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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『新たなる神姫、深紅の力は無窮の愛が為に』
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第三章:神姫二人、激突する刃と刃/01

 第三章:神姫二人、激突する刃と刃



 先に仕掛けたのは、やはり引鉄に指を触れさせていたセラの方だった。

 ズドン、と遥のライトニング・マグナムとは全く異なる、あまりにも乾いた銃声が河川敷に木霊する。

「ッ……!」

 セラが右手のレヴァー・アクション式のショットガンを突き付けていた距離は、殆ど零距離に等しいほどの至近距離。しかし遥はそんな至近距離からの一撃にも関わらず、セラが発砲するより一瞬早く身を捩らせることで、迫り来る散弾を最小限の動きで回避してみせる。

「…………!!」

 そうして避けた格好のまま、今度は遥の方がライトニング・マグナムの引鉄を絞っていた。

「それぐらい!」

 だがセラの方も遥に負けじと、彼女は大きく横っ飛びに飛び退くことで遥の放った金色の光弾を避ける。

 飛び退いて避けながら、セラはくるりと右手のショットガンを大きく回し……スピンコック。遠心力を使って銃把部分のレヴァー、メリケンサック状の部品を上下させて次弾を装填。着地と同時に再び遥に向かって構え直すと、やはり右腕一本で大きなショットガンをブッ放した。

「その程度……!」

 迫り来る、二発目の散弾。

 しかし遥は決して臆することはなく、あくまで冷静に対処した。

 やはり大きく斜め後方に飛び退きつつ、散弾を避けながら右手のライトニング・マグナムを連射し反撃。するとセラの方も河川敷を走りながら、ショットガンをクルクルと何度も回しつつズドン、ズドンと散弾を遥に撃ち放ってくる。

「でやぁぁぁっ!!」

 遥を中心に緩く円を描くように走りながらショットガンを連射していたセラは、そのまま河川敷の坂……多少急角度になっている土手を駆け昇ると、中腹辺りまで駆け昇ったところでバッと地を蹴って飛び上がり、空中から遥に襲い掛かった。

「速い……!!」

 逆手に返した左手のコンバット・ナイフで飛びかかるような斬撃を仕掛けてくるセラを見て、遥は回避は不可能と判断。すると彼女は咄嗟に右手のライトニング・マグナムを盾とし、セラのナイフによる斬撃を真正面から受け止めた。

 ガキン、と鈍い音が響く。

 横薙ぎに振るわれたナイフの刃を、遥は右手のライトニング・マグナム……その引鉄のすぐ前にあるトリガーガード部分、丁度L字になっている部分で受け止めると、セラが着地すると同時にそのまま右手のマグナムごと受け止めたナイフを右方に払った。

「っ!」

 遥の右腕が繰り出す強烈な腕力に振り回され、セラの左手がナイフごと大きく左方に放り出される。

 ――――二撃目を繰り出すだけの隙は、ない。

 大きすぎる隙を晒してしまった左腕で次なる一閃を放つだけの時間はない。セラはそう判断すると、咄嗟に右手のショットガンを腰溜めに構え、遥の腹を目掛けて破れかぶれにブッ放した。

「っ!?」

 これは流石の遥も避ける暇がなく、左の脇腹にセラの放った散弾が直撃。キツい一撃を喰らうと同時に蒼と白の神姫装甲から盛大な火花を散らしつつ、遥は苦悶の表情で大きく後ろに何歩もたたらを踏んだ。

「この……っ!!」

 が、ただでやられる遥ではない。

 撃たれた衝撃で後ろによろめきつつ、遥は右手のライトニング・マグナムを連射。今度はセラに対し、お返しと言わんばかりに何十発も直撃させてやる。

「がぁっ!?」

 赤と黒の神姫装甲、金色の光弾を喰らった身体のあちこちから激しい火花を散らしながら、着弾の衝撃に喘ぐセラが思わずその場に片膝を突く。

 この至近距離、ただでさえ強力な聖銃ライトニング・マグナムの光弾を何十発も直撃させられたのだ。散弾をモロに脇腹に喰らった遥のダメージも決して浅くはなかったが……しかし、セラの方が明らかにダメージは深かった。

 だからこそ、彼女は思わずその場に片膝を突いてしまっていたのだ。

(この方を相手に接近戦は……避けるべきですね)

 内心でそう思いながら、遥はセラが片膝を突いた隙に更に大きく飛び退いて。また高架下まで戻りつつ、牽制がてらに右手のライトニング・マグナムを連射する。

「……ったく、中々やるじゃないの」

 外れたマグナムの光弾が周囲に着弾し、軽く爆ぜた地面からごく小さな土煙が上がる中。片膝を突いていた格好から立ち上がると、苦い顔をしながらセラがボソリと呟く。

 そうしてセラは立ち上がると、唐突にショットガンとナイフを投げ捨て。そうすれば――――。

「そっちが飛び道具なら!」

 バッと身体の前で両腕をクロスさせたかと思えば、彼女の両腕の甲に生えたフェニックス・ガントレット……その下側に埋め込まれたエレメント・クリスタルが光り始める。

 そうして彼女の身体が閃光に包まれたかと思えば、次の瞬間には――――セラの姿はもう、今までとは全く違う格好へと変わり果てていた。

「そっちがその気なら、アタシも本気で行かせて貰うわ……!!」

 ――――ストライクフォーム。

 両肩に長大な砲身、背中から伸びる重粒子加速砲を担ぎ。両の太腿には縦長のミサイルポッド、そして左右の腰部には短い砲身の榴弾砲。腕の甲には大口径のマシンキャノンを装備し。極めつけに両手には大型のガトリング機関砲の銃把を握り締めた、その姿こそ。神姫ガーネット・フェニックスの真髄たる重砲撃形態、ストライクフォームに他ならなかった。

「……流石に、一筋縄ではいかなさそうですね」

 そんなフォームチェンジしたセラの、まさに重戦車……いいや、人間武器庫と言わんばかりの姿を目の当たりにすれば、流石の遥もこれには冷や汗を掻いてしまう。

 銃火器類に疎い遥が見ても、ストライクフォームになったセラの破壊力は一目見ただけで容易に想像できる。あんなもの、一歩使い方を誤れば……街ひとつが焦土と化しかねない。

「さあて、こっからがアタシの全開よ!!」

 そんな破壊的にも程がある姿へと変化したセラは、自身の格好を目の当たりにして冷や汗を掻く遥を見据えつつ不敵に笑んで。そうすれば……両手のガトリング機関砲の引鉄を引き、六本が束になった砲身をゆっくりと回転させ始めた。

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