事も色々とこなしてくれている。そんなあれこれで忙しい彼女と一緒に出かける機会が少ないのも、当然といえば当然だ。

 それに何よりも――――遥はずっと、人知れずバンディットと影で戦っていたのだ。自分が神姫であることを隠したまま。

 きっと遥自身、アンジェや戒斗を巻き込みたくないと思っている部分もあったのだろう。だから自然と、無意識の内に自分が行動を共にするのを避けていたのかも知れない。

 まあ最後のは戒斗の勝手な憶測だが、とにもかくにも遥とこうして一緒に出掛けることが今まで極端に少なかったことは事実だ。故に戒斗はこうして三人で出掛けていることに妙な新鮮さを覚え、言われた二人もまた同じように思っている……ということだ。

「なら余計に、今日は目いっぱい楽しまないとだねっ」

「そうですね……折角の機会ですから、今日は私も沢山楽しみたいです」

 戒斗の言った言葉に頷きつつ、また二人で笑顔を向け合うアンジェと遥。そんな二人をそれぞれ横目に見て……戒斗もまた、嬉しそうに小さく表情を綻ばせていた。

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