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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-03『BLACK EXECUTER』
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第一章:戸惑い、揺れ動く紅蓮の乙女/08

「ほら、掛かって来なさいな」

「シュゥゥゥッ!!」

「といって、アンタのその機動力にはアタシじゃあ追いつけそうにないわね。だから……アタシも全力で行かせて貰うわよ」

 飛びかかってきたグラスホッパーの動きをいなしつつ、時のその腕や脚を……左手の大きなコンバット・ナイフで受け流しつつ。セラは速度の面で自分がグラスホッパーに対し不利だと判断すると、一瞬の隙を突いてグラスホッパーの腹にショットガンの一撃を叩き込み。直撃を喰らったグラスホッパーが腹から火花を散らしてたたらを踏む中……ショットガンとナイフを投げ捨てた彼女は、そのまま腕組みをして不敵に笑んでみせる。

「潜り抜けられるかしらね?」

 すると――――彼女の両腕にあるフェニックス・ガントレット、そのエレメント・クリスタル部分が光り始め。とすれば彼女の両肩には荷電粒子砲が、腰には短砲身の榴弾砲が出現し。腕の装甲には大口径のマシンキャノン、太腿にはミサイルポッドが続けて現れ、それらが次々と装甲に固定されていく。

 最後にスッと彼女が両手を投げ出してみせれば、次の瞬間にはもう、その手の中には巨大な機関砲の……ガトリング機関砲の銃把が握られていた。

 ――――ストライクフォーム。

 彼女の、神姫ガーネット・フェニックスの重砲撃形態。本気を出せば街ひとつを消し飛ばしてしまうほどの火力を誇る姿がこれだ。

 本人が言った通り、このストライクフォームこそ彼女の全力。圧倒的な火力で敵を殲滅する、この姿こそ……セラが神姫として誰かを本気で相手にするときの姿だった。

「……アンジェさん、私から離れないでください」

「遥さん……?」

「あの方がああなられた時の破壊力は、本物ですから……!!」

 セラがストライクフォームになった時の恐ろしさを、その圧倒的な破壊力を……実際に一度、刃を交えたからこそ誰よりも実感している遥は、苦い顔をしつつアンジェの前に立つ。

(ですが……万が一にでも流れ弾がこちらに来てしまったとして、アンジェさんまで守りきれるかどうか)

 そうして庇ってはみるが、実際アンジェを守れるかは遥にも分からない。

 或いは、アンジェのようにスピードに特化した神姫であるのなら、彼女自身にも回避行動を取って貰えば守りきれるかも知れないが……。

 とはいえ、こうなってしまった以上は下手に動かない方が利口だ。セラの言うことを聞いてしまったみたいで、遥としては少し微妙な気持ちだが……それでも、動かない方が身のためだろう。少なくとも今は、こちらに危害を加えるつもりがセラにはないのだから。

「見敵必殺! 全部乗せ、持っていけぇぇぇ――――っ!!」

 そうしてストライクフォームへと姿を変えたセラは、間を置かず全ての武装の砲口でグラスホッパーを睨み付け。そして……雄叫びとともに、その全てを撃ち放った。

 ――――『アポカリプス・ナゥ』。

 ストライクフォームの必殺技、装備した全ての火器を一斉射撃し圧倒的な火力を相手に叩き込む全力射撃。その威力はまさに全てを塵芥(ちりあくた)と化す業火、地獄の黙示録(アポカリプス・ナゥ)と呼ぶべきほどに強烈だ。

 肩の重粒子加速砲が太い重粒子ビームを撃ち放ち、両手のガトリングと両腕のアームキャノンは死を告げる豪雨を撒き散らし。腰の榴弾砲は獰猛な唸り声を上げ、そして太腿のミサイルポッドから放たれたマイクロミサイルの大軍は、まるで餌を見つけたハゲタカの群れのように自らの定めた獲物に向かって殺到していく。

「――――!!」

 そんなセラの放った最大火力の一撃を――――対するグラスホッパーは全て避けきることこそ叶わず、苦悶の声とともに身体のあちこちから火花を散らしていたが。しかし一番危険な重粒子ビームを紙一重のところで避けると、丁度よく自身の周囲で巻き起こった爆炎に紛れるようにして……その場から姿を消してしまった。

「チッ、逃がしたか……!!」

 鮮やかすぎるグラスホッパーの退き際に、セラが大きく舌を打つ。

 今の一撃……完全に屠れたと思っていた。

 だが、グラスホッパーは何発も喰らいつつも、しかし絶命はせずに上手く逃げ延びてしまった。退き際の判断といい、あの戦闘能力といい。悔しいが……あのバッタ怪人は強敵だ。セラが内心でそう認めざるを得ないと思うほどに、グラスホッパーは今までのバンディットとはひと味違う敵だった。

「……まあいいわ、片方は仕留められたワケだし。戦果としては上々かしら…………」

 独り言を呟きながら、セラはチラリと視線を……遥とアンジェ、自分を見つめる神姫二人へと向ける。

「さて、次はアンタとの決着よ。ウィスタリア・セイレーン……今日こそ、アンタの正体が誰なのかを聞かせて貰う」

「…………お引き取り願うことは、叶いませんか」

「当然よ。それじゃあ――――話して貰おうかしら」

 神妙な面持ちで呟く遥に、セラはニヤリと不敵に笑んでみせて――――そのまま彼女は、右手のガトリング機関砲をおもむろに遥へと突き付けた。

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